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第7話
しおりを挟む王城に足を踏み入れた私は誰にも阻まれることなく、国王の待つ謁見の間に辿り着く。
そしてそこには騎士に拘束された、デフォルト王国のゼプト王がいる。
「クソッ、これはどういうことだ! 離せ、無礼であるぞ!!」
ゼプト王は必死に抵抗をしているものの鍛えられた騎士からは逃れられず、周りの者たちも助けるのではなく冷やかな視線を送られている。
そんな男に近づくことさえ躊躇われるものの、役目を果たすべく歩みを進めた。
「お久しぶりです、ゼプト王」
「お前は……そうか、そういうことか! このクーデターも全てお前が仕組んだことなのだな。この国賊め!!」
全くの検討違いをする国王に呆れてしまうが、無視をしても話が進まない。
形式状は示しを付けるためにも、大使として最後のチャンスをあたえることにする。
「……私はカスタム王国よりデフォルト王国の騒乱を静めるために来たのです。ゼプト王におかれましては、何か良いお考えをお持ちでしょうか?」
「考え? そんなもの決まっておろうが。国に牙を向いた国賊は処刑だ! 力を貸すと申すならクーデターに加わった者どもの全てを捕らえるのだ!!」
未だに自分の非を認めず、傷付いた民に責任を押し付けるとは……分かっていたが、この愚王は腐りきっている。
「ゼプト王のお考えは分かりました──」
私は笑顔でそう口にすると、ゼプト王は下卑た笑みを浮かべる。
しかし当然に受け入れることなど出来るはずもない。
「──今よりゼプト王には全ての権利を放棄して頂く!」
「な、なんだと……」
「民を見棄てる王など、まったく王たる器ではない。国を苦しめた責は、その身をもって償って貰います。連れていきなさい!」
国王が糾弾されているにも関わらず、誰一人として庇おうとはしない。
それを知り漸く事の重大さに気付いたのか、ゼプト王の顔面は蒼白する。
「……ああ、もう一人、処断せねばならない人がいますね」
牢獄に連れていかれるゼプト王を後目に私は公爵に向かい直す。
すると騎士たちが公爵を取り囲み、逃げられぬように拘束する。
「なんだこれは……一体どういうことだ!」
「貴方が行った全ても、到底に許されることではありません。ゼプト王ともども、その身を持って償いなさい」
「なっ、馬鹿な! 御主は全てを保証すると言ったではないか!!」
「いえ、私は財産と土地は保証すると言ったのです。王と共に民を苦しめた者を私が見逃すとでも? その身を持って、責を果たして貰います。連れていきなさい!」
これ以上の混乱は他国からの侵略を招くことになるだけだ。
処断は速やかに執り行われ民によるクーデターも収まるに至る。
こうして国に蔓延る不正を一掃され、デフォルト王国は終焉を迎える……はずであったのだが。
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