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第一章
第二話
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二週間以上も眠っていたらしい。
意識が覚めた途端に現れた人々に事情を説明された。
僕はZとなったらしい。けれども完全なZではないらしい。言っていることは真水を飲むように理解できた。たとえば、Zの触手が体にあるというのに、僕の意識は乗っ取られることなくはっきりしていること。いつZになってしまうかわからないということ。
そもそも、Zというものが脳細胞を乗っ取ってそれを触手やら体を守る装甲やらとして人を動かすものらしく、人格が残っていることなどはまずありえないはずらしい。僕は宝くじよりも貴重なものを引き当てたのかもしれない。ただ、Zに感染していたという事実は最悪のものだけども。
国連の人々が言っていたことを要約すれば、僕は人類にとって危険な存在であると同時に有益にもなりうるからじっとしていろ、となる。どちらにしろ、僕はそんなことに興味はない。
ミチルは無事に生き延びたらしい。それだけで安心した。ちゃんと、今度は守れた。僕の無意味な生のために死ななくてよかった。
守ったところで一生、関わることはないような気がするけれど。
僕は隔離された部屋の中から、あのひと時を共にした彼女に思いを馳せる。大した意味なんてない。ただ、一人の命を守れたというのが嬉しかったという気まぐれだ。
どうせ、僕はミチルに会うことはできないだろう。物語の中で知った世界では、このあと他の人たちと再会して敵と戦ったりするのだろうけど、僕には無理だ。人を積極的に傷つけるということが苦手だ。多分、半殺しにでもされない限り、本気で人を殺そうとは思えないのだろう。
「月影ユウさん。研究主任との面会です。十分後に伺います」
思考の渦に沈み込んだ僕は、呼び出しの言葉で現実に引き戻される。
おそらく、研究材料にでもなって死ねとでも言われるのだろう。どうしようが知ったことじゃない。どうでもいい。
所詮、僕はでくの坊なのだから。
研究主任という人は日本人だった。保全地区では外国人の多さから言葉が上手く伝わらないことが多々ある。だから研究主任という人は勝手に外国人だと思い込んでいた。
「やあ!君が月影君だね。出会えてうれしいよ」
気さくに挨拶してくれるのは好青年 まだ名前は知らない。名乗ってもらっていない。彼は手を伸ばしてくる。おそらくは握手を望んでいるのだろう。拒否する理由もないのでその手を取る。
「平田サトル。僕のことは研究主任とだけ思ってくれていればいいよ。知っても意味ないだろうからさ」
名乗ってもらった。僕の方は知られているだろうが、名乗るのが礼儀だろう。
「月影ユウです。初めまして」
愛想も何もない挨拶。けれども平田サトルと名乗った彼は愛想のよい笑顔で頷いた。その態度には純粋に好感が持てる。
「君も目覚めたばかりで疲れてるでしょ。今からボクがちょっとした小話をするからちょっと聞いてよ」
随分とフレンドリーな研究主任だ。
それに僕のことを警戒していなさそうだ。よく見るものでは頭に拳銃を突き付けられながら移動するのがセオリーな気がするのだけど…………。まあ、現実は物語とは違うと言われればそこまでだ。
「ここではさ、Zを殲滅するための武器を作っていてね。研究って言っても調べるのはかつて人だった人ならざる者向けの兵器だ」
ここは白い空間。誰かが作業をしている。僕の存在は彼らの日々を崩すには足りない。
「ここで君に聞きたい」
彼は白く無機質な廊下を進んでいく。いや、無機質ではない。明るいからだろうか、気持ちが少し前向きになる。それとも無機質な雰囲気が好きなのだろうか。そうだとしたらそれは錯覚だ。あくまで親近感を覚えているだけだろう。
こんなに卑屈な性格だっただろうか、僕は。でも考えてみれば僕は卑屈な性格をしている。今まではカノの存在でごまかされていただけだ。たぶん。
