魔王がキュン⁈する神父さま。

一色瑠䒾

文字の大きさ
上 下
4 / 7
第一章

第 肆 話 二体の魔神の意図。

しおりを挟む
「 まだかの?早くこの赤い実がのったケーキとやらが食べたいのだよ 」

 魔王はじっと苺のケーキを凝視している。デュリオッツと一緒に食べようと我慢していたのだ。なんとも健気である。

「 ごめんな、魔王。お待たせ 」

「 うむ。待ちわびたのだよ、さて、さて、どんなお味かの? 」

 デュリオッツが席に着くと、魔王は真っ先に、手にしたフォークで赤い実を刺し、小さな口へ頬張った。なんとも至福なひと時を満喫してるであろう、このトロけそうな満悦らしい笑みを浮かべていた。

「 コレは何とも美味じゃの。何とも甘い果実なのか 」

「 魔王さまったら、お口にクリームが付いてますよ 」

 エルスが優しい表情で、魔王の口に付いたクリームをハンカチで拭き取っている。魔王のお目当てのスイーツもお口に収まっている事だし、デュリオッツは魔界の近況でも聞くことにした。

「 魔王、勇者達の熟練度や、別の魔王の気になる動きはどうかな? 」

「 うむ。勇者どもは相も変わらず弱過ぎるのだよ。あれでは、後に控える魔神討伐戦に参加出来るとは、お世辞でも言えぬよ 」
 
 対魔神禁呪魔法魔王の上のランクの魔神用魔法を人にぶっ放しておいて、なんて手厳しい…。

「 別の魔王サタンはの、昨夜、神父さまがお帰りになった後、強襲してきたのだよ 」

「 そうなのか?言ってくれれば、加勢したのに 」

「 そんな、下位魔王サタンランク如きで神父さまにご足労はかけられぬよ。上限解放魔法攻撃力最大化 マキシマム・フルブースト・マジックアタックメテオスウォーム隕石落としの複合魔法で塵に還したよ。下位魔王ランクに手古摺るようでは、神父さまに笑われてしまうからの 」

 以前、別の魔王サタンどもを無双大量殲滅した自分が言える事じゃないが、いきなりチート級の大量な隕石を落とされて、塵に還った別の魔王には同情するよ。

「 じゃあ、例の魔神ゴッドイービルの方はどうかな? 」

「 うむ。今の所、全くの情報無しだの。ただ、地下第七階層で魔神候補である別の魔王数体が結託し、大型の魔王城を築いたとの噂は入ってきてはおるので、もしや、例の魔神ゴッドイービルが裏で手引きをしているかも知れぬの。あくまで噂なので大した情報では無いな、すまないの神父さま 」

「 いいよ。地下第七階層なら緊急は要しないだろう。魔神ゴッドイービルは複数で動く事は無いらしいけど、全世界を我が手中に収めようと目論む絶対悪の魔神が何をするかは分からないからな、用心はしておくようにな 」

「 うむ。わかったのだ 」

 彼女 魔王は終始ご機嫌だった。デュリオッツが気に掛けてくれているのが、嬉しくて仕方がなかった。溢れ出す笑みが抑えきれなくなっている、そんなキュンする魔王を見つめるエルスが悶えていた。

 唯一、若かれし頃のデュリオッツの祖父が率いるパーティーが、魔界地下第十五階層で二体の魔神ゴッドイービルと遭遇し激戦の末、一体の魔神に深傷を負わせるも取り逃がしてしまうが、残ったもう一体の魔神の絶命寸前に得た貴重な情報があった。

 二体の魔神王の寿命が尽きようとしている事、祖父と一戦交えて深傷を負った魔神が実は魔神王候補であった事、人間界と魔界を繋ぐゲートを開こうとしている事、などが最重要機密として王へ密かに挙げられた。
 事態を重く見た王は来たる魔神王とそのゲート阻止に向けた勇者を育成強化する為の施設を創る事にしたのだった。
 そこから勇者が誕生し、この魔王彼女の討伐までレベルを上げ戦いを挑んでいるのである。実は魔王彼女人間界ヒューマンエリアにとって良き理解者であり、協力的関係でもあったのだ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...