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閑話
しおりを挟む諸外国への外交を終え国内に戻ってきた国王は、婚約破棄の事実を知り絶望した。
そしてゼプトを呼び出し叱責する。
「何てことをしてくれたのだお前は!」
けれどもゼプトは悪びれる様子もなく反論する。
「父上、何を言っているのですか。あんな平民との婚約を結ぶことが間違っていたのです。あの者よりも遥かに優れた家柄の貴族と婚姻を結ぶべきではありませんか!」
「お前は何も分かっていない…………一体その貴族がどれ程のお金を生み出すというのだ?」
デフォルト王国の財政はミリオン家からの税収に大きく依存している。
現在は他国よりも豊かな国であるが、そこに至るまでにミリオン家が果たした功績は莫大なるものだ。
国家運営に欠かせないほどまでにミリオン家が多くのことを担っており、王家に迎え入れることで国の基盤を安定化させようも企んでいた国王の思惑は、馬鹿王子の軽率な行動により吹き飛んでしまった。
「そうかもしれませんが、あんな下賎な者を王族に迎え入れるなど貴族が納得しないでしょう。貴族を蔑ろにし、父上は国の制度を崩壊させるおつもりなのですか!」
「崩壊、そう崩壊だ。私たちが守るべきは制度ではなく、この国なのだ。そんなことも分からんとは……」
国王は頭を抱えるもゼプト王子には全く響いていない。
国の運営に必要なのは民であり彼らが産み出す資金であるということを分かっていないのだ。
そして民よりも上に立つ貴族こそが国の根幹であり、彼らさえいれば国が成り立つと思っている節さえある。
「国王様、失礼致します!」
国王がどうしたものかと頭を抱え悩ませていると追い討ちを掛けるように、慌てた様子の臣下が息を切らせながら部屋に入ってくる。
「無礼だぞ! 場を弁えぬか!!」
ゼプト王子は当然とばかりに叱責するので臣下は跪き頭を下げる。
「ゼ、ゼプト王子、申し訳ありません。ですが……」
臣下の男は狼狽え、王子と国王の両方の顔色を伺う。
「──構わぬ。いいから話すがよい」
それを見た国王は、ゼプト王子を制し報告を続けさせる。
「ハッ、大変申し上げ難いことなのですが……ミリオン家が国外へ拠点を移した模様です」
「なっ……なんだと……」
国王の顔面からは血の気が引き狼狽するも、現状を把握せねばならぬので報告を続けさせる。
「国内の商店は営業を続けている模様ですが、財産と主要な人材は退去した模様です……」
「そうか……市民に混乱が広がらぬよう、直ぐに手を打たねばならん……直ぐに──」
ドサッっと鈍い音が響く。
国王は指示をするために席から立ち上がろうとするのだが、そのまま倒れてしまったのだ。
「国王様!!」
臣下は慌てて近寄るも国王様はこのまま床につくことになる。そして治療も虚しく、お隠れになられることになってしまう。
新たにゼプトが国王に即位することになるのだが、国の未来は厳しいものが待っているのであった。
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