「僕らはどうなるべきだと思う?」
「あるがままの現実を受け入れるか、目を逸らすか。二択だと思います。」
そう、所詮研究材料でしかない自分には興味の湧くはずのない質問だった。まさに愚問だ。
「興味が薄いんだね」
明るい声で言われても褒められている感じがしない。むしろ哀れに思われている気がする。
「と言っても興味を持ってもらわないと困るなぁ」
困っていなさそうな態度で言われても全く響かない。そもそも興味を持っているかではなく、そんなことを考える暇もなく殺されるのだから物事に感情を持ちたくない。何も感じたくない。
「どうでもいいです」
「殺されてもいいっていうのかい?」
呆れた様子で言葉を放たれた。この言葉を僕は銃弾のように感じた。それだけ衝撃的だったのだろう。きっとそうだ。認めよう、僕は殺されるとばかり思っていた。
けれども冷静に考えてみれば、Zそのものである僕に手出しをすることで被害が出ることのほうが恐ろしいはずだ。対Z用の兵器があったとしても民間人がうじゃうじゃいる場所で大胆に戦えるはずがない。逃げることだけに焦点を当てれば、有利とまではいかないが逃げ切ることはできるのではないだろうか。
逃げたところでどう生きていけるのかはわからないけど。
そう考えればここで研究材料になる方が自分にとっても最良の選択な気がする。
「そうとしか思っていませんでした」
「流石に殺せないってば!内部でもきな臭いことが起きているからねぇ」
話し方が訛ってきた。と入っても方言とはちょっと違う。的確な表現になるかはわからないが、他言語のイントネーションを引きづっている感じだ。
まあ、どうでもいい。
「そうですか」
「そうですよ」
で?どうなるのだろう。僕はそこに向かっているのだろう。いまだに白く無機質な廊下が続いている。目的地はどこなのだろうか。
「そろそろ着くよ。目が覚めたばかりで申し訳ないけど、かなり込み入った事情でね。僕は君を殺そうとは思わないけど…………」
そこに割り込むようにドアが開いた。大会議室というものだろう。多くの白衣姿の人々が席についている。
僕はZなのだけど……接触して大丈夫なのだろうか?
「彼が月影ユウです。体内から未知のZが検出されました」
マジかよ。
「月影ユウ。座れ」
平田サトルに命令される。突然、声が低く威圧的になった。だからと言って動揺することもない。素直に従う。ここで抵抗する意味もない。もともと人ではなくなっているのだから、ここで殺されようとも文句は言えない。
周囲がざわつく。人としての人格を保ったままのZなど世界で初めてだ。
「月影ユウの処分について報告します」
平田主任が話始めた途端、沈黙が戻る。
「現在予定されているロシア保全区画日本自治区の奪還作戦に参加させます」
初耳だ。
「彼はZとしての能力を持っていることは周知ですが、そのため通常の社会に戻すにはあまりにも危険すぎます。また、Zである以上彼らの触手に対応する力を持つと考えられます。現在判明している情報では彼らの触手を受けても体には傷一つ受けていなかったことが分かっています。このことから、彼が触手を使いこなせば非常に微々たるものですが対Z要員として重要な動きをするでしょう」
色々と突っ込みたいところが多すぎてどこから口にするべきかわからない。矛盾しかない。というかこんな触手が使えたとてたった一人の高校生に何ができると思っているのだろうか。何もできるはずがない。Zの大群に囲まれれば一瞬で死ぬ。そんなことは誰でも想像できる。そもそも僕は全身を装甲で覆っているわけじゃない。
本当に微々たる戦力だ。というか、まだ死にたくない。
「月影ユウ。質問があれば今なら発言を許可する」
質問しかない。それに今までは発言が許可されていなかったんかい。そこを早く説明してほしかった。僕らの未来の話をするのであれば数分後の未来に何があるのかを話してほしかった!
いや聞かなかった僕にも非はあるけれども。……いや、あるか?
