1 / 7
第一章
第 壱 話 そう、それはしごく小さな村の神父さま。
しおりを挟む
「「「「ぎゃあああぁあぁぁぁぁ!!!」」」」
漆黒の禍々しい瘴気が漂う、魔王城の最上階にあたる玉座の間から、
それは発せられた。
勇者たちと魔王との決戦開始から、約五秒後に放たれた魔王の最上級古代語魔法にして、三大禁呪攻撃魔法の一つトラジェディー・ドゥーム(焼夷獄空間)をまともに直撃した、勇者パーティーの断末魔が天井を飾るブラックアダマンタイトのシャンデリアを軽く震わせていた。
次の瞬間、よく磨かれた光沢のある大理石調の暗いフロアに勇者パーティのメンバーが、次々と人であった形状を崩しながら、同化していく様であった。
元が何であったか分からない、そんな勇者たちだったモノを目の前に、
佇む魔王は口元を少し緩ませた。
その頃、魔王城の城壁前にひとりの人間の男が到着したところだった。
「 毎度ぉ~♪ 」
男は見上げながら、そう魔王城の門番に言い放った。
すぐさま門番の巨大な悪魔は、容姿とは裏腹に丁寧なお辞儀し、城壁の隅に設置してある、内線通信端末の小さな受話器を毛深い大きな手を器用使い連絡を入れた。しばらくすると、奥から現れた最上位悪魔神官がいつもの様に出迎えていた。
「 いつもお世話になっております 」
頭に異形な鋭い角を二つ有してはいるが、女性の形をした容姿はこの上ない程の美女であることは間違いはなかった。そんな最上位悪魔神官は軽く会釈すると、ゆっくり前を向き直し、いつもの様に男を『 玉座の間 』直通エレベーターの隠し扉へ誘導した––––。
男は白を基調とする金の刺繍飾りの施された聖なる衣を身にまとっている、職業で言えば神父だ。
人間界のリージ・マース大陸の脇にある、至極小さな村『 伝説の村 』で教会を営んでいる。
主に勇者達の呪いを解いたり、次のレベルアップに必要な経験値の具合と、そして、この職業の最重要素でもある、死者を生き返らせる事である。
が…、実は神父が死者を生き返らせる前の一仕事がこの全滅し、
屍となった勇者どもの回収作業なのだ。
勇者視点で言えば、よく見慣れた教会から始まるこのシステム。それを何も無かったかの様に振る舞い、勇者達には心身共に気持の良い復活を心掛る。中には勇者に罵声を浴びせる神父もいるが…。さらに新たな冒険への手続きなども代行し、スムースな再出発のセッティングを抜かりなく施しているのも神父の仕事なのである。
「 エルス、今回の勇者たちはどうだった? 」
「 あ、はい、デュリオッツ様、中の下でしょうか? 」
デュリオッツを先導する最上位悪魔神官エルスは遠慮することもなく即答した。彼女は魔王の有能な右腕であり、戦闘力と智力と共に優れている。ハッキリ言って上級勇者より確実に強い。
「 中の下か… 」
デュリオッツはエレベーターの階数表示を眺めながら考えていた。まぁ、確かに低レベルでの魔王討伐としたスピードクリアを自慢する勇者も少なからず存在するからだ。それでも、魔王の前に控えていたであろう目の前の彼女、最上位悪魔神官が勇者を相手にするからには、それ相当のレベルに達していたはずである。
「 勇者パーティー内の連携ミス…なのか? 魔王が手加減を怠った…のか…? 」
「 …お恥ずかしながら…後者です… 」
デュリオッツがエルスの目を合わせると、エルスはやや右下へ目を反らしながらそう言った。
「 魔王様が早くデュリオッツ様にお会いしたいと思うあまり、全力で勇者どもをお相手してしまいまして… 」
「 はは… 」
デュリオッツは彼女に好意を持たれているのには、前からうすうす気付いていたのだ、ただ、こうハッキリ伝えられると流石にテレを隠せず、渇いた笑いと頭上にある階数表示を無駄に目で追っていた。
「 昨日、東の勇者を回収したばかりだったよな… 」
「 そうでしたね 」
エルスがクスリと微笑むとちょうど階数表示は最上階を示し、エレベーターは静かに動きを止め、前方の扉が開いた。
「 神父さま! 」
魔王はデュリオッツの姿が見えたのを確認すると恍惚な表情を浮かべ、一目散に走り寄ってきた。
