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第1話
しおりを挟むミリオン家は私の父であるヘクト・ミリオンが一代で財を築き上げた商家である。
母であるテラ・ミリオンと結婚し更なる成長を遂げた中で私エクサ・ミリオンが生まれた。
私は両親の商才を色濃く受け継ぎ、気づけばミリオン家は国を代表する商家となっていたのだ。
そんなある日、国王より一通の招待状が届けられる。
これまでにも何度かお会いする機会もあったが王印が押された手紙で招待されるなど普通のことでは無いので、戸惑いながらも王城へと足を運んだ。
「おお、エクサ殿、良く来てくれた」
「当然でございます国王様。しかし、本日はどのようなご用件なのでありますでしょうか?」
「うむ。前々より御主の父、ヘクトとは話をしておったのだがな……」
国王様から告げられたのは、この国の王子であるゼプト様との婚約だ。
「私のようなものが、本当によろしいのでしょうか?」
婚約を結ぶということは王家に名前を連ねるということだ。
貴族ですらないミリオン家の私が、王子の婚約相手に選ばれるなど普通では考えられないことである。
「勿論だとも。エクサ殿ほどの才有るものが他におろうか。それにこの婚約は私よりお願いしていること。何が問題となろうか」
国王様は満面の笑みで語り掛けてくる。
「……分かりました。謹んでお受け致します」
国王様から直々に頼まれたのだ。
一介の平民である私が断ることなど出来る筈がない。
こうして私は晴れて、ゼプト王子の婚約者となるに至ったのだ。
不安がないかと聞かれれば勿論ある。
お相手となるゼプト王子は美男であるかもしれないが、あまり良い噂を聞かない。
むしろ国王様は出来の悪い息子を思って、私との婚約を申し出てきたのだろう。
形式的な政略結婚となるかもしれないけど、それだけなら私にとっても悪い話ではない。
今はまだ商人として、やるべきことが沢山あるのだ。
後日、私はゼプト王子に挨拶へ向かう。
「お初にお目にかかります、ゼプト王子。私はエクサ・ミリオンと申します」
「御主がエクサか……」
「はい。これより宜しくお願い致します」
「……まぁ、良い。私はこらから用事がある。もう下がっていいぞ」
そう言いながらゼプト王子は手のひらをヒラヒラと動かす。
「親交を深めるために、これより共にお食事をとお伝えしていた筈ですが?」
「聞こえなかったのか? 私は下がれと言ったのだ。平民には分からんであろうが、私には大事な仕事があるのだ」
「そうですか……わかりました。それではまた日を改めてご一緒致しましょう」
「そうか……ならば次はこちらから招待しよう。それまで待っておるがよい」
「分かりました」
不安しかない始まりだけれども、これから少しずつ歩み寄れれば良いかなと、この時はまだそう思っていた。
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