アネモネの咲く頃に。

シグマ

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とある少女の二日間

第4話 不思議なお店

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 何も干渉することが出来ない鬼火の状態が第一段階だとすると、物理的に干渉出来る用になった状態が第二段階であり、更にその鬼独自の特殊な能力を備えた状態が第三段階らしい。そして進化の行き着く先はいわゆる妖怪になるそうだ。そしてそこまで成長すると人の心に巣食い、人を操って自ら餌つまり負の感情を作り出すことすらあるらしい。

「それでどうするんですか東雲さん。こい……この人をそのまま帰すと、いつ襲われるか分かりませんよ?」
「そうですね……それでは千絵さん、この護符を渡しますので、身の危険を感じたら使って下さい」

 そう言って東雲さんに、一枚の紙を渡される。

「この護符って、先ほど見せてくれた式神を呼び出せるものですか?」
「そう、これを使えば式神を呼び出せるます。なので鬼が現れたら使って下さい。しかし千絵さんに力の使い方や契約方法を教える時間はありませんから、既に私の力が込められている仮契約の状態の物ですがね」
「そうなんですね。でも一体どうやって使えばいいのですか?」
「使い方は簡単で、口に加えて息を吹き掛けるのです。正確には唾液を吹き掛ける為なのですがね」
「唾液……」
「本当は血が最も力を得やすいのですが、それは嫌でしょう?」

 唾液が必要と言われて少しだけ戸惑っていると東雲さんに、手に針で傷を付け血を垂らせるか聞かれたので首を何度も横に振る。自らの体を傷付けて血を出すとか、そんな怖いことはしたくない。

「口に加えて、息をかける方向でお願いします!」
「うん、その方が私も良いと思うよ。それでは外まで案内するから付いてきてね」

 黒い猫を呼び出した所で鬼を祓うことが出来るのかは疑問だが、何もないよりは遥かに心強い。
 東雲さんと蓮に見送られながら外に出ると、この場所がどこなのかようやくわかる。ここは怪しい商品や得体の知れない商品ばかりを扱っているのでお客が入っているのを見たことがない骨董品店だった。

「す、素敵なお店ですね」
「ハハハ、御世辞は要らないよ。仕事柄色々な物を扱うから建前上、開いているだけだからね」
「そうですよね。なんで潰れないのか前から不思議だったんですが、ようやく分かりました。祓い屋が本業だったのですね」

 子供の頃から幽霊屋敷と呼ばれるお店だったが、まさか本当にそれに近いものだったとわ。

「結構酷いなお前、これでも売上は結構あるんだぞ?」

 蓮は人差し指を立てて、威張ってくる。

「えっと百万ぐらい?」
「ちげぇよ! 一億だ一億。月に少なくてもそれぐらいはここにある物を売って稼いでるんだよ。逆に祓い屋だけでは安定して食べるには困るぐらいだ。それにここにある商品はお前が買えないような物も結構有るんだからな!」

 どう見てもガラクタばかりなのに、そう言われると急に高い物のように見えてくる。

「蓮、人をからかうものではないよ。でも千絵さん、この蓮が色々と開発してくれるから売上が上がっているのは確かだけどね」
「へぇー、こんなに小さいのに凄いんですね」
「ええ、彼は本当に凄いですよ。今では術式とプログラミングが似ているとか言い出して、色々と開発してくれているみたいですが私にはさっぱり分かりません」

 蓮は東雲さんに誉められて、隠してはいるが顔が僅かに綻び嬉しそうだ。そしてそれを隠すように、御守りを私に渡してくる。

「そうだ、お前にこれをやるよ。何かあったらきっと役に立つから、しっかり持っておけよ」
「うん、ありがとうね蓮」

 蓮がくれるのだから、ただの御守りでは無いのだろうが、聞いても良く分からないので取り敢えずポケットに忍び込ませておく。

「帰りはこの式神に送らせるが、いつ君を狙って鬼が現れるか分からないから、くれぐれも人の少ない場所は歩かないように帰りなさい」
「はい、今日は本当にありがとうございました。宜しくね黒猫ちゃん」

 その場にしゃがみこみ猫の目を見つめるも、またしてもそっぽを向かれてしまう。そして私の家が解っているかのように歩き出してしまった。

「ちょっと、待って! それでは、失礼します!!」


 慌てて先を行く猫に追い付き、私は猫に導かれながら自分の家までたどり着く。そして私が家の敷地に入ると、猫は役目を終えてからか煙になって消えてしまう。

 私は『ありがとう』と小さく呟き、家の中に入った。
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