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しおりを挟むレイナが去った後、晴れて自由の身となったサクラは学園生活を満喫していた。
「サクラ──僕はもう君以外の人は目に入らないんだ」
「シュナイツァー……」
様々な貴族たちにフラグを立てまくっていたサクラの元には、数え切れない程の婚約が申し込まれる。
国王に伝えることが出来ていないので、未だにストゥルタスとの仲を公にすることは出来ていないのだ。
その間にもサクラは自由恋愛という名のハーレム展開を大いに楽しんでいる。
「私は聖女としての立場があります。だから、この関係は……」
「分かっているよ。勿論、僕とサクラだけの秘密だ」
重ねた唇が名残惜しく離れ、頬は桜色に紅潮している。初々しさを見せるその表情に、貴族たちはサクラのウラの顔を知る由もない。
数々の者たちとの逢瀬を交わしつつも、その行動が周囲にバレることはないのだ。それこそ神の加護があるとしか思えないほどにである。
だからこそサクラは、モテモテでチヤホヤされる生活を大いに楽しんでいた。
その中には当然にストゥルタス王子も含まれており、様々に舞い込んでくる情報を使って、今や学園を思いのままに操ることすらも可能なほどだ。
「ふぅ……そろそろ、アイツとは潮時かな。舞台から降りて貰いましょうかね」
婚約を求めてきて、その事を公にしようと強要してくるようになると、サクラはその者を切っていく。
サクラは最終的には乙女ゲームで一番良いエンディングとして用意されていた、王子と結ばれて王妃になる未来を選ぶつもりでいる。
リセットしてやり直しが出来ないのだから一度のプレイで最も多く楽しめるようにと、それまではハーレム展開を楽しむつもりでいるのだ。
間違っても他の貴族との婚約という特定のエンディングを引く訳にはいかない。
更に断ったとしてもゲームのように簡単に諦めてくれないので、実力行使で諦めて貰う状況に追い込むのだ。
「サクラ様、そろそろストゥルタス様との晩餐会のお時間です」
「ええ、分かったわ。直ぐに向かいます」
事情を知らない侍従は健気にもサクラの為につくす。
それが後に悲劇となる手伝いだとしても、今はまだ誰も知る由はないのだ。
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