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しおりを挟むストゥルタスは王宮で晩餐会を開き、そこには国王と多くの貴族も招ねかれていた。そしてそこにはサクラとレイナも招かれている。
ストゥルタスはレイナと婚約を破棄しサクラと結ばれんとすることを、学園内に留めることなく公にする決心をしたのだ。
そして談笑が繰り広げられる中で、ストゥルタスは立ち上がり口を開く。
「父上、そしてお集まり頂いた貴族の皆々様。今日は皆様にお伝えしたいことがあります」
何も知らない者たちは何事かとザワツキ、全てを知る者はただ静かに聞き入る。
「私、ストゥルタス・メルローは、レイナ・アルメリアとの婚約を破棄させて頂いた。そして私は既にサクラ・スメラギと婚約を結んでいる。皆にはこの場でその承認をして頂きたい」
ストゥルタスの言葉に場は一層のザワツキに包まれた。
ストゥルタスを支える貴族と教会に連なる者たちは祝福の表情を見せ、他の貴族たちは僅かばかりに驚きの表情をみせる。しかし皆の思惑はさておきストゥルタスとサクラの婚姻は、つつがなく大多数の貴族たちによる拍手で承認された。
国王はそれを否定するわけでも、祝福するわけでもなく、黙って見守っている。
「本当にそれで良いのだな、ストゥルタス?」
「はい、父上。私とサクラは本物の愛で結ばれております」
「……サクラ殿も相違ないか?」
「はい、国王様。私はストゥルタス様を生涯支えると考えております」
国王と二人のやり取りを見て、教会の神官はすかさずに祝福をする。
教会にとって息の掛かった聖女が国政に入り込むことはメリットしかないのだ。
「──真実の愛の前では、何人たりとも二人を阻むことは出来ないでしょう」
「ふむ……わかった。私も二人の婚約を認めよう。それで良いか、アルメリア公」
「ああ、構いませぬ。ストゥルタス王子の気持ちを繋ぎ止められなかったのはレイナの責である。それで咎めるつもりはない」
レイナは何事も発言せず、俯き加減にただ場の成り行きに身を任せ見守る。
サクラはレイナのその様子を見て、勝ち誇った表情になる。
あくまでもレイナは乙女ゲーム上では悪役であり、サクラはその性悪相手から攻略対象を掠め取ったとしか思っていない。だからこそ人を傷付ける発言を繰り返した己の行いで、身を滅ぼすザマァ展開になったとしか思わないのだ。
こうして国の未来を変える晩餐会は幕を閉じたのであった。
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