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激痛に気を失いそうになり、ぼやける視界の中グランツがフレイムサーペントのその長い胴体に巻き取られ、絞められているのが見えた。
「同期切断」
俺がそう言い終えた瞬間、元の身体に意識が戻り痛みも全て消える。さっきまで戦っていたのはスキル<分身>による分身体だ。分身体は俺が本体に意識を戻した時点で消える。
本体の俺の視界には、すっかり俺を殺したと思い込んでグランツにとどめを刺すことに必死なフレイムサーペントのうなじが丸見えだった。
「グランツ、よく耐えた!」
背後からの必殺の一撃、転生者特典『忍びの術』により死角からの急所への攻撃はその威力が十倍になる。
「はぁぁ!!!」
全力を込めた一撃、フレイムサーペントもようやく気付くが既に遅い。ナイフと奴の表皮の間に一瞬、赤黒い閃光が走り
── グサッ
心地よい音と共に、グランツを今にも絞め殺さんとしていたフレイムサーペントの尾が脱力する。作戦通りの勝利だった。
「やるな、怪我は無いか?」
「それを言うならお前だろう、大丈夫か?」
巻きついた重い尾をどかしながら問うグランツの方がどう見ても重症だ。全身に擦り傷は出来てるし、締め付けられて血を吐いていたんだ。内臓もかなりの損傷を負っているだろう。
「俺は大丈夫だ、<治癒>……ほら、元通り」
だが、グランツは大したことじゃないと言うように笑って治してみせる。いくら怪我は治せるからといって、痛みはあるだろうに。
俺が今まで戦ってきた仲間たちは、みなこの戦術を使えば「もっと早く倒せた」とか「お前だけ安全圏に」と文句を言われるから今回も覚悟をしてたんだが、杞憂だったようだ。
「お前は良い奴だな」
「そうか?」
その時だった。
ピーン、と<探知>特有の脳に直接来る痛みが発生する。これは……溶岩湖の中か。
「グランツ、もう一体来た。行けryっ!?」
言葉が途切れてしまう。違う。もう一体じゃない。絶えず<探知>が迫り来る危機を知らせ続ける、何度も何度も何度も。
「おい、どうした? 大丈夫か!?」
心配そうにこちらに駆け寄ってくれるグランツだが、俺にはそれに返事が出来るほどの余裕が無かった。信じられない<探知>の結果に、もはや笑いすらこぼれる。
「セージ、どうして笑ってる!? 敵は何体だ?」
戦いの音を聞き付けたのだろうか。溶岩湖から次々と魔物の反応が<探知>されたのだ。その数捉え切れるだけでも十五以上、もはや勝てる戦いじゃない。
「数え切れないほどだ、グランツ。これは勝てない」
俺の言葉を聞いたグランツは何故かホッとしたような表情を見せる。
「勝てない、と判断出来たなら逃げればいい。お前のスキルなら大丈夫だろう」
── あ、一つだけ打開の方法があった。
グランツの言葉で俺はひとつの作戦を思いつく。だが、決してその作戦の内容は言わない、言えない。俺は無言のままグランツを抱え上げた。
「えっ?」
そのまま全力で走り、さっきまでの場所から出来るだけ遠くへ遠くへ逃げる。だいたい50メートルほど離れただろうか、岩陰で俺はグランツを下ろした。
「ここで隠れる、というわけだな」
グランツの言葉は残念ながら間違っている。俺だけならここで隠れ続けるだけで良いが、グランツの<潜伏>じゃいずれバレる。というか、ここまで走ってる様子を恐らく何体かの魔物には視認されているから根本的にダメだ。
「グランツ、お前は生きろ」
[転生者の篝火]は世界に降りかかる災厄の為に生まれた存在だ。俺が死んでも転生者特典はグランツに移るだけだが、グランツが死ねば雫の転生者特典が消えてしまう。教国の為、世界の為にこんなところで死なせる訳にはいかない。
それに、俺個人の感情としても生きて欲しい。どうしてか短い間の仲間だったが、そう思ってしまった。
「それはどういう……」
グランツの言葉が終わる前に俺は逃げるように、意識同期を切断した。
そう、グランツを運んだのは俺の分身体だ。本体の俺は未だフレイムサーペントを倒した場所に居る。転生者特典と<隠密>によりバレていないが、既に周りを魔物に取り囲まれている中、俺はさっき思い付いた打開策を始めることにした。
「<水生成>っ!」
唱えたのは初級生活魔法、瞬時に俺の掌に300mlほどの水球が出現する。俺はその水を溶岩湖に落とす。水蒸気爆発、水が非常に温度の高い物質と接触することにより気化されて発生する爆発現象。
つんざく轟音と光に包まれ、俺は意識を手放した。
ステータス
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[リューロ・グランツ] 19歳 人族 男
レベル 40
体力 A
魔力 A
膂力 A
俊敏性 A
スキル
<逃亡>< 疾走 ><軽量化><隠密><治癒><反転><対象変更><鑑定><瞬歩><クナイ><空中歩行>
称号
[転生者の篝火]⋯転生者と出会い導く運命を神に与えられた者の称号。その篝火を灯せば転生者は正しく道を歩み貴方に感謝するだろう。その篝火を消せば転生者は霧の中を彷徨い、全ての力は貴方の手の上のものになるだろう。