漆黒の禍々しい瘴気が漂う、魔王城の最上階にあたる玉座の間から、
それは発せられた。
勇者たちと魔王との決戦開始から、約五秒後に放たれた魔王の最上級古代語魔法にして、三大禁呪攻撃魔法の一つトラジェディー・ドゥーム(焼夷獄空間)をまともに直撃した、勇者パーティーの断末魔が天井を飾るブラックアダマンタイトのシャンデリアを軽く震わせていた。
次の瞬間、よく磨かれた光沢のある大理石調の暗いフロアに勇者パーティのメンバーが、次々と人であった形状を崩しながら、同化していく様であった。
元が何であったか分からない、そんな勇者たちだったモノを目の前に、
佇む魔王は口元を少し緩ませた。
その頃、魔王城の城壁前にひとりの人間の男が到着したところだった。
「 毎度ぉ~♪ 」
男は見上げながら、そう魔王城の門番に言い放った。
すぐさま門番の巨大な悪魔は、容姿とは裏腹に丁寧なお辞儀し、城壁の隅に設置してある、内線通信端末の小さな受話器を毛深い大きな手を器用使い連絡を入れた。しばらくすると、奥から現れた最上位悪魔神官がいつもの様に出迎えていた。
「 いつもお世話になっております 」
頭に異形な鋭い角を二つ有してはいるが、女性の形をした容姿はこの上ない程の美女であることは間違いはなかった。そんな最上位悪魔神官は軽く会釈すると、ゆっくり前を向き直し、いつもの様に男を『 玉座の間 』直通エレベーターの隠し扉へ誘導した––––。
男は白を基調とする金の刺繍飾りの施された聖なる衣を身にまとっている、職業で言えば神父だ。
人間界のリージ・マース大陸の脇にある、至極小さな村『 伝説の村 』で教会を営んでいる。
主に勇者達の呪いを解いたり、次のレベルアップに必要な経験値の具合と、そして、この職業の最重要素でもある、死者を生き返らせる事である。
が…、実は神父が死者を生き返らせる前の一仕事がこの全滅し、
屍となった勇者どもの回収作業なのだ。
勇者視点で言えば、よく見慣れた教会から始まるこのシステム。それを何も無かったかの様に振る舞い、勇者達には心身共に気持の良い復活を心掛る。中には勇者に罵声を浴びせる神父もいるが…。さらに新たな冒険への手続きなども代行し、スムースな再出発のセッティングを抜かりなく施しているのも神父の仕事なのである。
「 エルス、今回の勇者たちはどうだった? 」
「 あ、はい、デュリオッツ様、中の下でしょうか? 」
デュリオッツを先導する最上位悪魔神官エルスは遠慮することもなく即答した。彼女は魔王の有能な右腕であり、戦闘力と智力と共に優れている。ハッキリ言って上級勇者より確実に強い。
「 中の下か… 」
デュリオッツはエレベーターの階数表示を眺めながら考えていた。まぁ、確かに低レベルでの魔王討伐としたスピードクリアを自慢する勇者も少なからず存在するからだ。それでも、魔王の前に控えていたであろう目の前の彼女、最上位悪魔神官が勇者を相手にするからには、それ相当のレベルに達していたはずである。
「 勇者パーティー内の連携ミス…なのか? 魔王が手加減を怠った…のか…? 」
「 …お恥ずかしながら…後者です… 」
デュリオッツがエルスの目を合わせると、エルスはやや右下へ目を反らしながらそう言った。
「 魔王様が早くデュリオッツ様にお会いしたいと思うあまり、全力で勇者どもをお相手してしまいまして… 」
「 はは… 」
デュリオッツは彼女に好意を持たれているのには、前からうすうす気付いていたのだ、ただ、こうハッキリ伝えられると流石にテレを隠せず、渇いた笑いと頭上にある階数表示を無駄に目で追っていた。
「 昨日、東の勇者を回収したばかりだったよな… 」
「 そうでしたね 」
エルスがクスリと微笑むとちょうど階数表示は最上階を示し、エレベーターは静かに動きを止め、前方の扉が開いた。
「 神父さま! 」
魔王はデュリオッツの姿が見えたのを確認すると恍惚な表情を浮かべ、一目散に走り寄ってきた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
ボク地方領主。将来の夢ニート!
