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閑話
しおりを挟むクーデターを起こした市民が王城を取り囲んでいる。
それにより国王は城に引きこもり、ただただ配下に喚き散らす。
「どうなっておる! 今すぐに鎮静化せぬか!!」
「国王様、どうか落ち着いてくださいませ。武力で押さえるのでは更なる反発を生みます」
「煩い! さてはお前はクーデターに加担しておるのであろう。誰かこやつを牢に閉じ込めよ!!」
「そんな……お待ち下さい、国王様!」
「ええい、さっさと連れていかぬか!」
狂った国王は既に周りの者たちすらも信頼することが出来ず、疑心暗鬼になっているのだ。
それを見たものたちは誰しもが将来を案じ不安に駆られる。
「国王様、カスタム王国のエクサ様より書簡が届きました。大使として国王様との謁見を望んでいるようですが如何致しましょうか?」
「なんだと? 今はそれどころではないわ! そんなもの適当な理由で断っておけ!!」
「それは……いえ、畏まりました」
ゼプト王はブツクサと呟きながら、足りない頭を悩ませる。
「クソッ……どうして、こうなったのだ……」
しかし既に誰も知恵を貸そうとすることはない。これまで己の権益の為に進言を行っていた貴族でさえもだ。
そんな状態から数日後、王城に働くものたちに声を掛けて回る者たちが現れる。
誰しもが不安になる未来に対しての保証を提示することで、瞬く間に城内は反国王勢力で固められていく。
そしてそれは貴族たちにも及び、遂には国を支える公爵すらも陥落することになる。
「今の話は本当であろうな?」
「ええ、勿論でございます。所有する財産と土地については保証致します。その代わり働きには期待していますとのことです」
「うむ…………よかろう。今後の協力を約束しよう」
本来であれば混迷の原因を作った責任の一翼を担っている貴族は一掃すべきなのかもしれない。
けれども国王を失った国にはそんな貴族でも、いないよりはマシであると判断したのだ。
カスタム王国が介入をするにしても完全に秩序を失った状態では難しい。
良くも悪くも各地に精通し、領民を納める貴族は必要なのだ。
貴族にとってもこのまま国が崩壊し他国に占領され全てを失うよりも、少なくとも約束された未来を選ぶのは必然である。
「……全く、怖い女だ」
こうして交渉が行われる前に全ての準備は終え、後はエクサがゼプト王を断罪するのを待つのみであった。
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