転生者特典
『超回復』『忍びの術』
「同期切断」
俺がそう言い終えた瞬間、元の身体に意識が戻り痛みも全て消える。さっきまで戦っていたのはスキル<分身>による分身体だ。分身体は俺が本体に意識を戻した時点で消える。
本体の俺の視界には、すっかり俺を殺したと思い込んでグランツにとどめを刺すことに必死なフレイムサーペントのうなじが丸見えだった。
「グランツ、よく耐えた!」
背後からの必殺の一撃、転生者特典『忍びの術』により死角からの急所への攻撃はその威力が十倍になる。
「はぁぁ!!!」
全力を込めた一撃、フレイムサーペントもようやく気付くが既に遅い。ナイフと奴の表皮の間に一瞬、赤黒い閃光が走り
── グサッ
心地よい音と共に、グランツを今にも絞め殺さんとしていたフレイムサーペントの尾が脱力する。作戦通りの勝利だった。
「やるな、怪我は無いか?」
「それを言うならお前だろう、大丈夫か?」
巻きついた重い尾をどかしながら問うグランツの方がどう見ても重症だ。全身に擦り傷は出来てるし、締め付けられて血を吐いていたんだ。内臓もかなりの損傷を負っているだろう。
「俺は大丈夫だ、<治癒>……ほら、元通り」
だが、グランツは大したことじゃないと言うように笑って治してみせる。いくら怪我は治せるからといって、痛みはあるだろうに。
俺が今まで戦ってきた仲間たちは、みなこの戦術を使えば「もっと早く倒せた」とか「お前だけ安全圏に」と文句を言われるから今回も覚悟をしてたんだが、杞憂だったようだ。
「お前は良い奴だな」
「そうか?」
その時だった。
ピーン、と<探知>特有の脳に直接来る痛みが発生する。これは……溶岩湖の中か。
「グランツ、もう一体来た。行けryっ!?」
言葉が途切れてしまう。違う。もう一体じゃない。絶えず<探知>が迫り来る危機を知らせ続ける、何度も何度も何度も。
「おい、どうした? 大丈夫か!?」
心配そうにこちらに駆け寄ってくれるグランツだが、俺にはそれに返事が出来るほどの余裕が無かった。信じられない<探知>の結果に、もはや笑いすらこぼれる。
「セージ、どうして笑ってる!? 敵は何体だ?」
戦いの音を聞き付けたのだろうか。溶岩湖から次々と魔物の反応が<探知>されたのだ。その数捉え切れるだけでも十五以上、もはや勝てる戦いじゃない。
「数え切れないほどだ、グランツ。これは勝てない」
俺の言葉を聞いたグランツは何故かホッとしたような表情を見せる。
「勝てない、と判断出来たなら逃げればいい。お前のスキルなら大丈夫だろう」
── あ、一つだけ打開の方法があった。
グランツの言葉で俺はひとつの作戦を思いつく。だが、決してその作戦の内容は言わない、言えない。俺は無言のままグランツを抱え上げた。
「えっ?」
そのまま全力で走り、さっきまでの場所から出来るだけ遠くへ遠くへ逃げる。だいたい50メートルほど離れただろうか、岩陰で俺はグランツを下ろした。
「ここで隠れる、というわけだな」
グランツの言葉は残念ながら間違っている。俺だけならここで隠れ続けるだけで良いが、グランツの<潜伏>じゃいずれバレる。というか、ここまで走ってる様子を恐らく何体かの魔物には視認されているから根本的にダメだ。
「グランツ、お前は生きろ」
[転生者の篝火]は世界に降りかかる災厄の為に生まれた存在だ。俺が死んでも転生者特典はグランツに移るだけだが、グランツが死ねば雫の転生者特典が消えてしまう。教国の為、世界の為にこんなところで死なせる訳にはいかない。
それに、俺個人の感情としても生きて欲しい。どうしてか短い間の仲間だったが、そう思ってしまった。
「それはどういう……」
グランツの言葉が終わる前に俺は逃げるように、意識同期を切断した。
そう、グランツを運んだのは俺の分身体だ。本体の俺は未だフレイムサーペントを倒した場所に居る。転生者特典と<隠密>によりバレていないが、既に周りを魔物に取り囲まれている中、俺はさっき思い付いた打開策を始めることにした。
「<水生成>っ!」
唱えたのは初級生活魔法、瞬時に俺の掌に300mlほどの水球が出現する。俺はその水を溶岩湖に落とす。水蒸気爆発、水が非常に温度の高い物質と接触することにより気化されて発生する爆発現象。
つんざく轟音と光に包まれ、俺は意識を手放した。
ステータス
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[リューロ・グランツ] 19歳 人族 男
レベル 40
体力 A
魔力 A
膂力 A
俊敏性 A
スキル
<逃亡>< 疾走 ><軽量化><隠密><治癒><反転><対象変更><鑑定><瞬歩><クナイ><空中歩行>
称号
[転生者の篝火]⋯転生者と出会い導く運命を神に与えられた者の称号。その篝火を灯せば転生者は正しく道を歩み貴方に感謝するだろう。その篝火を消せば転生者は霧の中を彷徨い、全ての力は貴方の手の上のものになるだろう。
転生者特典
『超回復』『忍びの術』
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