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第8話
しおりを挟むデフォルト王国には既に自衛するだけの国力が残されていなかったので、書簡を送り速やかにカスタム王国より支援物資が届けられる。
そしてデフォルト王国の地を今後統治出来る人材の派遣も要請したのだが、届いたのは一つの書簡であった。
「本気なのかしら……」
そこに書かれて内容は私がデフォルト王国の地を治めよという内容であった。
更には領土拡大による新たな火種とならぬようデフォルト王家を再興を求められたのだ。
今回のクーデターに至るまでに悪政を働いたデフォルト王家の大人たちは処刑されるに至り、残された者たちと言えば女子供ばかりなのだけれども……。
「とりあえず、会ってみましょうか」
まずは王家の血を引く残された子供達がどれほどいるのか調べ上げ、そして面会をしていく。
しかし彼らにとって私は、デフォルト王家を滅亡に至らしめた大悪党でもあるので歓迎される筈もない。
「こんなことをしている場合ではないというのに……」
悪政により傷付いたデフォルト王国の経済を復興するためには様々な施作を行わなくてはならなくて、その陣頭指揮を担える人材も今の国内には不足しているのだ。
だからこそ私が直接出向いて行わなくてはいけないというのに、対外的な面子を保つためだけに王家の復興をしなければいけないなんて迷惑極まりない。
「血統がそんなに大事かね?」
「伝統とはそういうものであります」
「そうなのよね……」
部下に愚痴った所で解決する問題でもない。
「……なら、ヘクテル様にお会いしに行きましょうか」
ヘクテル様は先代の国王であられたデシマス様の妻であり、元王妃であられた方だ。
後宮での暮らしを嫌い国外れでヒッソリと暮らしていらっしゃるのでお会いする機会がなかった。
更に息子の処刑を主導ということもあって、顔を合わせ難いということもある。
けれどもデフォルト王家で最も見識が深いのは彼女以上の存在はいないのだ。
「お久しぶりです、ヘクテル様。御加減は如何でしょうか?」
「……ええ、変わりありませんわ。それにしても大変なことになりましたわね。エクサさんの方こそ大丈夫なのかしら」
「ええ、私は大丈夫です。それより今日、ここにお伺いしたのは他でもないヘクテル様にお願いがあってきたのです」
「……何でしょうか?」
「デフォルト王家の復興に、ヘクテル様の力を貸してはくれませんでしょうか? 是非とも王宮に戻ってきて頂きたいのです」
私がそういうと、ヘクテル様の紅茶をカップに注ぐ手が止まる。
そしてティーポットを机に置き、目を瞑りながら口を開く。
「貴女には至らぬ息子のせいで本当に苦労を掛けたと思っています。それなのに、これ以上の迷惑を掛けたくはありません……」
「迷惑だなんて……確かに大変な思いはしました。ですがそのお陰で私は外の世界も知ることができました。全てが悪かったとは思いません。それにこれ以上に悪いことが起こらないよう、私たちに出来ることはしなければならないと思いませんか?」
「そう…………貴女がそこまで決心を決めていらっしゃるのであれば、一つ考えがあります──」
ヘクテル様より今後の身の振る舞い方について、どのようにすべきか語られる。
そしてそれは私が考えていたこと以上のことであった。
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