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ヴァミリオン・ブレイドワールド 転移編
3話 はじめの森
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ドサッ!
「 いっってぇ!! 」
俺は空中から落下する様な感覚が十数秒続いた後、何処かの草むらに尻からダイレクトに落ちた。
生い茂る草むらの分厚い絨毯が、若干のクッションにはなったとは言え、地面に直撃した尻は地味に痛かった。
ジンジンと熱く、痛む尻を右手で優しく撫でながらゆっくりと、起き上がりながら辺りを見回した。
そこは明らかに自分の部屋では無い、緑が香る森の中だった。
目の前には道案内の看板があるが、それには見覚えがあった。
文字は現地の言語であるから読めはしないが、内容は文字のカタチで覚えてはいた。
それは、近くにある村の名が記された看板だ。
この森はあのゲーム開始時、最初に訪れる『 はじめの森 』そのものだった。
そこには最初のレベル上げで討伐するモンスターがいた。
「 懐かしい! 木にいるのは、リスに似た小動物モンスターのリンリリス。草むらの陰にいるのはウサギに似たウンサギギ。後、あそこにいるのは乾燥したスライムのカリカリスラリンだ! 」
感激している場合じゃ無い。何かがおかしい。確か自分の部屋でパソコンを前にゲームをしていたはず…。
ひょっとして、俺は飯を食った直後の眠気にやられて、寝落ちしたんじゃないかと思った。
まぁ、よくある現実かどうかを調べる簡単な術を試してみる。
「 いっってぇ!! 」
俺はどうせ夢だろうと、力任せに頬っぺたを抓ったが、結果は大不正解だった。
痛みで涙がただ出ただけだった。オマケにケツから落ちた時の尻の痛みも併せて気分がだいぶ萎えていた。
これは夢じゃない。信じられないが生い茂る草木の匂に包まれる感じや、瞳に飛び込む鮮やかな色彩、肌に感じる空気感に至るまで、この膨大な情報量は紛れも無く本物のそれだった。
しかも、ここは俺が毎日ほぼほぼ、24時間365日入りっぱなしで遊んで来たゲームの世界そのもの。
今さっきまで遊んでいたあのゲームの世界が、信じ難い事に現実世界となっていた。
このオンラインゲームは、自由な行動可能の何でもアリの世界だ。俺はこのゲームが発売当初から何年も遊んでいる。
自室にこもって、シャットダウンする事のないハイスペックゲーミングPCは年中付けっ放で、寝るのも食事の時も離れる事のない生活を送ってきた。部屋の外に出るなんて事はたまの風呂か、トイレか、食料調達に近くのコンビニへ行く位だった。
気付けば、引きこもり生活を始めてニート歴三年。20歳のこの俺。
ある日、両親の不慮の事故死から他人とのコミュニケーションが上手く取れ無くなった俺が唯一、生前、父親に買って貰ったこのゲームの自由なライフスタイルの世界にのめり込んだ。それでもコミュ症はこの世界でも緩和されず、仲間とのプレイは諦めた。しかし、生きる目標を失っていた俺には、このゲームは充分に意義があった。
この世界に俺は呼ばれたんだ…。
「 いっってぇ!! 」
俺は空中から落下する様な感覚が十数秒続いた後、何処かの草むらに尻からダイレクトに落ちた。
生い茂る草むらの分厚い絨毯が、若干のクッションにはなったとは言え、地面に直撃した尻は地味に痛かった。
ジンジンと熱く、痛む尻を右手で優しく撫でながらゆっくりと、起き上がりながら辺りを見回した。
そこは明らかに自分の部屋では無い、緑が香る森の中だった。
目の前には道案内の看板があるが、それには見覚えがあった。
文字は現地の言語であるから読めはしないが、内容は文字のカタチで覚えてはいた。
それは、近くにある村の名が記された看板だ。
この森はあのゲーム開始時、最初に訪れる『 はじめの森 』そのものだった。
そこには最初のレベル上げで討伐するモンスターがいた。
「 懐かしい! 木にいるのは、リスに似た小動物モンスターのリンリリス。草むらの陰にいるのはウサギに似たウンサギギ。後、あそこにいるのは乾燥したスライムのカリカリスラリンだ! 」
感激している場合じゃ無い。何かがおかしい。確か自分の部屋でパソコンを前にゲームをしていたはず…。
ひょっとして、俺は飯を食った直後の眠気にやられて、寝落ちしたんじゃないかと思った。
まぁ、よくある現実かどうかを調べる簡単な術を試してみる。
「 いっってぇ!! 」
俺はどうせ夢だろうと、力任せに頬っぺたを抓ったが、結果は大不正解だった。
痛みで涙がただ出ただけだった。オマケにケツから落ちた時の尻の痛みも併せて気分がだいぶ萎えていた。
これは夢じゃない。信じられないが生い茂る草木の匂に包まれる感じや、瞳に飛び込む鮮やかな色彩、肌に感じる空気感に至るまで、この膨大な情報量は紛れも無く本物のそれだった。
しかも、ここは俺が毎日ほぼほぼ、24時間365日入りっぱなしで遊んで来たゲームの世界そのもの。
今さっきまで遊んでいたあのゲームの世界が、信じ難い事に現実世界となっていた。
このオンラインゲームは、自由な行動可能の何でもアリの世界だ。俺はこのゲームが発売当初から何年も遊んでいる。
自室にこもって、シャットダウンする事のないハイスペックゲーミングPCは年中付けっ放で、寝るのも食事の時も離れる事のない生活を送ってきた。部屋の外に出るなんて事はたまの風呂か、トイレか、食料調達に近くのコンビニへ行く位だった。
気付けば、引きこもり生活を始めてニート歴三年。20歳のこの俺。
ある日、両親の不慮の事故死から他人とのコミュニケーションが上手く取れ無くなった俺が唯一、生前、父親に買って貰ったこのゲームの自由なライフスタイルの世界にのめり込んだ。それでもコミュ症はこの世界でも緩和されず、仲間とのプレイは諦めた。しかし、生きる目標を失っていた俺には、このゲームは充分に意義があった。
この世界に俺は呼ばれたんだ…。
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