「僕が一人加わったところで国連軍には何もプラスに働かないと思います。むしろマイナスです」
「当たり前だ。これはあくまで君を抹殺するための建前だよ」
嘘やろ。
「しかし、貴重な研究材料である月影ユウを見逃すことはできない。より、ここにいる研究員全員で月影ユウを完全武装させる。もちろん国連軍が装備を支給することとなっているが、その支給源はここだ。絶対に月影ユウを失わせない」
なんだか安心できなくもないけど、ここにいる全員が反逆者として捕まりそうなことを大声で言って大丈夫なのだろうか。どうせ盗聴器とかは取り除いているだろうけど。多分。
「だとしても僕はどうすれば…………?」
「君はとりあえず武器の扱いを学んでもらう。最悪の場合はZの触手でも使えば何とでもなるだろうけどもそれも制御が可能なのか分からないからそっちの研究も同時進行で行う。何よりも現時刻から月影ユウの武装を最優先に行うこと」
この言葉に周囲の研究者っぽい人たちが頷く。もしかしたら初めから決まっていたことなのかもしれない。あまりにも反対意見が出てこない。
それにしても面倒なことになった。
もうぼくは、普通の社会で普通の学生が出来なくなったようだ。対Zとしての武器、国連はそう僕を使うことで存在を抹消しようとしている。僕がいうことでもないとは思うけれど、別にZが嫌ならさっさと殺してしまえばいいと思う。話を聞いた感じ国連軍にも対Z用の武器があるみたいなことを言っているのだから僕一人を殺すことくらい朝食前のはずなのに。
「はい、じゃあ解散で」
いや最後は適当かよ!ちゃんと終われよ!
という心の叫びを心にとどめ、僕にアイコンタクトを取ってくる平田サトルについていくようにして会議室から出た。
なんだか、今の雰囲気が平穏な非日常すぎて自分が戦うことなんて想像ができなかった。
その翌日から訓練は始まった。
ひたすらに筋肉を傷めつけて体力をつける日々。まったく面白味も何もない。もともと体育会系ではないので死んでしまうのではないかと思うくらい辛いものだった。
それと、ミチルに会いたいと話をしたが、まだZとしての安全性が立証できていないことから民間人との接触は許可できないということだった。まあ、仕方のないことだ。その考えには反対しない。むしろ納得した。
そして簡単に、僕が戦場に出ていく日がやってきた。
今日が、その日だ。西暦2102年、初夏。
僕はこの日に「急転直下」というものを、身をもって体験するだろうと、吹くかどうかもわからない風のような予感を感じた。
意識が覚めた途端に現れた人々に事情を説明された。
僕はZとなったらしい。けれども完全なZではないらしい。言っていることは真水を飲むように理解できた。たとえば、Zの触手が体にあるというのに、僕の意識は乗っ取られることなくはっきりしていること。いつZになってしまうかわからないということ。
そもそも、Zというものが脳細胞を乗っ取ってそれを触手やら体を守る装甲やらとして人を動かすものらしく、人格が残っていることなどはまずありえないはずらしい。僕は宝くじよりも貴重なものを引き当てたのかもしれない。ただ、Zに感染していたという事実は最悪のものだけども。
国連の人々が言っていたことを要約すれば、僕は人類にとって危険な存在であると同時に有益にもなりうるからじっとしていろ、となる。どちらにしろ、僕はそんなことに興味はない。
ミチルは無事に生き延びたらしい。それだけで安心した。ちゃんと、今度は守れた。僕の無意味な生のために死ななくてよかった。
守ったところで一生、関わることはないような気がするけれど。
僕は隔離された部屋の中から、あのひと時を共にした彼女に思いを馳せる。大した意味なんてない。ただ、一人の命を守れたというのが嬉しかったという気まぐれだ。
どうせ、僕はミチルに会うことはできないだろう。物語の中で知った世界では、このあと他の人たちと再会して敵と戦ったりするのだろうけど、僕には無理だ。人を積極的に傷つけるということが苦手だ。多分、半殺しにでもされない限り、本気で人を殺そうとは思えないのだろう。
「月影ユウさん。研究主任との面会です。十分後に伺います」
思考の渦に沈み込んだ僕は、呼び出しの言葉で現実に引き戻される。
