悪役令嬢と呼ばれたので、悪役らしく国を乗っ取ってみた。

シグマ

文字の大きさ
上 下
2 / 8

1―2

しおりを挟む

 サクラ・スメラギは突如として現れた、異世界からの来訪者である。
 ある日、南方の森へ狩りに出掛けていたストゥルタスが行き倒れていたサクラを拾ったのだが、この世界のどこにもない服飾と道具の数々。そして身に宿した神々に愛されているとしか思えない加護に、教会の者たちは大騒ぎになった。
 サクラは教会から聖女として扱われそしてこの世界の知識が無いという理由で貴族たちが集う学園に入学するに至ったのである。

「まったく何なのよ、アイツ。邪魔ばっかりしてきて……」

 乙女ゲームに似た異世界に転移したと思っているサクラは、まずは色んな攻略対象と接触を図り、好感度を上げるために精力的に動いていた。
 そしてこの学園で一番の上玉である第一王子ストゥルタスにも近づこうとするも、その度にストゥルタスの婚約者というレイナに、ことごとく窘められているのだ。

「あれが噂の悪役令嬢って奴なのね……」

 ここがゲームの乙女ゲームの世界だと思っているサクラは、ちやほやしてくれる周囲にハーレムルートに乗っかったと認識している。
 そこで攻略相手の一人である王子に近づくと邪魔をしてきて、ことごとく行動を叱責してくるレイナは悪役令嬢に他ならない。

「サクラさん、お呼びですか?」

 教会から聖女として扱われるサクラは侍従を付けられることになったのだが、学園内には関係者しか入れない。そこで教会の息が掛かった貴族が取り巻きとして近くにいるのだ。
 その瞬間にサクラは泣き真似をする。

「だ、大丈夫ですか、サクラさん!? 一体、どうなされたのですか?」

「うう、レイナ様が、虐めてくるのです……」

 学園内でのヒエラルキーの頂点にいるレイナをストゥルタス王子から離れさせるのは簡単ではない。そこでまずは味方を作っていく為に、同情を誘い味方を作っていく。
 聖女であるサクラが放った噂は噂を呼び、レイナの立場は徐々に怪しいものになる。
 そして遂にサクラはレイナからの監視から逃れられるまでに至り、ストゥルタスにドンドンと近づいていく。
 サクラを拾ったのはストゥルタスであり最初からサクラのことを気に掛けていた。だからこそ熱心なフラグ立てという名のアプローチに、ストゥルタスは恋の盲目に陥る。そして話はレイナと婚約破棄を決意するまでに発展したのだ。

「フフ、これで私は自由ね……」

 こうして諫めてくる邪魔者がいなくなり、サクラは存分に乙女ゲームの世界を楽しむことにしたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲームのヒロインに転生したけどゲームが始まらないんですけど

七地潮
恋愛
薄ら思い出したのだけど、どうやら乙女ゲームのヒロインに転生した様だ。 あるあるなピンクの髪、男爵家の庶子、光魔法に目覚めて、学園生活へ。 そこで出会う攻略対象にチヤホヤされたい!と思うのに、ゲームが始まってくれないんですけど? 毎回視点が変わります。 一話の長さもそれぞれです。 なろうにも掲載していて、最終話だけ別バージョンとなります。 最終話以外は全く同じ話です。

平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子

深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……? タイトルそのままのお話。 (4/1おまけSS追加しました) ※小説家になろうにも掲載してます。 ※表紙素材お借りしてます。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

【完結】冷酷な悪役令嬢の婚約破棄は終わらない

アイアイ
恋愛
華やかな舞踏会の喧騒が響く宮殿の大広間。その一角で、美しいドレスに身を包んだ少女が、冷ややかな笑みを浮かべていた。名はアリシア・ルミエール。彼女はこの国の公爵家の令嬢であり、社交界でも一際目立つ存在だった。 「また貴方ですか、アリシア様」 彼女の前に現れたのは、今宵の主役である王子、レオンハルト・アルベール。彼の瞳には、警戒の色が浮かんでいた。 「何かご用でしょうか?」 アリシアは優雅に頭を下げながらも、心の中で嘲笑っていた。自分が悪役令嬢としてこの場にいる理由は、まさにここから始まるのだ。 「レオンハルト王子、今夜は私とのダンスをお断りになるつもりですか?」

醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~

上下左右
恋愛
 聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。  だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。  サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。  絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。  一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。  本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。

婚約破棄されているん……ですよね?

荷居人(にいと)
恋愛
「キサマトハコンヤクハキダ」 「え?」 これは卒業パーティーの日に婚約者によって叫ばれた棒読みの何かだった。棒読みすぎて内容が頭に入らないのは後にも先にもこの時だけだろう。 「ふん!ショックか?ショックだろう!だ、ダガ、コンヤクハキハケッテイジコウダ」 「申し訳ありませんがもう一回お願いします!」 「もう一回……だと!?」 「内容が頭に入らなかったので」 「し、仕方ない後一回だけだぞ!キサマトハコンヤクハキダ!」 「そう、ですか」 やはり肝心なとこだけ何度聞いても棒読み。大変なことのはずなのに棒読みが気になりすぎてまともに話せるか心配です。 作者の息抜き作品です。機種変もして最近全く書いてないので練習作品でもあります。 ふっと笑えるような作品を今回目指します。

処理中です...