上 下
23 / 33

23.女神のこと忘れてました

しおりを挟む
 はぁ~、昨日は大変だったなー。
 今考えても怖ろしい……

 今日は疲れも残ってるし、まだ少し財布に余裕もあるし、休みにするかな。

 そういえば、あの女神様を祀っている神社? 教会? はあるのだろうか。
 もう何回も10円玉召喚スキルに助けられてるし、お礼にお参りに行ってみるのもいいかもな。
 信仰心が集まれば、もっといいスキルがもらえるとかなんとか言ってた気もするし。

 そうと決まればさっそく……朝飯食べよう。

 俺は意気揚々と宿屋の階段を下りる。

 ぎゃーーーー!!!!

 痛い痛い!
 足から伝わる振動が全身を駆け巡り刺激する。

 次の日に筋肉痛が来るなんて、まだまだ俺も若いじゃないか……!!

「セイラさん、おはようございます。朝食をお願いします」

「あんた昨日初めて魔物を倒したらしいわね」

 その情報キンジくんも知っていたが、この村には個人情報保護とかないのか?
 まぁ、悪い話じゃないから別にいいけどさ……

「まぁ、あんたにしてはよくやったんじゃない? その歳じゃ遅過ぎるくらいだけどね」

 今日はセイラさんの機嫌が良さそうだ。

「はは、ありがとうございます。ちなみにその情報はどこで?」

「き、キンジが昨日、あんたが来たすぐあとに来て教えてくれたのよ!」

 銭湯で別れたあと、キンジくんも宿に来てたのか。
 わざわざ俺と別れて単独で会いに来るあたり、キンジくんもまんざらじゃない感じかな?
 おじさん、わくわくすっぞ。

 機嫌が良さそうだしついでに神社の場所も聞いとこ。

「そうなんですね。あの、今日神社に行きたいんですけど、この村にありますかね?」

「もちろんあるわよ、ワカワ神社が。ここから北西の方にずっと行ったところよ」

「ありがとうございます。朝食を食べたら行ってみます」


 ―◇◇◇―


 途中、人に道を尋ねながらなんとかワカワ神社に辿り着く。

 おー、鳥居もあるし、なかなか趣深い雰囲気じゃないか。
 あ! 巫女さんもいる!
 巫女さんってなんだかよくわからないけどいいよね。
 初詣の時にいるのは大体アルバイトだけど。

 巫女さんにこの神社のことを聞いてみよう。
 うん、それがいい。

「すみません。この神社はどんな神様を祀っていらっしゃるんですか?」

「神社は全国どこからお祈りしても、思い浮かべた神様に通じることが出来るので安心してお参りください」

 神社はそれぞれ思い浮かべた神様のところに、思いが届けられるシステムらしい。
 本当かぁ? 絶対、神社側の集金システムでしょ。
 1柱に絞るよりもいろんな神の信仰者が来てくれた方が、お賽銭たくさんもらえるもんな。

 そうだ、お参りするならお賽銭が必要だよなぁ。
 さすがにお賽銭無しってわけにはいかないよな。
 お賽銭いくらにするかなぁ。
 10円もらって10円返すのもなんか癪だし、1円でいいか。

 カランカラン

「弱小貧乏女神様、来るのが遅くなってすみません。完全に忘れてました。チートスキルはショボいですが、何回も助けられてます。ありがとうございます」

『だから弱小貧乏女神言うな!』

 え? マジで繋がるの?
 神社の集金システムとか言って申し訳ない。

「まぁ、弱小貧乏女神でも繋がったってことはそういうことですよ。そもそもお名前伺ってないですし」

『わしの名は天橘姫命(あめのたちばなひめのみこと)じゃ! ちゃんと覚えとけぃ! てか、来るのが遅過ぎじゃ! 普通すぐに来るじゃろ! どれだけ待たせるんじゃ! しかも来たと思ったら1円て! 1円て! 信仰心低過ぎじゃ! ツッコミどころ多過ぎじゃ!』