おそらく、研究材料にでもなって死ねとでも言われるのだろう。どうしようが知ったことじゃない。どうでもいい。
所詮、僕はでくの坊なのだから。
研究主任という人は日本人だった。保全地区では外国人の多さから言葉が上手く伝わらないことが多々ある。だから研究主任という人は勝手に外国人だと思い込んでいた。
「やあ!君が月影君だね。出会えてうれしいよ」
気さくに挨拶してくれるのは好青年 まだ名前は知らない。名乗ってもらっていない。彼は手を伸ばしてくる。おそらくは握手を望んでいるのだろう。拒否する理由もないのでその手を取る。
「平田サトル。僕のことは研究主任とだけ思ってくれていればいいよ。知っても意味ないだろうからさ」
名乗ってもらった。僕の方は知られているだろうが、名乗るのが礼儀だろう。
「月影ユウです。初めまして」
愛想も何もない挨拶。けれども平田サトルと名乗った彼は愛想のよい笑顔で頷いた。その態度には純粋に好感が持てる。
「君も目覚めたばかりで疲れてるでしょ。今からボクがちょっとした小話をするからちょっと聞いてよ」
随分とフレンドリーな研究主任だ。
それに僕のことを警戒していなさそうだ。よく見るものでは頭に拳銃を突き付けられながら移動するのがセオリーな気がするのだけど…………。まあ、現実は物語とは違うと言われればそこまでだ。
「ここではさ、Zを殲滅するための武器を作っていてね。研究って言っても調べるのはかつて人だった人ならざる者向けの兵器だ」
ここは白い空間。誰かが作業をしている。僕の存在は彼らの日々を崩すには足りない。
「ここで君に聞きたい」
彼は白く無機質な廊下を進んでいく。いや、無機質ではない。明るいからだろうか、気持ちが少し前向きになる。それとも無機質な雰囲気が好きなのだろうか。そうだとしたらそれは錯覚だ。あくまで親近感を覚えているだけだろう。
こんなに卑屈な性格だっただろうか、僕は。でも考えてみれば僕は卑屈な性格をしている。今まではカノの存在でごまかされていただけだ。たぶん。
「僕らはどうなるべきだと思う?」
「あるがままの現実を受け入れるか、目を逸らすか。二択だと思います。」
そう、所詮研究材料でしかない自分には興味の湧くはずのない質問だった。まさに愚問だ。
「興味が薄いんだね」
明るい声で言われても褒められている感じがしない。むしろ哀れに思われている気がする。
「と言っても興味を持ってもらわないと困るなぁ」
困っていなさそうな態度で言われても全く響かない。そもそも興味を持っているかではなく、そんなことを考える暇もなく殺されるのだから物事に感情を持ちたくない。何も感じたくない。
「どうでもいいです」
「殺されてもいいっていうのかい?」
呆れた様子で言葉を放たれた。この言葉を僕は銃弾のように感じた。それだけ衝撃的だったのだろう。きっとそうだ。認めよう、僕は殺されるとばかり思っていた。
けれども冷静に考えてみれば、Zそのものである僕に手出しをすることで被害が出ることのほうが恐ろしいはずだ。対Z用の兵器があったとしても民間人がうじゃうじゃいる場所で大胆に戦えるはずがない。逃げることだけに焦点を当てれば、有利とまではいかないが逃げ切ることはできるのではないだろうか。
逃げたところでどう生きていけるのかはわからないけど。
そう考えればここで研究材料になる方が自分にとっても最良の選択な気がする。
「そうとしか思っていませんでした」
「流石に殺せないってば!内部でもきな臭いことが起きているからねぇ」
話し方が訛ってきた。と入っても方言とはちょっと違う。的確な表現になるかはわからないが、他言語のイントネーションを引きづっている感じだ。
まあ、どうでもいい。
「そうですか」
「そうですよ」
で?どうなるのだろう。僕はそこに向かっているのだろう。いまだに白く無機質な廊下が続いている。目的地はどこなのだろうか。
「そろそろ着くよ。目が覚めたばかりで申し訳ないけど、かなり込み入った事情でね。僕は君を殺そうとは思わないけど…………」
そこに割り込むようにドアが開いた。大会議室というものだろう。多くの白衣姿の人々が席についている。
僕はZなのだけど……接触して大丈夫なのだろうか?
