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sideルーカス

14.

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「へぇ、ルーカスの兄さんって東方の町に居たの?」

ノアはびっくり顔で俺を見てくる。
あのしつこい男を追い払った後。微妙な時間だったがノアの側に居たかった俺は、取り敢えず食事に誘ってみた。
本当は夜の誘いもしたかったけど、傷が癒えないままヤクーを走らせたからジクジク肩が痛む。
これじゃあ満足に抱けはしない、と泣く泣く諦めた。
しかし暫く離れていたし、番となれば何はなくとも側には居たい。

―――という事で、側に居る口実として食事に誘ったのだけど。

「ルーカスも怪我してるし、俺の部屋来る?」

と心配そうに提案されてしまった。
うん、まぁ俺の心情は察してくれ………。
無意識に、フリフリとご機嫌に揺れる尻尾を見えないようにするのが大変だった、とだけ言っとく。

ノアはあんまり自分の事を話さないけど、多分孤児院育ちなんだと思う。小さい子の面倒を見慣れている節があって、現在俺が世話の対象らしい。

子供じゃねぇんだよ、襲うぞっ!

…と言いたいが、怪我を気にしてアレコレ世話をされるのも、存外悪くない。
ニヤける顔を隠しつつ、ノアの世話を受け入れた。

「ああ、番がいたらしい。で、東の町に拠点を移したんだってさ」

「………そっかぁ……」

一瞬ノアの顔が曇る。

「どうした?」

額にかかる髪を指でそっと払い問うが、ノアは曖昧に笑い首を振った。

「…いや、何でもない。それよりメシ足りてる?」

「ああ、大丈夫」

その様子を訝しく思いつつ直ぐに何時ものノアに戻ったから、その時に後々大きな影響を及ぼす齟齬が生じた事に気付かなかった。

食事の後もソファへ移動し並んで座り、のんびり取り留めのない話をしていた。ふとノアが俺の左肩に触れてきた。

「怪我はここ?」

ヤクーでの移動で揺れないようにキツく包帯で固定していたから、シャツを着た状態でも分かったらしい。

「そうだ。Sランクが数人いても、やっぱワイバーンは手強いな」

苦く笑うと、ノアは眉を顰めた。

「笑い事じゃない。あんまり無茶すんなよ」

「…そうだな。だがこればかりは『仕方ない』って言うよりないな」

「………。その内、番にも逢えないまま死ぬぞ…」

ポツリと呟く。今までノアが自分から俺の『番』へ言及することがなかったから、その言葉に驚いた。

「ノア?」

「………ぁ…。ごめん、余計な事を言った」

ハッとして俯く。

「どうした?何か様子が変だ」

顎を掬い顔を覗き込む。気不味そうにノアは視線を外した。

「何でもない。ごめん、ホント余計な事を言った。忘れてくれ」

僅かに眉を顰めてノアを見ていたけど、それ以上口を開く気はないようだ。きっと問い詰めても何も答えてはくれないだろう。
もどかしい気持ちが溢れるが、今は無理を押し通すのは良くない…と感じる。

視線を逸らしたままのノアにそっと顔を寄せて、言葉にできない気持ちを籠めて口付けた。
ペロリと唇を舐めて、ノアの気を引く。
薄っすらと欲を孕み潤む視線が俺を煽る。
ノアは少し考え、俺の唇に自分のそれを重ねた。

探るような、気遣うような、戸惑うような……。それでも、俺を求めていると分かるキス。
堪らなく興奮し、細いノアの腰を掻き抱いた。
貪るように口付け、ノアの口腔を蹂躪する。

「………っは………ぁあ」

うっとりとため息をもらし、ノアは1度瞬いた。
淫猥な表情に滾る。

「ノア、煽った責任取れよ」

耳元で囁くと、ノアは小さく頷いた。


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