あーあーあー
ファンタジー
とある事情から名ばかり辺境伯として辺境の地へ飛ばされた家柄のラドウィンは仕事をしたくない。
昼間に起きて、本を読み、飯を食って寝る。そんな暮らしの為だけに生きるラドウィンの元に皇帝からの使者がやって来た。
「大規模な反乱の鎮圧に出ろ」その命令を受けたラドウィンの、何としても命令をサボる戦いが始まる。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
現代転生 _その日世界は変わった_
胚芽米
ファンタジー
異世界。そこは魔法が発展し、数々の王国、ファンタジーな魔物達が存在していた。
ギルドに務め、魔王軍の配下や魔物達と戦ったり、薬草や資源の回収をする仕事【冒険者】であるガイムは、この世界、
そしてこのただ魔物達と戦う仕事に飽き飽き
していた。
いつも通り冒険者の仕事で薬草を取っていたとき、突然自身の体に彗星が衝突してしまい
化学や文明が発展している地球へと転生する。
何もかもが違う世界で困惑する中、やがてこの世界に転生したのは自分だけじゃないこと。
魔王もこの世界に転生していることを知る。
そして地球に転生した彼らは何をするのだろうか…
チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。
ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。
高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。
そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。
そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。
弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。
※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。
※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。
Hotランキング 1位
ファンタジーランキング 1位
人気ランキング 2位
100000Pt達成!!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【 暗黒剣士の聖十字 】 ~属性適正がまさかの闇で騎士団追放。でも魔王と呼ばれるようになった俺の力がないと騎士団が崩壊するって?~
岸本 雪兎
ファンタジー
闇に飲まれていく世界で彼は気付く。
闇を統べる自分こそが最強だと────
1000年前に闇の属性を統べる邪神を封じ、その封印を維持するために建設された聖堂都市。
そこを守護する誉れ高き聖騎士団。
憧れからその聖騎士団へと入団した1人の少年がいた。
その少年の名はリヒト。
だがリヒトは見習いから騎士へと昇格する際に行われる属性適正の鑑定の儀で、その適正を見出だされたのは『闇』の属性。
基本となる火、水、風、土の4属性とも、上位属性である光の属性とも異なる前代未聞の属性だった。
生まれも平民の出だったリヒトはその忌むべき属性のために1度は団を追われようとしたが、当時の聖騎士団総団長ヴィルヘルムによって救われる。
それからは聖騎士としての力を示すために己の属性である闇を纏って戦場を奔走。
リヒトは数々の戦果をあげる。
だが総団長の辞任と共に新たに総団長となったのはリーンハルトという選民意識の強い貴族の当主。
この男によってリヒトは団を追われ、街を追われる事になった。
その時に敬愛し憧れていた前総団長ヴィルヘルムもリーンハルトの策略によって失脚した事を知る。
だがリヒトの災難はこれで終わらない。
失意のうちに故郷へと戻ったリヒトの目の前には無惨に変わり果てた町並みが広がっていた。
リーンハルトによって平民の村や町は切り捨てられ、魔物の脅威に曝されて。
リヒトの両親もそれによって命を落としていた。
聖騎士団をリーンハルトの手から救うべく、リヒトは聖騎士団と同等の力を持つ王国騎士を目指す。
そのためにまずはギルドで活躍し、名を挙げる事に。
だが聖堂都市を離れたリヒトは気付いた。
闇に侵されていくこの世界で、闇の属性を操る自分が最強である事に。
魔物の軍勢の最強の一角であったフェンリルも討ち、その亡骸から従魔としてスコルとハティの2体の人語を介する魔物を生み出したリヒト。
昼は王国騎士となるべくギルドで成果を。
夜は闇の仮面で素顔を隠し、自身の生んだ魔物の軍勢によって魔物の統治を進めていった。
いつしかその夜の姿を人々は魔王と謳い恐れる。
そしてリヒトが聖堂都市を離れ、邪神の封印に異変が起こりつつあった。
リヒトの退団によって聖堂都市と聖騎士団の滅亡が静かに。
だが確実に始まっていた────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる