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第3話
しおりを挟むデフォルト王国を離れカスタム王国にやって来た私たちは、これまでに貯めた資金を用いて直ぐ様に商売を始めた。
広大な土地を有するカスタム王国には小さなデフォルト王国では手に入ることのなかった商材が山ほどあるのだ。
これまで生まれた国だからと自国に固執していたことが馬鹿らしくなってくるほどである。
「これは西の国々の特産ですね……とりあえず百ほど買いましょう。他に何か面白いものはありませんか?」
「ええ、ありますとも、エクサ様。どうぞこちらに!」
特定の商品に固執することなくさまざまな商品を取り扱うことで、私のお店は瞬く間に規模を拡大した。
他国からやってきたばかりの私たちの対しても多民族国家のカスタム王国は瞬く間に受け入れてくれたのだ。
男であろうが女であろうが関係無い。
ここでは己の才能と努力に見合った評価がなされる。
「──これはいいわね。全部頂きましょう」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、今後とも良い取引を期待していますわよアルバーノさん」
「ええ、是非ともに!」
私は良いものを見極める目を持っているので、買い集めた商品は一気にカスタム王国で消費されていく。
そして取引量はドンドンと拡大し、気付けばカスタム王国でも有数の商家として名を馳せるまでになった。
そんなある日、私の元に一通の手紙が届けられる。
「……燃やしておいて頂戴」
手紙の中身を一瞥してから、それを従業員に返す。
「はっ? い、いいのですか?」
「ええ、私にはもう関係がないことです」
手紙はデフォルト王国のゼプト王子……いえ、ゼプト王から届けられたものであった。
一体何事かと思ったら今さらに、婚約を破棄したことを取り消したいという内容だったのだ。
意訳すると他界したデシマス王が最後に決めたことだから、デフォルト王国の国民としてその責を果たせという内容である。
その責を放棄したのは紛れもなくゼプト王だというのに、全くどの口がそれを言っているのだ。
「さぁ、これから大きな商談があります。すぐに準備して頂戴」
「はっ!」
これまでに取引をすることがなかった、武器の取り扱いをしないかと声を掛けられているのだ。
その分野の知識は持っていないからと断っていたのだが、信頼している取引先からも要望を受けてしまい、まずは話を聞くことにしたのだ。
しかしこのことが私たちの運命を大きく動かすことになるとは、この時はまだ思ってもみなかった。
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