モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています

奈織

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推しに告白しました

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会場中を歩いてセレスティンを探したものの、彼はなかなか見当たらなかった。

ふとエドウィン王子の横にノアを見つけて、僕は駆け寄る。



「殿下、お話し中に失礼いたします。…ノア、セレスティンがどこにいるか知らないかい?」

「セレスティンですか?さっき外の空気が吸いたいから中庭に行くって言ってましたけど…」

「そうか、ありがとう」



手短に礼を言って中庭に向かう僕を、エドウィン王子がニヤニヤした顔で見つめていた。





王宮の中庭はとても広い。

ぽつぽつ設置された外灯の微かな光に照らされた夜の庭園は薄暗かった。

駆け足でセレスティンを探し回った僕は、一番奥にある噴水の手前で、ようやく愛しい黒髪を見つけた。



月を見ていたのか、彼は噴水のふちに腰を掛けて夜空を見上げている。

僕の足音に気が付いて、こちらを振り向いたその蒼い目が大きく見開いた。



「……どうして、ここに」

「君を探してたんだ、セレスティン」



歩み寄る僕をじっと見つめていたセレスティンは、隣に座ってもいいか尋ねると、無言のまま頷いた。



「月見の邪魔をしてしまったかい?」

「…いや、ただ少し休んでいただけだ。ジョエルは…俺に何の用だ?」

「……セレスティンに、話したいことがあったんだ」



そう言って体を彼の方に向ける。

まっすぐにその瞳を見つめると、セレスティンは少し怯えるように体を固くした。



まるで僕と話をしたくないと言われているようで、思わず心が怯む。

…それでももう、止まれない。

これで彼が僕を拒むのなら、僕はそれを受け入れるしかないのだから。



「…セレスティンが、ノアをパートナーに誘ったって聞いたよ」



僕の言葉に、セレスティンがピクリと体を震わせた。

後ろめたそうに目を伏せるその仕草に、まるで彼を責めているような口調になってしまったことに気が付いた。



「違うんだ、別に君を責めているわけじゃなくて…。その…今日セレスティンがノアと一緒にいるところを見て思ったんだ。僕はー…」

「聞きたくない!」



僕の言葉を遮って、突然大きな声を出したセレスティンは、両耳を手で覆うと背筋を丸めて俯いた。



「聞きたくない。…ノアとお似合いだったとでも言うつもりか?だから自分のことは諦めろって?」

「セレスティン、僕はー…」

「わかってるさ…!今日嫌ってほどに見せつけられて。…別に俺が特別なわけじゃない。貴方はフォレスト嬢にだって…誰にだって優しくて、あんな風に微笑むんだ」



最後の言葉は、涙で震えていた。



「ちゃんとわかってるから…っ…だから、諦めろなんて、言わないでくれ」

「ーーーわかってないよ」



俯くセレスティンの頬に手を滑り込ませて、顔を上げさせる。

僕にされるがまま顔を上げたセレスティンの青い瞳から、月明かりに照らされた涙が零れ落ちた。



ーーーああ、好きだ。

胸にせりあがる愛しさと歓喜で、どうにかなってしまいそうだ。



僕の両手に頬を包まれて茫然とした様子のセレスティンは、どこかあどけなくて、思わず小さな笑みが零れる。







「…君は、何もわかってないよ」



涙で濡れたその唇に吸い寄せられるように、そっと口づける。

あやすように、宥めるように、角度を変えて何度もその唇を食んだ。



「…っん…!」



青い瞳を見開いて固まっていたセレスティンは、しばらくすると背筋を反らすようにして僕を受け入れた。

息継ぎのため開いた唇から、ゆっくりと舌を滑り込ませる。



「ん……は…ぁっ…!」



頬から首に手を滑らせて、彼の後頭部を包み込むように支える。

ねだるように絡んでくる可愛い舌の裏をくすぐると、セレスティンの腰がびくりと震えた。



すっかり蕩けた表情のセレスティンが、涙を浮かべながらうっすらと瞳をあけて僕を見つめていた。

あまりにも熱情を煽るその反応に、下半身に熱が集まっていくのを感じる。



ーー…まだ、大事な言葉を言っていない。

これ以上はだめだと理性をかき集めると、仕上げに小さなリップ音を落として、唇を離した。





「…セレスティンは、本当にあわてんぼうだね。そういうところも、好きだけど」



キスで息が上がったままのセレスティンの頬に、優しく口づけを落とす。

彼はされるがまま、涙に濡れた瞳で僕を見つめていた。



「…今日君がノアと一緒にいるところを見て、心が焼けるような思いがした。僕は君に相応しくないなんて言いながら…僕以外が君に触れることを、許せないと思った」

「……ジョエル、それって…」



信じられないかのような表情で僕を見つめるセレスティンの瞳から、涙がぽろぽろと零れていく。

愛しくて、可愛くて。僕はその涙を舐めるように、頬に口づけを落とした。



「こうして君に触れるのも、口づけるのも、僕だけがいい。誰かにそんな思いを抱いたのは、初めてなんだ」



セレスティンの頬を両手で包み、まっすぐに目線を合わせる。

涙も、声も、体温も。目の前のセレスティンを形作る全てに、愛おしさがこみ上げてくる。



「君を愛してる」

「…っ…!」



くしゃりと顔を歪めたセレスティンは、僕の胸に抱き着いて泣き始めた。

ぎゅっと抱き着いてくる彼の頭と背中を撫でながら、その艶やかな黒髪に顔をうずめる。



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