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「スキルが、ステータスが無くなっている……?」
アレスの震える声に、その場の全員に衝撃が走る。アラクネは動揺を見せる俺たちに不敵な笑みを浮かべ、反応を楽しもうと考えているのか何も追撃をしない。直ぐにアラクネの攻撃を受けたライアン、トーマス、エドワード、タカダの全員が自身のステータスを開いた。
4人も「嘘だろ!? 俺のスキルが!」「なんと……」「信じられ……ません」「これは……」と四者四様の反応だが、みな絶望という同じ感情を抱いていた。
「……え?」
だが、俺は違った。俺は称号[転生者の篝火]の力によって、転生者がステータスを開いている場合、そのステータスを視認することが出来る。だから当然、タカダのそれを見た。見て、口がポカンと開いた。見えたそのステータスは正常そのものだったからだ。
だがタカダはステータス全てが消えたと言っている。この違いはなんだ?
「うふふ……驚いたかしら?」
勝ち誇ったような顔のアラクネに対して、帝国の連中は何も言えずにじりじりと後退している。
『不敗のユーラ』は人のスキルとステータスを一部、一定時間奪うスキルを持っていたとされている。このアラクネは部下というのに、その伝承以上のスキルを持っているのだろうか?
否、違う。これは
「幻覚だ!」
「なっ……!?」
俺の叫びにアラクネは明らかに焦りを浮かべ振り返る。恐らくは俺が転生者のステータスを見れることを知らなかったんだろう。
俺にはタカダのステータスが正常に見える。つまりそれはステータス自体に干渉するスキルではなく、個人に干渉するスキルであるはずだ。そこまで分かれば簡単な話だった。
「<破砕>!」
アレスは直ぐにスキルを発動させて、その場で大剣を地面に叩きつけた。ドォン、という鈍い音と共に明らかに素の力を超えた斬撃による亀裂が地面に生まれる。
「確かに、な。やるじゃねえか、グランツ!」
「あっ、あぁ……まあな」
馴れ馴れしくアレスは俺に感心を示し、そのまま再び戦闘の構えを取った。残る四人もそれにならう。
「チッ……バレたものは仕方ないわね。めんどうだから退いてくれたありがたかったのだけど?」
「退くわけにはいかねえな、グランツは帝国のもんだ」
「分からないわね。貴方たちは裏迷宮から出る方法も分かっていないのでしょう? なぜそんな死地に送る帝国に従うの?」
裏迷宮から出る方法も分かっていない?
あっさりとアラクネが口にした言葉に俺は目の前が真っ暗になった。帝国に直接遣わされた人間が出口を知らない。教国に遣わされたセージも知らなかった。そんな所に俺は居る。
俺の暗闇の感情とは関係なく、アラクネとアレスの会話は続く。
「簡単だ。俺たちは帝国に拾ってもらった命、帝国のためなら死んでも構わねえ。帝国は死んでも裏切らねえ」
「大層な心がけね」
その時、ふと俺の指に何かが触れた。後ろ手に姿勢を支えて座るようにしている俺の手に触れた、それは間違いなく人の指だった。
驚いて振り返ろうとする。
「しっ……静かに。私はエレナよ。貴方を保護しにきたわ」
耳で囁かれたその声が本当ならば、俺はこの人に着いていくべきだろう。罪斬りのエレナが間違いなくこの場で1番の強者だからだ。
アレスの震える声に、その場の全員に衝撃が走る。アラクネは動揺を見せる俺たちに不敵な笑みを浮かべ、反応を楽しもうと考えているのか何も追撃をしない。直ぐにアラクネの攻撃を受けたライアン、トーマス、エドワード、タカダの全員が自身のステータスを開いた。
4人も「嘘だろ!? 俺のスキルが!」「なんと……」「信じられ……ません」「これは……」と四者四様の反応だが、みな絶望という同じ感情を抱いていた。
「……え?」
だが、俺は違った。俺は称号[転生者の篝火]の力によって、転生者がステータスを開いている場合、そのステータスを視認することが出来る。だから当然、タカダのそれを見た。見て、口がポカンと開いた。見えたそのステータスは正常そのものだったからだ。
だがタカダはステータス全てが消えたと言っている。この違いはなんだ?
「うふふ……驚いたかしら?」
勝ち誇ったような顔のアラクネに対して、帝国の連中は何も言えずにじりじりと後退している。
『不敗のユーラ』は人のスキルとステータスを一部、一定時間奪うスキルを持っていたとされている。このアラクネは部下というのに、その伝承以上のスキルを持っているのだろうか?
否、違う。これは
「幻覚だ!」
「なっ……!?」
俺の叫びにアラクネは明らかに焦りを浮かべ振り返る。恐らくは俺が転生者のステータスを見れることを知らなかったんだろう。
俺にはタカダのステータスが正常に見える。つまりそれはステータス自体に干渉するスキルではなく、個人に干渉するスキルであるはずだ。そこまで分かれば簡単な話だった。
「<破砕>!」
アレスは直ぐにスキルを発動させて、その場で大剣を地面に叩きつけた。ドォン、という鈍い音と共に明らかに素の力を超えた斬撃による亀裂が地面に生まれる。
「確かに、な。やるじゃねえか、グランツ!」
「あっ、あぁ……まあな」
馴れ馴れしくアレスは俺に感心を示し、そのまま再び戦闘の構えを取った。残る四人もそれにならう。
「チッ……バレたものは仕方ないわね。めんどうだから退いてくれたありがたかったのだけど?」
「退くわけにはいかねえな、グランツは帝国のもんだ」
「分からないわね。貴方たちは裏迷宮から出る方法も分かっていないのでしょう? なぜそんな死地に送る帝国に従うの?」
裏迷宮から出る方法も分かっていない?
あっさりとアラクネが口にした言葉に俺は目の前が真っ暗になった。帝国に直接遣わされた人間が出口を知らない。教国に遣わされたセージも知らなかった。そんな所に俺は居る。
俺の暗闇の感情とは関係なく、アラクネとアレスの会話は続く。
「簡単だ。俺たちは帝国に拾ってもらった命、帝国のためなら死んでも構わねえ。帝国は死んでも裏切らねえ」
「大層な心がけね」
その時、ふと俺の指に何かが触れた。後ろ手に姿勢を支えて座るようにしている俺の手に触れた、それは間違いなく人の指だった。
驚いて振り返ろうとする。
「しっ……静かに。私はエレナよ。貴方を保護しにきたわ」
耳で囁かれたその声が本当ならば、俺はこの人に着いていくべきだろう。罪斬りのエレナが間違いなくこの場で1番の強者だからだ。
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