 な、なげぇ……
 名前も話もなげぇ……

「あ、はい。頑張ります。それじゃ」

『待てーい! 勝手に行こうとするな!』

 面倒くさそうだから適当に返事をして去ろうと思ったが、引き止められてしまった。

『実はな……言いづらいんじゃが……そのぅ……ま、またうめぇ棒が食べたいのじゃ!!』

「えぇ!? そんなこと言われても、もう持ってないですし」

『そこは心配ない。神界のシステムで、1度入手したものは信仰ポイントを消費することで取り寄せることができるのじゃ!』

 な、なんか神の世界ってゲームみたいなんだなぁ……

「それじゃあ、10円をお賽銭すればいいってことですか? しょうがないなぁ」

『そんなに安いわけないじゃろ! それならおぬしの10円玉召喚スキルを返してもらえば毎日食べられるわ!』

 ま、まぁ確かにそうだわな。そんなに安ければ俺に頼まなくても自分で買えるよな。
 
『異世界のものを取り寄せるのは高いのじゃ。信仰ポイントはお賽銭100円で1ポイントじゃからここでまず100倍。この世界と地球の為替レートでさらに10倍。それからまぁ関税や送料みたいなもんかの、世界を超えるのにさらに10倍かかるんじゃ。つまり10円のうめぇ棒を手に入れるのに10万円のお賽銭が必要なんじゃあ! 最高神様は鬼畜じゃあぁぁぁ!!』

 は、はぁぁ!? それじゃあ、うめぇ棒1本手に入れるのにこっちの世界で10万円、日本円に換算したら100万円必要ってことか!?
 俺の稼ぎじゃ絶対無理だぞ!

『まぁ、そう心配するでない。信仰ポイントは何もお賽銭の額だけで決まるものではないのじゃ。そもそも、おぬしに金を期待しても仕方ないからの』

 ぐぬぬ、言い返せねぇのが腹立つ。

『なんのためにチートスキルをおぬしに授けたと思っておるんじゃ! わしのために働け! 信仰ポイントを手っ取り早く稼ぐ方法を教えてやろう。それはな……祭りをすることじゃ! わしを讃える祭りを開催するのじゃ! そこで食べたり飲んだり踊ったり、みんなが幸せになることでわしの信仰ポイントも貯まるのじゃ。もちろんわしにもおいしいものを供えるのじゃぞ。な? 簡単じゃろ?』

 簡単なわけねーだろ!!
 そもそも祭りなんてどうやって開くんだよ!
 開催するのに費用もかかるし、スタッフはたくさん必要だし。
 俺は飲み会の幹事すらやったことないんだぞ!
 
『何をそんなくだらないこと自慢気に話してるんじゃ! はぁ……まったくそんなことも出来んのか……使えんやつじゃのう』

「そんなに使えないと思うなら、他の信者に頼めばいいじゃないですか……」

「ばっかもーん! 神は八百万もおるんじゃぞ! わしにそんなに神託が下せる信者がたくさんいるわけないじゃろ! ……言わせるんじゃないよ!」

 八百万(やおよろず)の神って本当に八百万も神様がいるってことなのか……?
 それにしても他にまともな信者がいないのか。悲しいな……
 まぁ、俺も信者ってわけじゃないけど。

『チートスキルもらっといて信者じゃないってどういうことなのじゃ! 誰にでも神託が下せるわけじゃないんじゃぞ! 選ばれし者じゃという自覚を持てい!』

 ほぉ? みんながみんな、神社で祈れば神様と会話が出来るわけじゃないのか。
 神様のランクによって神託を下せる人数とか条件とかが変わってくるのだろうか?
 まぁ弱小貧乏女神もといあめの……なんだっけ? あめちゃんでいいか、は当然最低クラスだろうから、俺としか会話が出来ないのだろう。可哀想に……

『あめちゃんってなんじゃ! 大阪のおばちゃんか! 天橘姫命(あめのたちばなひめのみこと)じゃ! ちゃんと覚えい! くっ、新規異世界人召喚権がたまたま当たったから、そいつを信者にすれば知識チートやらなんやらで大儲け出来ると思っていたのに、完全に当てが外れたのじゃ……』

 なんだその新株予約権みたいなIPO株みたいな制度は……

「……はぁ、わかりましたよ。そこまで言われちゃしょうがないですね。あめちゃんにもらったチートスキルには、何回も助けてもらいましたからね。なんとか出来ないか考えてみます。期待せずに待っててください」

『おお! やってくれる気になったか! 楽しみにしておるぞ! ファイトなのじゃ!』

 こうして俺は神託という名のわがままに付き合うことになった。


 ―◇◇◇―
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...