アネモネの咲く頃に。

シグマ

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とある祓い屋の二日間

第1話 変わった日常

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──鬼──それは負の感情より生まれし、得体の知れない物の事だ。

 大なり小なりはあるが鬼は常に身近にいる存在であり、力の弱い鬼であれば人に干渉する力を持たない。しかし力の強い鬼は人に危害を加える事が出来るので、野放し出来ない存在である。
 古来より霊力の強い者は鬼を見ることが出来、祓い屋稼業は脈々と受け継がれてきた。平安時代には陰陽師として公的な職業として表舞台に出たこともあるが、基本は裏稼業である。
 祓い屋が存在することを公にすることは、鬼の存在を周知させることに繋がり市民を不安にさせるので、避けるべきなのだ。

 私もまたその祓い屋稼業を継いだ内の一人である。

──東雲家──84代目当主、東雲晴春しののめせいしゅん

 歴代の当主の名に恥じぬよう、鬼の魔の手から人々を守ることこそが私の仕事だ。
 今はこの街の古い骨董品店を拠点にして活動をしているが、本家は京にある御所であり、転々と拠点を移しながらの生活である。
 しかし共に暮らす弟子の能力を考えると、ここは随分と手狭になってきたので、そろそろ移り時かも知れない。

 西雲蓮さいうんれんはまだ中学生になったばかりだが、非常に賢い私の弟子だ。これまでに無い発想で術式を組み上げ、新たな術を作り上げる事が出来る。さらにインターネットを介して全国に顧客を得ているので、今では家の稼ぎ頭になってしまった。
 新しい時代が直ぐそこにまで来ていることを痛感させられるが、今はまだまだ教えることは多い。今日もまた式神の黒猫と共に鬼を祓いに向かわせた。

 鬼祓いは鬼火と呼ばれる力の塊の間に、霧散させ祓うのが最も効率が良く安全だ。その為には、鬼が進化するまでの時間との勝負でもあるので、私の式神は屋根をつたって移動する。蓮はそれにいつも追い付けずに文句を言って帰ってくるのが常なので、今日もまた同じように文句を言ってくると思っていた。
 しかしそんな蓮が気を失った女の子を連れて帰ってきたのだから目を丸くしたものだ。

「東雲さん、こいつ鬼に攻撃・・されたみたいです」
「それは間違いないのですか?」
「はい、現場に鬼が進化した痕跡もありました。しかしどこに行ったのかまでは分かりません……」
「そうですか……それでは蓮は引き続き鬼の消息を含め、調査を継続してください。私はこの娘の治療をしましょう」
「分かりました」

 こうして蓮は再び、調査の為に外へ向かった。

「まったく……厄介なことにならなければ良いのですがね」
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