37 / 124
3人目
覚悟
しおりを挟む
「<隠密>っ!」
魔神ラウザークに頭上からの<クナイ>による攻撃が防がれた俺は、その強固な守りが薄いであろう関節を狙うために再び消える。
「……?」
ラウザークは、『忍びの術』の効果によって俺の存在を認識できてないようだ。キョロキョロと周りを見渡している。その間に俺は既に奴の下に潜り込んでいた。あとは<クナイ>によって正確に頭と胴体の隙間を下から狙うだけだ。
── 勝った。
俺が勝利を確信した、その瞬間頬を何かが掠った。
「っ痛!!」
突然の痛みに、俺は頭が真っ白になり反射的に頬に手をやる。べちゃ、という音を立てた手のひらを眼前に持っていけば血に濡れた手のひらが映った。下を見れば俺の頬を掠めたであろう、魔法剣が地面に深々と突き刺さっている。
いや、地面だけじゃない。壁も天井もあらゆる場所に魔法剣が突き刺さっており、今も空中には次弾の魔法剣が装填されている。
── くそっ、やられた!!
ラウザークは全方位放射攻撃に切り替えたのだ。これでは相手にこちらが見えないとか、もう関係がない。さらにこのタイミングで<空中歩行>の効果が切れる。つまり30秒は地面を走って、攻撃を避け続けなければならない。
「いや……避けなくてもいい、か」
覚悟は少々必要だが……俺は全ての攻撃を避けないことにした。立ち止まり、当たる攻撃は仕方ないものとして扱う、頭だけは守りながら。
「<治癒>……<治癒>……<治癒>」
傷がある程度蓄積されれば、スキルで回復させる。下手に動き回ってスキルを無駄遣いするよりも、これの方が良い。だが痛い、絶え間なく斬撃が降り注ぎ、傷は時を追うごとに増え続ける。俺の足元にはすぐ血溜まりが出来た。
問題はラウザークの魔法攻撃がいつまで続くか……だが、あまり心配する必要もなかったようだ。
「ヴゥン……」
いきなり攻撃が止んだかと思えば、奴はひと仕事を終えたかのように元の位置、部屋の中央に戻ったのだ。俺は<隠密>のまま、その後ろに移動し、
「<クナイ>」
奴の首、一点目がけて力いっぱいに刺す。
「……ッヴゥン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!」
ラウザークは意識外からの突然の急所への攻撃に断末魔をあげる。耳が張り裂けそうなほどの絶叫の後、光の粒子になって奴は宙に霧散していった。その光に包まれながら、俺は勝利に酔いしれた。このダンジョンに入ってしまってから、初めて自身一人で掴み取った勝利だった。
魔神ラウザークに頭上からの<クナイ>による攻撃が防がれた俺は、その強固な守りが薄いであろう関節を狙うために再び消える。
「……?」
ラウザークは、『忍びの術』の効果によって俺の存在を認識できてないようだ。キョロキョロと周りを見渡している。その間に俺は既に奴の下に潜り込んでいた。あとは<クナイ>によって正確に頭と胴体の隙間を下から狙うだけだ。
── 勝った。
俺が勝利を確信した、その瞬間頬を何かが掠った。
「っ痛!!」
突然の痛みに、俺は頭が真っ白になり反射的に頬に手をやる。べちゃ、という音を立てた手のひらを眼前に持っていけば血に濡れた手のひらが映った。下を見れば俺の頬を掠めたであろう、魔法剣が地面に深々と突き刺さっている。
いや、地面だけじゃない。壁も天井もあらゆる場所に魔法剣が突き刺さっており、今も空中には次弾の魔法剣が装填されている。
── くそっ、やられた!!
ラウザークは全方位放射攻撃に切り替えたのだ。これでは相手にこちらが見えないとか、もう関係がない。さらにこのタイミングで<空中歩行>の効果が切れる。つまり30秒は地面を走って、攻撃を避け続けなければならない。
「いや……避けなくてもいい、か」
覚悟は少々必要だが……俺は全ての攻撃を避けないことにした。立ち止まり、当たる攻撃は仕方ないものとして扱う、頭だけは守りながら。
「<治癒>……<治癒>……<治癒>」
傷がある程度蓄積されれば、スキルで回復させる。下手に動き回ってスキルを無駄遣いするよりも、これの方が良い。だが痛い、絶え間なく斬撃が降り注ぎ、傷は時を追うごとに増え続ける。俺の足元にはすぐ血溜まりが出来た。
問題はラウザークの魔法攻撃がいつまで続くか……だが、あまり心配する必要もなかったようだ。
「ヴゥン……」
いきなり攻撃が止んだかと思えば、奴はひと仕事を終えたかのように元の位置、部屋の中央に戻ったのだ。俺は<隠密>のまま、その後ろに移動し、
「<クナイ>」
奴の首、一点目がけて力いっぱいに刺す。
「……ッヴゥン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!」
ラウザークは意識外からの突然の急所への攻撃に断末魔をあげる。耳が張り裂けそうなほどの絶叫の後、光の粒子になって奴は宙に霧散していった。その光に包まれながら、俺は勝利に酔いしれた。このダンジョンに入ってしまってから、初めて自身一人で掴み取った勝利だった。
20
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
アレイスター・テイル
ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
ファンタジー
一ノ瀬和哉は普通の高校生だった。
ある日、突然現れた少女とであり、魔導師として現世と魔導師の世界を行き来することになる。
現世×ファンタジー×魔法 物語
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる