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第一章
第 肆 話 二体の魔神の意図。
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「 まだかの?早くこの赤い実がのったケーキとやらが食べたいのだよ 」
魔王はじっと苺のケーキを凝視している。デュリオッツと一緒に食べようと我慢していたのだ。なんとも健気である。
「 ごめんな、魔王。お待たせ 」
「 うむ。待ちわびたのだよ、さて、さて、どんなお味かの? 」
デュリオッツが席に着くと、魔王は真っ先に、手にしたフォークで赤い実を刺し、小さな口へ頬張った。なんとも至福なひと時を満喫してるであろう、このトロけそうな満悦らしい笑みを浮かべていた。
「 コレは何とも美味じゃの。何とも甘い果実なのか 」
「 魔王さまったら、お口にクリームが付いてますよ 」
エルスが優しい表情で、魔王の口に付いたクリームをハンカチで拭き取っている。魔王のお目当てのスイーツもお口に収まっている事だし、デュリオッツは魔界の近況でも聞くことにした。
「 魔王、勇者達の熟練度や、別の魔王の気になる動きはどうかな? 」
「 うむ。勇者どもは相も変わらず弱過ぎるのだよ。あれでは、後に控える魔神討伐戦に参加出来るとは、お世辞でも言えぬよ 」
対魔神禁呪魔法を人にぶっ放しておいて、なんて手厳しい…。
「 別の魔王はの、昨夜、神父さまがお帰りになった後、強襲してきたのだよ 」
「 そうなのか?言ってくれれば、加勢したのに 」
「 そんな、下位魔王ランク如きで神父さまにご足労はかけられぬよ。上限解放魔法攻撃力最大化メテオスウォームの複合魔法で塵に還したよ。下位魔王ランクに手古摺るようでは、神父さまに笑われてしまうからの 」
以前、別の魔王どもを無双した自分が言える事じゃないが、いきなりチート級の大量な隕石を落とされて、塵に還った別の魔王には同情するよ。
「 じゃあ、例の魔神の方はどうかな? 」
「 うむ。今の所、全くの情報無しだの。ただ、地下第七階層で魔神候補である別の魔王数体が結託し、大型の魔王城を築いたとの噂は入ってきてはおるので、もしや、例の魔神が裏で手引きをしているかも知れぬの。あくまで噂なので大した情報では無いな、すまないの神父さま 」
「 いいよ。地下第七階層なら緊急は要しないだろう。魔神は複数で動く事は無いらしいけど、全世界を我が手中に収めようと目論む絶対悪の魔神が何をするかは分からないからな、用心はしておくようにな 」
「 うむ。わかったのだ 」
彼女は終始ご機嫌だった。デュリオッツが気に掛けてくれているのが、嬉しくて仕方がなかった。溢れ出す笑みが抑えきれなくなっている、そんなキュンする魔王を見つめるエルスが悶えていた。
唯一、若かれし頃のデュリオッツの祖父が率いるパーティーが、魔界地下第十五階層で二体の魔神と遭遇し激戦の末、一体の魔神に深傷を負わせるも取り逃がしてしまうが、残ったもう一体の魔神の絶命寸前に得た貴重な情報があった。
二体の魔神王の寿命が尽きようとしている事、祖父と一戦交えて深傷を負った魔神が実は魔神王候補であった事、人間界と魔界を繋ぐゲートを開こうとしている事、などが最重要機密として王へ密かに挙げられた。
事態を重く見た王は来たる魔神王とそのゲート阻止に向けた勇者を育成強化する為の施設を創る事にしたのだった。
そこから勇者が誕生し、この魔王の討伐までレベルを上げ戦いを挑んでいるのである。実は魔王は人間界にとって良き理解者であり、協力的関係でもあったのだ。
魔王はじっと苺のケーキを凝視している。デュリオッツと一緒に食べようと我慢していたのだ。なんとも健気である。
「 ごめんな、魔王。お待たせ 」
「 うむ。待ちわびたのだよ、さて、さて、どんなお味かの? 」
デュリオッツが席に着くと、魔王は真っ先に、手にしたフォークで赤い実を刺し、小さな口へ頬張った。なんとも至福なひと時を満喫してるであろう、このトロけそうな満悦らしい笑みを浮かべていた。
「 コレは何とも美味じゃの。何とも甘い果実なのか 」
「 魔王さまったら、お口にクリームが付いてますよ 」
エルスが優しい表情で、魔王の口に付いたクリームをハンカチで拭き取っている。魔王のお目当てのスイーツもお口に収まっている事だし、デュリオッツは魔界の近況でも聞くことにした。
「 魔王、勇者達の熟練度や、別の魔王の気になる動きはどうかな? 」
「 うむ。勇者どもは相も変わらず弱過ぎるのだよ。あれでは、後に控える魔神討伐戦に参加出来るとは、お世辞でも言えぬよ 」
対魔神禁呪魔法を人にぶっ放しておいて、なんて手厳しい…。
「 別の魔王はの、昨夜、神父さまがお帰りになった後、強襲してきたのだよ 」
「 そうなのか?言ってくれれば、加勢したのに 」
「 そんな、下位魔王ランク如きで神父さまにご足労はかけられぬよ。上限解放魔法攻撃力最大化メテオスウォームの複合魔法で塵に還したよ。下位魔王ランクに手古摺るようでは、神父さまに笑われてしまうからの 」
以前、別の魔王どもを無双した自分が言える事じゃないが、いきなりチート級の大量な隕石を落とされて、塵に還った別の魔王には同情するよ。
「 じゃあ、例の魔神の方はどうかな? 」
「 うむ。今の所、全くの情報無しだの。ただ、地下第七階層で魔神候補である別の魔王数体が結託し、大型の魔王城を築いたとの噂は入ってきてはおるので、もしや、例の魔神が裏で手引きをしているかも知れぬの。あくまで噂なので大した情報では無いな、すまないの神父さま 」
「 いいよ。地下第七階層なら緊急は要しないだろう。魔神は複数で動く事は無いらしいけど、全世界を我が手中に収めようと目論む絶対悪の魔神が何をするかは分からないからな、用心はしておくようにな 」
「 うむ。わかったのだ 」
彼女は終始ご機嫌だった。デュリオッツが気に掛けてくれているのが、嬉しくて仕方がなかった。溢れ出す笑みが抑えきれなくなっている、そんなキュンする魔王を見つめるエルスが悶えていた。
唯一、若かれし頃のデュリオッツの祖父が率いるパーティーが、魔界地下第十五階層で二体の魔神と遭遇し激戦の末、一体の魔神に深傷を負わせるも取り逃がしてしまうが、残ったもう一体の魔神の絶命寸前に得た貴重な情報があった。
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事態を重く見た王は来たる魔神王とそのゲート阻止に向けた勇者を育成強化する為の施設を創る事にしたのだった。
そこから勇者が誕生し、この魔王の討伐までレベルを上げ戦いを挑んでいるのである。実は魔王は人間界にとって良き理解者であり、協力的関係でもあったのだ。
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