ヴァミリオン・ブレイドワールド・オンライン【VbO】

一色瑠䒾

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ヴァミリオン・ブレイドワールド 転移編

4話 レベル1

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 俺が操っていたゲームキャラは亜人系獣人族のオオカミタイプ。名はヴォルフ。手にする相棒は無課金で苦労して手に入れたレア武器は双剣のエリュシオン。炎、雷、風のトリプル属性を持つ武器はこの世界では超希少な代物だ。

 レベルは当然、カンスト。スキルも全てカンスト。更にジョブに関しても料理人から、魔法使い、鍛治職人や勇者までこの世界の職業全て転職習得済みだった。

 超レアアイテムもたくさん持っている。全て課金に頼らず、ひとりで手に入れた。金でモノを言わせた高級パッケージで固めた重課金装備のただ攻略目的の集団が気に入らず、俺は敢えて無課金で頂点に立つ事に決めていた。その方がカッコイイし、愉しいと思ったからだ。

 あらためて思う。この世界のゲームキャラクターになったんだと。

 俺は自分自身のキャラクターステータスを確認せずにはいられなくなった。

 コントローラーやボタンは無いが、多分叫べば、メニュー画面が出てくるのが異世界転移でのパターンだ。俺は周りに俺以外の人がいない事を確認すると、気兼ねなく叫んでみた。


「 オーダー! ステータス! 」


 目の前に光の粒子が文字を模りながら集まると、キャラクターシートとなって浮かび上がった。


「 超カッコいい! 」


 俺がゲームで遊んできた馴染みのキャラ名のヴォルフ。種族は亜人系の獣人族でオオカミタイプか。持っていたキャラクターと同じだったので少し安心した。しかし、些細な問題が発生した。


「 レベルぅ、1かぁ!! 」


 あれだけ手塩にかけて育てた、あのゲームの最強キャラとは真逆のほぼほぼ初期設定状態だった。


「 そうだよな! この世界では今し方来たばっかりの新人だしな! よおし、この世界でも頂点に立ってやる! 」


 俺はこの世界に浮かれ過ぎて気が付いていなかったが、今視界に入った自分の右腕が、白銀の毛並みをしていた事に違和感を感じた。


「 んんっ!?! 」


 これは普通のオオカミタイプの黒毛じゃない。超激レアキャラ同梱パッケージの白銀のヴァラヴォルフの毛の色だった。ステータスをもう一度確認すると、オオカミタイプと記載された横には『 希少種 』とあった。
俺は先ほど送られて来たパッケージデザインにあった、イラストの白銀のオオカミ、ヴァラヴォルフになっていた。


「 マジか! すげぇ! レベル1だけど(笑 」


 まぁ、別にそれでもいいと思った。レベルなんて上げればすむことだし、レアアイテムもまた集めればいいと。


「 さぁ行くぜ! 相棒! 」


 俺は腰の武器を手に取って意気込みを見せるが、手にかかる武器の重みの無さに若干、勢いを失う。
掴んだ武器はやはり初期装備である小型ナイフのダガー2本だった。


「 ですよね~ 」


 後方から俺の気配を察知したか、ガサガサと草の擦れる音が近づいて来た。


「 キュギイィィ! 」


「 この鳴き声はウンサギギだな! こう、真っ白くてまん丸で可愛いヤツ… 」


 しかし、俺の推測は見事に外れた。種類はそうだが、真っ黒で大型亜種のモンスターだった。
それは高レベルの地域に出現するレアな中ボス的存在で、冒険者には高額な金と高い経験値、更にとれる毛皮は高く売れ、捌いた肉は旨く、強靭な骨は武器の素材として利用できる超お得な獲物だ。


「なんでこんな所にウンサギギキング? だがラッキーだ! 行くぜ!」


 俺は思わず、走り出していた。自分が超激レアキャラだと浮かれていた。


「 うおりゃ! 」


 ダガーの2連撃の準備に入ると、ジャンプして降下する重力の力も利用して、ウンサギギキングの額にダガーを突き立てた。


「 かはぁ! 」


 俺の2連撃の攻撃は虚しくも一撃目でダガーは弾かれ、その衝撃で腕が飛ばされた痛みで声が出る。
獲物はというと、攻撃されたのにも気付かずに森に生える別の草を食べ始めた。


「 超硬ぇ! レベル1の腕力じゃ、ダガーの刃も刺さらないのか!? 」

「 キュギイ? 」


 獲物は草を食べ終わると、意識からなかった俺に反応しこっち向いた。
その図体のデカさの割につぶらな瞳が可愛いが、今はそのつぶらな瞳と合わせたくなかった。が、合ってしまった。
やっぱり、デカくなっても可愛いと思うが、逆に今視線を逸らした瞬間即死する。


「 やべぇな!レベル1の無力さをこの身を持って知ることになるとは 」


 獲物は可愛く首をかしげている。


「 く、可愛い。が、もうこれは視線を外した瞬間、全力で逃げるしかないな! 奴の走る速度は大したことは無かったはず、モンスターの配置エリアから一定距離遠ざかれば、敵視レベルは下がり追従は解除されるはずだ 」


 そうと決まれば、俺は180度向きを変えると、短距離走の様に全力疾走に徹した。
流石、ノーマルのウンサギギとは違い、追い駆けてくるスピードがけた違いに早かった。一定の間は空いているが追従は切れない。こちらのスタミナが切れ始めると徐々に距離が詰まってくる。

 
「 速い! 追いつかれる! もう終わり? 死ぬのか?? 俺! 」
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