勇者に付き合いきれなくなったので、パーティーを抜けて魔王を倒したい。

シグマ

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第1章 冒険者生活を始める。

ギルドに帰還と空飛ぶ……

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 ギルドに到着する前にビートは解放された。

 ギルドに近づくに連れて、騎竜の騒ぎで閑散としていた人通りが元に戻り、増え始めたので、流石に人の目が気になり始めたのだろう。

 そしてイヴリースを警戒したのかビートがアヴラムの前を歩くようになった。

 なのでアヴラムの前に丸い尻尾があるが、触ると怒られるので触らない。

(獣人にとっての尻尾の重要性について、ビートにしっかりと聞かされたからな……)

■■■

 そしてアヴラム達はようやくギルドに帰って来た。

 お金の受け渡しに間違いがあったのかどうなのか、トロイメア商会で確認するだけのつもりだったのにえらく時間が掛かったものだ。

 リコンのことも含めて一騒ぎがあったことも報告しなければいけないだろう。

 そしてアヴラムの前を歩いているビートが先に到着し、扉を開けて中に入ろうとすると、それに気付いたからか、『おーかーえーりー』と叫びながら、オッサンが中から走ってきてそのままの勢いでビートを飛び越し、アヴラムに向かって降ってきた。

■■■

 もちろんアヴラムは受け止めずスルーした。

「ひどいな、受け止めてくれてもいいじゃないか!」

「何が嬉しくてオッサンを受け止めなければいけないんだよ」

 というより人の目が痛いので、とりあえず放っておいて勝手に応接室に向かって歩き出す。

(どうせ、もう用意しているだろう。)

 アヴラムにビートとイヴリースも続くのだが、イヴリースは本当に無視して良いか心配しアヴラムに聞く。

「ちょっといいの? あれを放っておいて? 何かギルド長とか言われてるけど偉い人なんじゃないの?」

「いいんだあれは、もうそういう病気なんだ」

 会うたびにテンションが高すぎて困っているぐらいで、いちいち付き合っていたら流石にしんどいのだろう。

 なので、勝手知ったるアヴラムとビートはスタスタ進むのだが、まだ慣れていないイヴリースは後ろをちらちら確認している。

「あんまり、調子に乗らせると何をされるかわからないぞ。放置しても何かしてたみたいだがな」

 イヴリースは先程来たばかりなので、何の事か分かっていないみたいだが、それはこの後すでに追い付いてきているデミスが話してくれるだろう。

■■■

「あっ! アヴラムさん、ビート君、おかえりなさい!」

 応接室に入ると、既に待っていたルインが出迎えてくれた。

 そして見慣れない人が付いてきているのに気付いたみたいだ。

「あれ? そちらの方はどなたですか?」

 そのルインの質問に何故かデミスが答える。

「おいおい、ルイン君。その質問はヤボってものだよ。アヴラムさんぐらいの実力になると、そりゃあ一人や二人いてもおかしくないだろ?」

 アヴラムが思っていること以外の回答が飛んできたので困惑する。

(ん?? 一体何を言ってるんだ!?)

「そうですね。失礼しました」

(いやちょっと待て、そんなこと言うとイヴが怒るぞ。ほら呆れて固まっているじゃないか)

 仕方がないのでアヴラムが訂正する。

「違いますよ、二人とも! こちらはイヴリースで元同僚で腐れ縁ですが、別にそういう関係ではないですよ!」

「そうでしたか……それは失礼しました」

「そうなのか? すまんな……これはイヴリース君も苦労するな」

イヴリースは『いえ、大丈夫です』と返事をする。

しかしアヴラムはその意味に気づいていない。

(ほんとだぞ、そういうことを言われると何故かイヴの機嫌が悪くなって、後が大変になるんだから)


今回は部屋に入った後、『バカ』と小さく罵られただけですんだので良かったと安堵したアヴラムだった。
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