18 / 37
引き続き、推しに口説かれています
しおりを挟む「おはよう」
「お…おはよう?」
次の日の朝。
自室のドアを開けると、壁に寄りかかるようにしてセレスティンが立っていた。
「どうしたの?」
こんなに朝早くから、何か用事だろうか。
ノックでもして、起こしてくれればよかったのに。
「特に用事はない。教室まで一緒に行こうと思って」
「え…?」
「昨日言っただろう、もう我慢はしないと。…これからは四六時中、口説きにかかるからな」
流石に少し恥ずかしかったのか、そう言うとセレスティンはふいっと目を逸らした。
その様子があまりに可愛くて、つい笑みが零れる。
「ふふ、わかったよ。でも僕はもう充分、セレスティンのことが大好きだけどね」
「だっ…!?そ、そういうのじゃない!俺が言ってるのはー…!」
「大丈夫、ちゃんとわかってるよ」
真っ赤になっているセレスティンにくすくす笑うと、彼は少し拗ねたように眉を顰めた。
甘くくすぐったいやり取りに、胸がいっぱいになる。
昨日のセレスティンのまっすぐな言葉で、僕の心境も少し変わってきていた。
モブである僕がセレスティンと結ばれるなんて、やっぱりあり得ないことのように思えるけれど。
でも少なくとも今、彼が僕を好きだと思ってくれているのは確かだ。
いつか魔法が解けるように消えてしまう気持ちかもしれないけれどー…その時が来るまでは彼の好きにさせてあげればいい。
前世からの推しに好きだと思ってもらえるなんて、たとえ刹那であっても得難い幸せだ。
彼の将来に影響を及ぼさない一線を守りつつ、今はその幸福を享受していればいい。
そんな風に、考えられるようになっていた。
**********************************
「パーティ、ですか?」
「ああ。ちょうど俺が成人になる歳だから、盛大にやるんだ」
エドウィン王子の17歳の誕生日は来月で、王宮で祝賀パーティが開かれるという。
いつも通り王子の執務室で書類に追われていると、ふと思い出したかのようなエドウィンに豪華な招待状を渡されたのだ。
「セレスティンやノアも、将来俺を支えてくれる人材としてお披露目することになっている。ジョエル、もちろんお前もな」
「……本気で今後も、僕を側に置くおつもりなんですか」
「当たり前だ、お前は使える。手放すには惜しい」
僕の嫌そうな顔を見て、むしろ楽しそうに笑ったエドウィン王子に、小さく諦めの溜息を吐いた。
「俺に目をかけられたくて必死な人間が山ほどいるというのに。お前は贅沢な男だな」
「…僕はただ、静かに穏やかな生活を送りたいのですよ」
王子の側近ともなれば、国の役職を担わなければならなくなるだろう。
ただの伯爵であるより富も権力も手にできるだろうが……領主をしながら大臣を務めるのがどんなに忙しいか、想像するだけでも眩暈がする。
「たとえ俺が見逃したところで、お前はセレスティンに捕まるだろうに。穏やかな領地生活は諦めるんだな」
ニヤニヤと楽しそうなエドウィン王子に、眉を顰める。
人前だろうと執務室だろうと僕に愛を囁くようになってしまったセレスティンのせいで、僕らの関係は公然のものとして扱われるようになってきていた。
ちらりとセレスティンが座る方へ目線をやると、彼もこちらを見ていた。
「年に何度か休暇をとって、ゆっくり領地で過ごしたっていい。王都でだって、ジョエルが穏やかに暮らせるよう何だって用意する」
「いや、そういう話じゃなくてねセレスティン…」
真面目に答えるセレスティンを嗜めると、王子が肩を震わせて笑っていた。
1,387
お気に入りに追加
2,086
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる