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第 2 話 勇者フォーカス爆誕。02
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気を失ってから数十分経っただろうか、藤也は自分がまだ自発呼吸をしているのことに気が付く。
「 ここは…何処だ…? 」
まぶたが重くて開きはしないが、先程コンビニの店で銃弾を浴びたあの場所ではない事は断言できた。しかし、予想していた空気でも無い。それは、医療施設の独特なあの匂いと静寂感だ。仰向けに寝かされた身体全体で温かさを感じていた。
弾丸が何度も肉体に減り込み、貫かれ続けるあのなんとも言えない激痛は今は無い。
側に居る人の気配から会話が聞こえてはくるが、藤也の聞き覚えのある言語では無かった。
「 助けて貰って早々悪いけど。ここは何処で、どういう状況か教えて欲しい 」
今自分の置かれている状況にいたたまれなくなり、思わず日本語で問いかけてしまう。普通に自分の母国語で話した事にしまったな、と思う藤也だが、直ぐ答えは返ってきた。
「 彼、ニホンゴを喋ったわね 」
「 あぁ、ニホンゴで話したな 」
どうやら彼らが日本語で話をした時、男女の性別が明確になった。それは先程の言語ではイントネーションが無く、トーンも一定なのでどちらも同じ声にしか聞こえないし、性別さえ分からなかったからだ。
「 日本語が通じるのかな? 」
「 大丈夫、通じるよ。僕たちは先の召喚者にこの言語を習ったからね 」
「 アナタ、異世界のニホンから転移して来たみたいね。それにしても大変な目にあったわね 」
「 転移? 先の召喚者? 」
「 そう、本来ならば、後一年後にキミはこちらの世界に召喚される筈だったらしい 」
「 アナタはね、こちらの世界とアナタが生活を送っていた、あちらの世界の運命を変えられる唯一のハイヒューマン(人間の上位種)なの 」
「 ハイヒューマン? これと言って何の特殊な能力も無いけどな… 」
藤也は彼らの話がぶっ飛び過ぎてついて行けずにいた。
「 彼もハイヒューマンだったおかげで、金属の欠片を大量に全身で浴びた瀕死の状態で転移してきたけど、異常な生命力と回復力で蘇ったわ 」
と言うことは、自分もそのハイヒューマンとやらの体質のおかげで命拾いをしたと言うことだと藤也は少しは理解した。
そういえば、今まで大怪我などしたことが無かったと思って来たが、小さかった頃に一度だけ、大型トラックに跳ねられて、腕が身体から千切れた事があったが、寝れば治ると父親に言われ、言われるまま寝てみれば、次の日、目を覚まし確認してみると腕がくっ付いていた事を思い出した。いや、そもそも、あの時は両親に変な夢を見たなと笑われながら言われ、自分も半信半疑で夢だと信じ込んでいたが、実は現実に起こったのではなかったのかと思え始め、ゾクゾクっと背中に寒気が走った。
「 そうそう、先の召喚者もキミの首から下げていたデジカメと呼ばれる神器を身に着けていたね 」
藤也はまさかとは思ったが、一応彼らに聞いてみる事にした。
「 その先の召喚者の名は? 」
「 クロガネ様だね! 」
「 そう、クロガネ様は13年位前に召喚されて、魔王を倒した英雄、勇者クロガネ様よ! 」
「 黒鉄… 」
また、とんでもな『 ワード 』が藤也の耳に入って来た。整理すると、13年前事件に巻き込まれ、死亡届けがなされた自分の父親は生きていて、さらに、こちらの世界に召喚され勇者となって魔王を倒していたとは…。流石に藤也は自分の目でその勇者クロガネとやらを確認せずには、自分の頭がおかしくなりそうだった。とりあえず藤也は最終確認をする。
「 その方の名は黒鉄なんと言う方でしたか? 」
