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3人目

覚悟

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「<隠密ハイド>っ!」

 魔神ラウザークに頭上からの<クナイ>による攻撃が防がれた俺は、その強固な守りが薄いであろう関節を狙うために再び消える。

「……?」

 ラウザークは、『忍びの術』の効果によって俺の存在を認識できてないようだ。キョロキョロと周りを見渡している。その間に俺は既に奴の下に潜り込んでいた。あとは<クナイ>によって正確に頭と胴体の隙間を下から狙うだけだ。

── 勝った。

 俺が勝利を確信した、その瞬間頬を何かが掠った。

「っ!!」

 突然の痛みに、俺は頭が真っ白になり反射的に頬に手をやる。べちゃ、という音を立てた手のひらを眼前に持っていけば血に濡れた手のひらが映った。下を見れば俺の頬を掠めたであろう、魔法剣マジックソードが地面に深々と突き刺さっている。

 いや、地面だけじゃない。壁も天井もあらゆる場所に魔法剣マジックソードが突き刺さっており、今も空中には次弾の魔法剣マジックソードが装填されている。

── くそっ、やられた!!

 ラウザークは全方位放射攻撃に切り替えたのだ。これでは相手にこちらが見えないとか、もう関係がない。さらにこのタイミングで<空中歩行>の効果が切れる。つまり30秒は地面を走って、攻撃を避け続けなければならない。

「いや……避けなくてもいい、か」

 覚悟は少々必要だが……俺は全ての攻撃を避けないことにした。立ち止まり、当たる攻撃は仕方ないものとして扱う、頭だけは守りながら。

「<治癒ヒール>……<治癒ヒール>……<治癒ヒール>」

 傷がある程度蓄積されれば、スキルで回復させる。下手に動き回ってスキルを無駄遣いするよりも、これの方が良い。だが痛い、絶え間なく斬撃が降り注ぎ、傷は時を追うごとに増え続ける。俺の足元にはすぐ血溜まりが出来た。

 問題はラウザークの魔法攻撃がいつまで続くか……だが、あまり心配する必要もなかったようだ。

「ヴゥン……」
 
 いきなり攻撃が止んだかと思えば、奴はひと仕事を終えたかのように元の位置、部屋の中央に戻ったのだ。俺は<隠密ハイド>のまま、その後ろに移動し、

「<クナイ>」

 奴の首、一点目がけて力いっぱいに刺す。

「……ッヴゥン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!」

 ラウザークは意識外からの突然の急所への攻撃に断末魔をあげる。耳が張り裂けそうなほどの絶叫の後、光の粒子になって奴は宙に霧散していった。その光に包まれながら、俺は勝利に酔いしれた。このダンジョンに入ってしまってから、初めて自身一人で掴み取った勝利だった。

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