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幕間

思考

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 現状を整理しよう。

 まず脱出手段。裏迷宮2層から脱出する手段は、今のところ俺の手にある転移石のみだ。2人までならどこからでも共和国の議会場に転移できる。あとは、裏迷宮の下層のどこかにあると思われる転移魔法陣ぐらいか。

 次に目の前の戦い。
 既に僧侶のエドワードを失った帝国側が少しだけ劣勢、アラクネのリィラと罪斬りのエレナは互角といったところだろう。アラクネの魔族故の有利性をエレナの戦闘経験とセンスが打ち消している。あと特筆すべきなのはタカダ マサトか。さっきステータスを見た時に転生者特典として表示されていた『風固定』、恐らくは不可視の遠距離攻撃を可能にしているものだろう。

 そして勢力図。エレナの話によると、百年前に教国の聖女ミラと相打ちになったとされる魔王軍四天王の『不敗のユーラ』が力を取り戻し魔王となったという。これはアラクネの話とも一致する。

 そしてその対抗勢力として教国、帝国、共和国は[転生者の篝火]である俺を手に入れようと、刺客を送ってきている。俺が居れば、その国はほぼ無限に転生者との縁に恵まれ、さらにその転生者を使い潰したとて俺に転生者特典は全て移る。これは対魔王という点において強力な利点なんだろう。

 100年前の戦いでも[転生者の篝火]は居た、とエレナは言った。当時、ソイツは共和国に居たのだろう。魔王を倒したパータロル様やラーン様は共和国出身の転生者だからだ。魔王を直接倒した功績は大きく、元々魔王が支配していた土地の半分以上は共和国のものとなった歴史がある。

 当然、ある疑問が浮かぶ。

 なぜ[転生者の篝火]という存在は隠されているのか? また裏迷宮の存在を各国の上層部はなぜ隠しているのか? 

 その答えについて、俺には嫌な理由しか思い浮かばなかった。例えば[転生者の篝火]を思うように利用する際、逃げないようにするためだとか。どの国についても不当な扱いを受ける未来しか想像出来なかった。かといって魔王軍につくのも論外だろう。

 取り敢えずは今の戦場からこっそり抜け出すのが無難か。

 アラクネが四方八方に糸を張り巡らせながら、縦横無尽に駆け回り、それに対しエレナは一歩も動かず大鎌で攻撃を受け続ける。トーマスはアラクネの着地点に正確に木属性の魔法を発生させ、アレスとライアンはタカダマサトのスキルによって宙を蹴り、糸を斬りつつ、臨機応変にアラクネとエレナ両者の隙を無差別に突く。

「<隠密ハイド>」

 セージの転生者特典による完全隠密、この状態ならば俺に認識が向くこともあるまい。そう思い、一歩下がった時だった。
 がしっ、と腕ごと巻き込む形で透明の何か...…大きな手? に体が拘束される。

「……逃がすか」

 タカダマサトが見えないはずのこちらをじっ、と見つめてそう言った。

 
 
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