「 えぇっと、たしか、あちらの世界ではクロガネ…トウジロウと言われていたらしいわよ 」
黒鉄藤次郎。そう、紛れも無い、藤也の父親の名であった。
「 ここは…何処だ…? 」
まぶたが重くて開きはしないが、先程コンビニの店で銃弾を浴びたあの場所ではない事は断言できた。しかし、予想していた空気でも無い。それは、医療施設の独特なあの匂いと静寂感だ。仰向けに寝かされた身体全体で温かさを感じていた。
弾丸が何度も肉体に減り込み、貫かれ続けるあのなんとも言えない激痛は今は無い。
側に居る人の気配から会話が聞こえてはくるが、藤也の聞き覚えのある言語では無かった。
「 助けて貰って早々悪いけど。ここは何処で、どういう状況か教えて欲しい 」
今自分の置かれている状況にいたたまれなくなり、思わず日本語で問いかけてしまう。普通に自分の母国語で話した事にしまったな、と思う藤也だが、直ぐ答えは返ってきた。
「 彼、ニホンゴを喋ったわね 」
「 あぁ、ニホンゴで話したな 」
どうやら彼らが日本語で話をした時、男女の性別が明確になった。それは先程の言語ではイントネーションが無く、トーンも一定なのでどちらも同じ声にしか聞こえないし、性別さえ分からなかったからだ。
「 日本語が通じるのかな? 」
「 大丈夫、通じるよ。僕たちは先の召喚者にこの言語を習ったからね 」
「 アナタ、異世界のニホンから転移して来たみたいね。それにしても大変な目にあったわね 」
「 転移? 先の召喚者? 」
「 そう、本来ならば、後一年後にキミはこちらの世界に召喚される筈だったらしい 」
「 アナタはね、こちらの世界とアナタが生活を送っていた、あちらの世界の運命を変えられる唯一のハイヒューマン(人間の上位種)なの 」
「 ハイヒューマン? これと言って何の特殊な能力も無いけどな… 」
藤也は彼らの話がぶっ飛び過ぎてついて行けずにいた。
「 彼もハイヒューマンだったおかげで、金属の欠片を大量に全身で浴びた瀕死の状態で転移してきたけど、異常な生命力と回復力で蘇ったわ 」
と言うことは、自分もそのハイヒューマンとやらの体質のおかげで命拾いをしたと言うことだと藤也は少しは理解した。
そういえば、今まで大怪我などしたことが無かったと思って来たが、小さかった頃に一度だけ、大型トラックに跳ねられて、腕が身体から千切れた事があったが、寝れば治ると父親に言われ、言われるまま寝てみれば、次の日、目を覚まし確認してみると腕がくっ付いていた事を思い出した。いや、そもそも、あの時は両親に変な夢を見たなと笑われながら言われ、自分も半信半疑で夢だと信じ込んでいたが、実は現実に起こったのではなかったのかと思え始め、ゾクゾクっと背中に寒気が走った。
「 そうそう、先の召喚者もキミの首から下げていたデジカメと呼ばれる神器を身に着けていたね 」
藤也はまさかとは思ったが、一応彼らに聞いてみる事にした。
「 その先の召喚者の名は? 」
「 クロガネ様だね! 」
「 そう、クロガネ様は13年位前に召喚されて、魔王を倒した英雄、勇者クロガネ様よ! 」
「 黒鉄… 」
また、とんでもな『 ワード 』が藤也の耳に入って来た。整理すると、13年前事件に巻き込まれ、死亡届けがなされた自分の父親は生きていて、さらに、こちらの世界に召喚され勇者となって魔王を倒していたとは…。流石に藤也は自分の目でその勇者クロガネとやらを確認せずには、自分の頭がおかしくなりそうだった。とりあえず藤也は最終確認をする。
「 その方の名は黒鉄なんと言う方でしたか? 」
「 えぇっと、たしか、あちらの世界ではクロガネ…トウジロウと言われていたらしいわよ 」
黒鉄藤次郎。そう、紛れも無い、藤也の父親の名であった。
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