深きダンジョンの奥底より

ディメンションキャット

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くっ……

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「おい、お前何モンだ」

 レックスに、いやアレスに首根っこを掴まれ、浮かされながらも俺は懸命に逃れようとするが、どうにも身体が思うように動かない。何か行動阻害系の魔法が発動しているのだろう。

 質問に答えず逃げようとする俺の態度が気に触ったのか、パーティの一人、<鑑定アプレーザル>ではライアンと名が表示されている長髪で眼鏡をかけた男が俺の腹を蹴る。

「う゛っ」

 凄まじい威力、ありとあらゆる内臓が口から飛び出すんじゃないかと勘違いするほどに。ヤバい、こいつらはヤバい。一撃でそう悟ってしまう。

「もう良いよ、アレス。さっさと殺そう」
「待ちなさいライアン、せめて情報を聞き出さないと」
「ああ、こいつはまだ殺せない」

 2撃目を繰り出そうと拳を握るライアンの肩をトーマスとエドワードが抑える。トーマスのもう片方の手には杖が握られていることからコイツが俺に何らかの行動阻害魔法をかけているに違いない。

 アレスは恐らく前衛職、ライアンも格闘家で前衛職だろう。転生者の奴は盗賊で、トーマスが魔道士ということは、残ったエドワードは僧侶か。

「スキル<鑑定アプレーザル>」

 ライアン、トーマス、エドワードから一歩下がった後ろで転生者、タカダ マサトが俺に鑑定スキルを発動させる。が、それは俺にとって無意味だ。

「……なんだ? 鑑定が出来ない?」
「なに?」

 眉をひそめ、そう言ったタカダにアレス含めパーティ全員が驚いた表情を見せる。

 教王の加護の力、俺はそれを授けて頂いてる。鑑定を受けたとしても、決して転生者とバレないようにする為にだ。だが、奴らに拘束されている現状は一切好転していない。どうにかして逃げる隙を探さないと……。

「アレス、殺すしかない。こいつ多分、拷問しても……」
「吐かねえ、だろうな。俺らも鑑定されちまったし……仕方ないか」
「えっ、ちょ、早くない?」

 しまった……思わず口を挟んでしまった。いや、でも明らかに早計だろ。情報を、とか言ってた癖にそんな急に俺を殺す方向に考えるか?  何か、俺を殺す方向にことが運ばれているような……

「お前を生かしておく方が危険だ、どう考えてもな」
 
 アレスが首を掴んでいた手を離したせいで俺の体は地面に叩き付けられる。

 今しかない!

 瞬時にそう判断して、スキルを発動させようとする。が、俺の自由は刹那にも満たない時間だった。

「逃がしませんよ」

 エドワードが杖を、とん、と地面にぶつけたその瞬間に地面から太い蔦が何本も生え、俺をぐるぐる巻きに拘束する。

「っ無詠唱……!?」

 それに普通の拘束魔法ならば簡単に抜けられるのに、今回は全く身動きが取れない。

「くそっ……」

 再び膝をつかされた俺をニヤニヤと見下ろしながら、アレスが懐から取りだしたのは金属製の歪な球体だった。カチ、カチ、と鳴っているそれを見たエドワードは唾を飲み込んで一歩下がる。他の連中もみな、球体を恐れているようだった。

 ── こいつら、帝国の連中か?

 帝国は科学技術が発展した国で、魔法と科学を融合させた兵器によって強大な軍事力を誇っている。目の前の球体も軍用兵器、いやエドワードらが信用しきっていないのを見るにそれの試作版と言ったところだろうか。

「お前ら帝国の者だな。それはなんだ?」
「さあな、そのうち分かる」
 
 はぐらかしたアレスは球体を強く握り締めた腕を1度引き、肘を曲げで筋肉を膨張させ、そして今度は俺の腹めがけて急速に腕を伸ばした。

「えっ、ちょ」

 ── コレは死ぬ!

 死を感じ、思わず目を瞑ってしまう。が、いつまで経っても衝撃は来なかった。目を開ければ、さっきと同じようにアレスは立って見下ろしているし、ほかの仲間にも変化は無い。唯一、例の球体だけが消えていた。

「今、お前の身体の中に爆弾を仕掛けた」
「はっ?」
「お前を今から裏迷宮に突き落とすから、落下地点の魔物ごと散り死んでくれ」

 カチ、カチ、と確かに腹の中から鳴る音で気が狂いそうになった。
 
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