勇者に付き合いきれなくなったので、パーティーを抜けて魔王を倒したい。

シグマ

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幕間-その1-

ドキドキの門番通過?

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 この話はアヴラムが聖都市を離れフェブラの町の近くにやって来た時のこと。

■■■

 アヴラムは聖騎士団から突然脱退したということもあり、これから先の計画を立てられていなかった。

 とりあえずは聖都市から少し離れたフェブラの町を最初に訪れることにしたのだが、フェブラ町に入るためにはもちろん門をくぐらなければいけない。
 そして門があるということはそこには門番がいる。

 流石に指名手配されている訳ではないので問題はないはずなのだが、教会から何か嫌がらせをされていないとも限らないので、どうなるか内心ドキドキで街に近付いて行った。

■■■

 これまで他の町に行っていた時は聖騎士団としてであり、それは馬車にさえ乗っていれば顔パスで入ることが出来た。

 その時は馬車を操る御者が聖騎士団の紋章が刻まれたアクセサリーを門番に見せていたが、それが聖騎士団であることを示していて、町に入るための条件だったのだろう。

 だがそれは今となっては関係のない話で、他の普通の人が町に入る方法を探らなければいけない。

■■■

 門に近づくと守衛がアヴラムに気付いた様なので、怪しまれない為にこちらから話しかける。

「こんにちは、他の町からやって来たのですけど街に入れますか?」

「おっ! お兄さん観光かい......ってあれ? 他の人はどうした? まさかそんな格好で他の町から一人で歩いてきた訳じゃないだろ?」

 格好がラフで、装備もほとんどしていないからそう見えるのだろう。

 しかし警戒していたが、何事も無かったので安心して受け答えをする。

「いえ、こんな格好でもそれなりに強いので歩いてきたんですけど......」

「はっは! 嘘を言っちゃいけねぇよ兄ちゃん! 防具も身に付けていない冒険者なんていないから。さっきも馬車が通ってたし、大方はぐれたってところだろ? 正直に言っても誰も責めやしないって!」

「いや、本当なんですけど......」

「まぁまぁ恥ずかしがらなくていいから、たまにいるんだよお兄さんみたいな人。そんなに強いなら聖騎士団に入ってるだろうに。バレる嘘だから止めときな」

「......じゃあそんな感じですかね?」

 全く信じてもらえなかったので話にのることにした。

「そうだろそうだろ。別に恥ずかしいことじゃあ無い。はぐれる奴はたまにいるんだよ。まぁ基本は盗賊に襲われたりしたからなんだけどな」

 話を聞くと、他にもトイレ休憩で忘れられたり馬車から落っこちたりする人もたまにいるらしい。

 客商売なのでその辺はきっちりとしていないといけないと思うのだが、街の外では何事も自己責任とのことだ。

「なら、もう中に入っていいんですか?」

「いやいや流石にそうはいかん。状況が状況だろうが公式の馬車に乗っていなければ身元保証ができないからな。ギルドカードとか身分を証明するものを持っていないか?」

「それなら......いや無いです」

 これまでは聖騎士団であることを証明するカードがあったが、もう取り上げられているので所持していないことを忘れていた。

「そうか、なら名前とどこの町から何の目的で来たのかこの紙に書いてくれるか? それと金貨一枚が保証金として必要だから払ってもらうけど大丈夫か?」

 お金の残りが心許ないから金貨一枚は痛いが仕方がないだろう。

「わかりました。それなら問題ないです」

 ということで、素直に指示にしたがって書類に記入をしていき、そして金貨を渡す。

「もしギルドに加入するなら登録が終わったらもう一度ここにきな、そうしたら金貨は返すから」

「わかりました。これでもう入っていいんですか?」

「ああ、フェブラの街を楽しんでくれ!」

 こうしてアヴラムは無事に街の中に入った。

■■■

 後に引き継ぎにきた先輩がアヴラムが払った金貨が聖金貨であることに気付き、一騒動が起こったのはまた別の話......。
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