深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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別れ

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 俺とリカは取り敢えずデッドウルフの前から退散して、先のリカの地図生成で見つけた5層への通路へ向かっていた。次々と向かってくる魔物をリカが倒すのを後ろで見ながらも、俺は自分が受け継いだ能力について考えていた。

── 凄い特典を貰ってしまったな。

 俺がリカ・ローグワイスから受け継いだ転生者特典『魔道の極み』は一度視認した魔法を自在に使えるようになる、魔力成長率に補正がかかる、魔法が無制限に同時展開出来るようになる、という恐ろしく強力なものだった。

「視認した魔法全て使える、とはな」
「凄いじゃろ、まぁ真価は魔法の同時発動にあるがの」

 リカは左手で炎柱を右手で風を顕現させ、自由自在に炎を操りながら魔物を薙ぎ倒しながら言う。

「これも本来は<風炎柱フレイムストーム>という魔法で、高度な術式と多量の魔素を必要とするものじゃが、こんな風に属性ごとの基礎魔法を組み合わせるだけで再現可能になる」
「なるほど……」

 魔法の同時発動、様々なことに応用が利きそうだ。

「それにしても、こんな簡単に転生者特典を渡してよかったのか? 今も普通に魔法を使ってるけど」
「ん、構わんよ。同時発動も、あらゆる魔法を使えるようになるのも、魔力量の問題も、ぜんぶわしは転生者特典が無くとも同程度まで再現出来ておる」
「転生者特典を再現……?」

 信じられないことを軽々と言い放つリカに、つい怪訝な反応を俺はしてしまう。それにむっとしたように、彼女は「信じておらんな、まったく……」とかぶつぶつ言いながら、なぜか急に上衣をすぽーんと、脱ぎ捨てた。

「えっ」

 反射的に手で目を隠……そうとして、やめた。リカの露わになった上半身は、おおよそ人間のものでは無かったからだ。そこにあったの皮膚ではなく何らかの金属で作られたボディで、俺の間抜け面を見事に反射していた。

「ふっ、驚いたようじゃな。まぁ服の下まで皮膚を再現するのが面倒でこんな出来だが、要するに機械なんじゃ」
「凄いな……」
「私が持っていた魔法情報の全てはインストールされておるし、この目で観測した情報は全て魔道国で自動的に解析されるようになっておる」

 改めて俺は魔道国が他の国から浮いている理由が分かった、他国よりも技術が発達しすぎているのだ。機械も魔法も、魔道国はその他の国とは一線を画している。これでは危険視されて当然だ。

***

「さて5層に通ずる道にも着いたことだし、ここらで一旦別れとしよう。わしも一旦国に帰らねば、国民を心配させてしまう」
「あぁ、ありがとう。また会うことがあれば、恩返しをさせてくれ」

 俺の言葉にリカは満足気に頷いた。

「うむ、まぁすぐにまた会うじゃろう。追跡魔法をかけておるからの」
「なっ、……いや、助かる」

 一瞬だけびっくりしたけど、良く考えれば都合がいい。わざわざ言うということは、俺に何かがあれば来てくれるんだろう。

「では、またなリューロよ」
「おう、ありがとう」

 そして、リカは魂の抜け殻のようにその場に倒れる。恐らくは機械としての電源を落としたんだろう。

「……機密保持のため、本機は爆発します。爆発まで30」
「えっ」
「29、28……」

 咄嗟の判断、俺は先に言ってくれなかったリカに恨み言を念じながら5層へと飛び込んだ。
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