「彼が月影ユウです。体内から未知のZが検出されました」
マジかよ。
「月影ユウ。座れ」
平田サトルに命令される。突然、声が低く威圧的になった。だからと言って動揺することもない。素直に従う。ここで抵抗する意味もない。もともと人ではなくなっているのだから、ここで殺されようとも文句は言えない。
周囲がざわつく。人としての人格を保ったままのZなど世界で初めてだ。
「月影ユウの処分について報告します」
平田主任が話始めた途端、沈黙が戻る。
「現在予定されているロシア保全区画日本自治区の奪還作戦に参加させます」
初耳だ。
「彼はZとしての能力を持っていることは周知ですが、そのため通常の社会に戻すにはあまりにも危険すぎます。また、Zである以上彼らの触手に対応する力を持つと考えられます。現在判明している情報では彼らの触手を受けても体には傷一つ受けていなかったことが分かっています。このことから、彼が触手を使いこなせば非常に微々たるものですが対Z要員として重要な動きをするでしょう」
色々と突っ込みたいところが多すぎてどこから口にするべきかわからない。矛盾しかない。というかこんな触手が使えたとてたった一人の高校生に何ができると思っているのだろうか。何もできるはずがない。Zの大群に囲まれれば一瞬で死ぬ。そんなことは誰でも想像できる。そもそも僕は全身を装甲で覆っているわけじゃない。
本当に微々たる戦力だ。というか、まだ死にたくない。
「月影ユウ。質問があれば今なら発言を許可する」
質問しかない。それに今までは発言が許可されていなかったんかい。そこを早く説明してほしかった。僕らの未来の話をするのであれば数分後の未来に何があるのかを話してほしかった!
いや聞かなかった僕にも非はあるけれども。……いや、あるか?
「僕が一人加わったところで国連軍には何もプラスに働かないと思います。むしろマイナスです」
「当たり前だ。これはあくまで君を抹殺するための建前だよ」
嘘やろ。
「しかし、貴重な研究材料である月影ユウを見逃すことはできない。より、ここにいる研究員全員で月影ユウを完全武装させる。もちろん国連軍が装備を支給することとなっているが、その支給源はここだ。絶対に月影ユウを失わせない」
なんだか安心できなくもないけど、ここにいる全員が反逆者として捕まりそうなことを大声で言って大丈夫なのだろうか。どうせ盗聴器とかは取り除いているだろうけど。多分。
「だとしても僕はどうすれば…………?」
「君はとりあえず武器の扱いを学んでもらう。最悪の場合はZの触手でも使えば何とでもなるだろうけどもそれも制御が可能なのか分からないからそっちの研究も同時進行で行う。何よりも現時刻から月影ユウの武装を最優先に行うこと」
この言葉に周囲の研究者っぽい人たちが頷く。もしかしたら初めから決まっていたことなのかもしれない。あまりにも反対意見が出てこない。
それにしても面倒なことになった。
もうぼくは、普通の社会で普通の学生が出来なくなったようだ。対Zとしての武器、国連はそう僕を使うことで存在を抹消しようとしている。僕がいうことでもないとは思うけれど、別にZが嫌ならさっさと殺してしまえばいいと思う。話を聞いた感じ国連軍にも対Z用の武器があるみたいなことを言っているのだから僕一人を殺すことくらい朝食前のはずなのに。
「はい、じゃあ解散で」
いや最後は適当かよ!ちゃんと終われよ!
という心の叫びを心にとどめ、僕にアイコンタクトを取ってくる平田サトルについていくようにして会議室から出た。
なんだか、今の雰囲気が平穏な非日常すぎて自分が戦うことなんて想像ができなかった。
その翌日から訓練は始まった。
ひたすらに筋肉を傷めつけて体力をつける日々。まったく面白味も何もない。もともと体育会系ではないので死んでしまうのではないかと思うくらい辛いものだった。
それと、ミチルに会いたいと話をしたが、まだZとしての安全性が立証できていないことから民間人との接触は許可できないということだった。まあ、仕方のないことだ。その考えには反対しない。むしろ納得した。
そして簡単に、僕が戦場に出ていく日がやってきた。
今日が、その日だ。西暦2102年、初夏。
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