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終話
しおりを挟む私は今、過去最大級に緊張をしている。
「大丈夫よ、エクサさん。ただ笑顔で手を振っていれば良いだけですから」
「は、はい……」
ヘクテル様に送り出されたその先には、終わりの見えないほどの大衆が見えてくる。
私はそれを眼下に捉えながら、テラスから手を振って声援に応えていく。
隣にいるまだ子供のヨタ君の方が遥かに堂々としている。
──そう、私は王妃となったのだ。
ヘクテル様のお力添えも頂き、まだ幼いながらも賢明なヨタ君を王位に据えるも、実質的には私が王妃として実権を握ることになったのだ。
けれども一対一の交渉事には慣れていても、こんなに大勢の人前に立つことなどないので緊張をしていると、ヨタ君が私の手を握ってくれる。
「大丈夫ですよ、エクサさん。僕はここにいますよ」
「あ、ありがとう、ヨタ君」
引っ張っていかなくてはいけないはずなのに、既に私の方が引っ張られているね……。
でもヨタ君にはこれから実際に、この国を引っ張っていく存在になってもらわなくてはいけないのだ。
その手助けを出来るように私も頑張らなくてはいけない。
「エクサ様、エルダー王国より使者がお見えになられています」
「分かった、今行くわ」
今はまだ交渉の場には立てないヨタ君の代わりに私が矢面に立とう。
劇的には良くなるか分からないけど、皆が力を合わせればきっと笑顔で溢れる国をつくれるはずだから。
──Fin.──
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