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しおりを挟む学園から去ることにしたレイナは、実家に帰ることなく直ぐ様に行動に移す。
「ドレイク、これは時間との勝負でもあるわ。急いで各地に出向くわよ」
「分かりました、レイナ様。して、何をされるので?」
アルメリア家に使える従者であるドレイクは、馬車に飛び乗るレイナに驚きつつ質問を返す。
「この国を実効支配しますわ」
レイナが穏やかならざる発言をするので、ドレイクは固まってしまう。けれども時間との勝負でもあるということで、馬車を走らせながらレイナから話を聞くことにする。
「……して、何故にそのようなことをお考えに?」
「それは、この国の未来を案じているからです──」
レイナは行動に至ることにした経緯をドレイクに伝え、これからの目的を伝える。
「……分かりました。しかしそれは、レイナ様だけで出来ることでは有りませんでしょう」
「そうでしょうが他貴族の領地へ警戒されずに自由に入れる今だからこそ、私にしか出来ないことなのです」
アルメリア王国では貴族がそれぞれ各地を分担して治めている。
領地の広さと領民の数で国に納める税金の額は決まるので、貴族たちは様々な所で市民に税金を課す。そこでは当然ながらに人の移動にも税金が掛かり、運ばれる荷物もあらためれる。
多くのお金を生み出す資源を勝手に流出されることを警戒してのことなのだが、それゆえに必要物資の流通すらも困難になっている場合があるのだ。
しかし貴族の見栄もあり、その情報は他貴族の領地には流れてこない。
そこでレイナは学園で学友となった貴族たちより、様々な情報を仕入れてきた。時には取引を用いたり、侍従を介したりしながら。
それは公爵家としての財力が有るだけでは叶わないことであり、学園に通ったからこそ出来ることである。
貴族の領主ともなると領地の情報は金で売る筈が無いのだが、まだ学生の子供達にはそこまでの見識が足らないのだ。
「……分かりました。ですが御当主様には先に話して頂きます」
レイナは馬車の外を見ると、レイナの指示に従わずアルメリアの領地へと向かっていた。
「どうしてですか!? 私には時間が──」
「──だからこそです、レイナ様。お一人のお力で、全てが上手くいくとお思いですか? レイナ様はアルメリア家の威光も存分にお使いになるべきです」
アルメリア家では自立を促すために一定の年齢に達すると、資金の援助を断ち自らの手で稼がなくてはならない。レイナもご多分に漏れず自立し、自ら商会を立ち上げてお金を稼いできた。
だからこそ今回も自らの力で解決してみせようとしたのだが、今回は話のレベルが異なるのだ。
一歩間違えれば領地の侵犯と取られかねない話であり、例え子供が行ったこととしても領主が知らなかったで済まされる話ではない。
「……分かりました。御父様にお願いすると致しましょう」
「ええ、きっと領主様もお力をお貸し頂けますよ」
こうしてレイナの策略は、人知れずに動き始めたのであった。
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