上 下
19 / 33

19.新装備と魔物基礎

しおりを挟む
 おはよう。

 いやー、懐が暖かい朝は気持ちがいいなぁ。
 こんな日はドラマの主人公にでもなったような気分だ。

 俺は窓を開け、朝の日差しを浴びながら深呼吸をする。

 朝の少し冷たい空気が心地よい。
 懐の暖かさと朝の冷たい空気が、まるで冬にコタツで食べるアイスクリームのようなコラボレーションをしている。

 小鳥が窓の桟にとまる。
 君も一緒に深呼吸するかい?

「おはよう、小鳥さん」

 小鳥はビックリして飛び立つ。

 ……さて、朝食食べに行こう。

「おはようございます。朝食をお願いします」

「……あんたニヤニヤしてて、今日はいつも以上に気持ち悪いわね」

「気になります? 実は割のいい依頼を達成して、欲しい装備が買えるくらいお金が貯まっ……」

「……」

  セイラさんは興味なさそうに去っていった……
 悲しい……


 ―◇◇◇―


「こんにちはー、トトシさんいますかー?」

 俺は早く装備が欲しい気持ちを抑えられず、朝一でトトシさんの店にやってきた。

「お、おぉ、お前さんか。昨日、何か忘れ物でもしたのかの?」

「ふっふっふ、稼いできましたよトトシさん。装備をください!」

「な、なにー!? 昨日の今日で早すぎじゃろ。ヤバい仕事でもしたんじゃなかろうな……?」

 ふっふっふ、トトシさんいいリアクションするじゃないか。
 こういう反応を待っていたんだよ。
 まぁ、ある意味ヤバい依頼ばっかりだったけどな……

「は、はは、そんなわけないじゃないですか……ちょっと、恐い人(ギルマス)から中身を見てはいけない物を運んでくれと言われたりしただけで……」

「……わ、わしは聞かなかったことにするわい」

 確かにこう言うとかなり怪しい仕事をしているな……
 だが正規の依頼だ。俺は悪くない。

「それで2500円くらいで装備を買えたらと思って来たのですが。俺は革の胸当てなんかがいいと思うのですが」

「そうじゃのう。ランクの低い魔物を相手に、ナイフでヒットアンドアウェイを狙うなら軽い装備の方がいいじゃろうな。その予算なら、革の胸当てと木の篭手がおすすめじゃの」

 篭手か。篭手ってなんかかっこいいよな。
 最悪、盾みたいにガードも出来るしな。かなり痛そうだけど……

「いいですね。おいくらですか?」

「革の胸当て2000円に、木の篭手が両腕で400円、合わせて2400円じゃの」

 うん、予算内だ。革と木でちょっとちぐはぐだが、色合いも似てるし悪くないな。

「それではそれでお願いします」

「まいどあり。装備を整えたからって、調子に乗って危険な真似はせぬようにな」

 そうだな。装備を新調した時が1番気が緩んで危険なんだ。
 強くなった気がして気が大きくなったり、性能を試してみたくて危険なところに突っ込んでしまったり。
 まずは魔物について情報収集するところから始めよう。
 未だにスライムしか知らないからね……

 そうと決まったら冒険者ギルドに行ってみよう!


 ―◇◇◇―


 カラーン

 俺は冒険者ギルドに入り、一直線に受付のライチさんの元に向かう。

「ライチさん、魔物について教えて下さい!」

「……」

 ライチさん、すごい面倒くさそうな顔をしている……
 微塵も隠す気がないところが、逆に好感が持てる。

「……あそこの本を読んでくれにゃ~」

 俺は指された方を向く。
 そこには本棚があり、図鑑や地図のようなものが並んでいる。

「あそこの本は冒険者なら無料で読み放題にゃ~。ただし持ち出しは厳禁にゃ~」

「ありがとうございます」

 あんな隅の方に本棚があったのか。
 早く教えて欲しかったよ……

 俺は魔物についての入門書を手に取る。
 なになに……この世には"動物"、"魔獣"、"魔物"が存在する。

 "動物"はヒトを含む、魔素に侵されていない生物。

 "魔獣"は動物が魔素に侵され変異した生物。
 また、植物や菌類など動物以外も魔素によって変異することがある。

 "魔物"は魔石を核として、魔素によって形作られているもの。まだ、研究が進んでおらず生物かどうかも定かではない。
 魔物は討伐されると、魔石を残して肉体は霧散してしまう。アイテムや素材をドロップすることもある……か。

 そうか。体は残らないから、魔物肉なんかは売ってなかったんだな。
 魔石は燃料や触媒などに使われるから、買い取りもしてもらえる、と。

 ふむふむ。初心者におすすめの魔物はゴブリンね。オーソドックスだ。
 ゴブリンは人型で急所がヒトに似ているようだ。身体能力や知能も低く、1対1での討伐ランクは最低クラス。
 ただし、複数体のグループで行動することが多いので、囲まれないように注意。
 アイテムや素材のドロップは無く、魔石も小さく質が低いため稼ぎは少ない。

 うーん。稼ぎが少ないならあんまり討伐する旨みがないな。
 この世界はレベルとかあるのだろうか?
 レベルアップできるなら討伐する意味も出てくるが……
 スキルがあるくらいだから、何かしらの成長システムはあるよな。

 ちなみにスライムはどんな感じかな?
 スライムは半透明のゼリー状物質で魔石が覆われている魔物。
 危険度は低く、長剣や槍などで真ん中の魔石を破壊すれば討伐も容易。
 ただし、魔石を破壊してしまうと収穫が何もなくなってしまうので倒す価値はない。
 魔石を回収したいなら、魔法で討伐すること。

 魔法! 後天的に魔法って使えるようになるのだろうか?
 でも、この村で魔法使ってる人を見たことないから、かなり貴重なんだろうな。
 まぁこの村が田舎過ぎるだけかもしれないが……

 うーん、俺のナイフだと魔石まで届かないから、スライムの討伐は無理そうだな。
 倒せたら成長システムがわかるかも、とか思ったが。

 異世界モノだとテイムとかできたりするんだけどなぁ。
 テイムもスキルであるのだろうか?
 魔物のテイムとか憧れちゃうよね。
 狼系の魔物の背中に乗って疾走したり、鳥系の魔物に乗って空を飛んだり。
 そのうち肉でも買って試してみよう。
 魔物とふれあえるほど、俺が強くなれるかは疑問だが……

 さて、魔物の基本も知れたし、今日も薬草採取に勤しみますか!


 ―◇◇◇―
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...