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推しに熱烈に愛されました
しおりを挟むセレスティンと恋人になった、王子の誕生祝賀パーティから数日。
僕らは互いの両親に、僕らの関係を打ち明けることにした。
お互い嫡男であるし、公爵と伯爵で身分の隔たりもある。しかも僕にいたっては内々の婚約者がいた身だ。
当然、両家から猛反対に合うだろうと身構えていたのだけれど……思いの外あっさりと、僕らの仲は認められた。
「王子の側近で学業も主席、学徒軍の隊長を務めた実績もあって、性格も謙虚で穏やか。そして何より俺が惚れ込んでるんだ。両親がジョエルを気に入らないわけないだろう」
公爵に数発殴られる覚悟だった僕に、なぜかドヤ顔でそう言うセレスティンを半信半疑で見ていたものの、その言葉は本当だった。
セレスティンの両親は僕を歓迎してくれ、「たとえ結婚しても、アンダーソン伯爵としての仕事をしてくれていい」とさえ言ってくれた。
本来ギルクラウド家の婿として僕が行うべき家門の管理は、信頼する親戚の者に任せれば問題ないという。
有り難いその申し出に甘える形で、僕はセレスティンと結婚してもアンダーソン家を継げることとなった。
将来僕らの間に子供を2人もうけて、それぞれの家門の跡取りにする予定だ。
「な?家のことは何とでもなると言っただろう」
「…そうだね、セレスティンの言う通りだったよ」
こうして、あんなに悩んでいたのが馬鹿らしいほどすんなりと、僕らは婚約した。
僕の両親同様、ギルクラウド公爵夫妻も熱烈な恋愛結婚だったらしく、息子には好いた相手と一緒になってほしいと思っていたらしい。
唯一気にかかっていたダリアとの内々の婚約も、円満に解消された。
元々正式なものではないから、両家の間の了承だけで済んだということもある。
ギルクラウド公爵家が僕を望んでいるとなれば、フォレスト侯爵家も頷くしかないようだった。
愛らしいダリアには前から多くの縁談が届いていたようで、きっとその中から、僕よりも素晴らしい人が選ばれるだろう。
周りの優しさに囲まれ、僕とセレスティンは学内でも公認の恋人となった。
甘く幸せな日々が、穏やかに過ぎて行った。
ーーーそして今日、僕はカールロイン魔法学園を卒業する。
「…俺もアンダーソン家に住む」
「セレスティンには学園があるでしょう」
「……月に一度しかジョエルに会えないなんて、拷問だ…」
アンダーソン家の仕事を覚えるため、僕は領地に帰ることになった。
卒業式を終え寮の荷物を片付けている僕の背中に、セレスティンが抱き着いている。
「王都の公爵邸で暮らせばいいだろう。どうせ来年からはそうするんだから、早く慣れておく方がいい」
「…その話は何度もしただろう?まだ結婚したわけじゃないのに、君がいない公爵邸に住むなんて出来ないよ。それにこれから王都で暮らすことになる分、今のうちに領地で学んでおきたいこともあるから」
セレスティンが学園を卒業すると同時に正式に籍を入れ、王都にあるギルクラウド公爵邸で一緒に暮らすことになっている。
1年間遠距離になることは何度も話して納得したはずなのに、セレスティンはいまだ渋っているようだった。
「……ジョエルは…寂しく、ないのか」
拗ねたような声をしたセレスティンが、ぎゅっと僕のお腹を抱きしめる。
まるで主人にじゃれつく大型犬みたいだ。
片付けをしていた手を止めると、僕を抱きしめるその腕をそっと撫でた。
「もちろん寂しいよ。僕もセレスティンの側にいたい。…でも、2人の将来のためだから」
宥めるようにそう言うと、セレスティンは腕の力を弱めて僕をくるりと自分の方に向けた。
まだ少し拗ねているのだろう。そんな表情も愛らしくてつい笑顔になる。
小さな皺が寄った眉間に、僕はそっとキスを落とした。
不意打ちだったからか、蒼い瞳が大きく見開かれる。
「月に一度会えた時には…昨日みたいにたくさん愛し合おうね。1か月間、お互いの感触が消えなくなるくらい」
そう言って微笑むと、セレスティンの顔がかーっと赤く染まっていった。
恋人になってから、僕らはたびたび寮の部屋で体を重ねている。
隣人に悟られないよう、声を抑えての行為にはなるけれど……今日で僕が卒業ということもあって、昨日の夜はいつもより激しくお互いを求め合った。
「……ずるいぞ、そんなの…」
真っ赤な顔を隠すように僕を抱きしめるセレスティンの頭を優しく撫でる。
しばらくされるがままじっとしていた彼は、おもむろに顔を上げると、ちゅっと音を立てて僕にキスをした。
不意打ちのキスにぱちくりと目を瞬かせる僕に、柔らかくセレスティンが微笑む。
「…愛してる、ジョエル。これからもずっと、俺と一緒にいてくれ」
深い青の瞳が、まっすぐに僕を見つめる。
前世からの推しであり、僕が世界で一番愛する人。
「僕も愛してるよ…セレスティン」
幸せそうに笑うセレスティンの黒髪を、春の柔らかい風が揺らしていた。
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