29 / 46
sideルーカス
14.
しおりを挟む
「へぇ、ルーカスの兄さんって東方の町に居たの?」
ノアはびっくり顔で俺を見てくる。
あのしつこい男を追い払った後。微妙な時間だったがノアの側に居たかった俺は、取り敢えず食事に誘ってみた。
本当は夜の誘いもしたかったけど、傷が癒えないままヤクーを走らせたからジクジク肩が痛む。
これじゃあ満足に抱けはしない、と泣く泣く諦めた。
しかし暫く離れていたし、番となれば何はなくとも側には居たい。
―――という事で、側に居る口実として食事に誘ったのだけど。
「ルーカスも怪我してるし、俺の部屋来る?」
と心配そうに提案されてしまった。
うん、まぁ俺の心情は察してくれ………。
無意識に、フリフリとご機嫌に揺れる尻尾を見えないようにするのが大変だった、とだけ言っとく。
ノアはあんまり自分の事を話さないけど、多分孤児院育ちなんだと思う。小さい子の面倒を見慣れている節があって、現在俺が世話の対象らしい。
子供じゃねぇんだよ、襲うぞっ!
…と言いたいが、怪我を気にしてアレコレ世話をされるのも、存外悪くない。
ニヤける顔を隠しつつ、ノアの世話を受け入れた。
「ああ、番がいたらしい。で、東の町に拠点を移したんだってさ」
「………そっかぁ……」
一瞬ノアの顔が曇る。
「どうした?」
額にかかる髪を指でそっと払い問うが、ノアは曖昧に笑い首を振った。
「…いや、何でもない。それよりメシ足りてる?」
「ああ、大丈夫」
その様子を訝しく思いつつ直ぐに何時ものノアに戻ったから、その時に後々大きな影響を及ぼす齟齬が生じた事に気付かなかった。
食事の後もソファへ移動し並んで座り、のんびり取り留めのない話をしていた。ふとノアが俺の左肩に触れてきた。
「怪我はここ?」
ヤクーでの移動で揺れないようにキツく包帯で固定していたから、シャツを着た状態でも分かったらしい。
「そうだ。Sランクが数人いても、やっぱワイバーンは手強いな」
苦く笑うと、ノアは眉を顰めた。
「笑い事じゃない。あんまり無茶すんなよ」
「…そうだな。だがこればかりは『仕方ない』って言うよりないな」
「………。その内、番にも逢えないまま死ぬぞ…」
ポツリと呟く。今までノアが自分から俺の『番』へ言及することがなかったから、その言葉に驚いた。
「ノア?」
「………ぁ…。ごめん、余計な事を言った」
ハッとして俯く。
「どうした?何か様子が変だ」
顎を掬い顔を覗き込む。気不味そうにノアは視線を外した。
「何でもない。ごめん、ホント余計な事を言った。忘れてくれ」
僅かに眉を顰めてノアを見ていたけど、それ以上口を開く気はないようだ。きっと問い詰めても何も答えてはくれないだろう。
もどかしい気持ちが溢れるが、今は無理を押し通すのは良くない…と感じる。
視線を逸らしたままのノアにそっと顔を寄せて、言葉にできない気持ちを籠めて口付けた。
ペロリと唇を舐めて、ノアの気を引く。
薄っすらと欲を孕み潤む視線が俺を煽る。
ノアは少し考え、俺の唇に自分のそれを重ねた。
探るような、気遣うような、戸惑うような……。それでも、俺を求めていると分かるキス。
堪らなく興奮し、細いノアの腰を掻き抱いた。
貪るように口付け、ノアの口腔を蹂躪する。
「………っは………ぁあ」
うっとりとため息をもらし、ノアは1度瞬いた。
淫猥な表情に滾る。
「ノア、煽った責任取れよ」
耳元で囁くと、ノアは小さく頷いた。
ノアはびっくり顔で俺を見てくる。
あのしつこい男を追い払った後。微妙な時間だったがノアの側に居たかった俺は、取り敢えず食事に誘ってみた。
本当は夜の誘いもしたかったけど、傷が癒えないままヤクーを走らせたからジクジク肩が痛む。
これじゃあ満足に抱けはしない、と泣く泣く諦めた。
しかし暫く離れていたし、番となれば何はなくとも側には居たい。
―――という事で、側に居る口実として食事に誘ったのだけど。
「ルーカスも怪我してるし、俺の部屋来る?」
と心配そうに提案されてしまった。
うん、まぁ俺の心情は察してくれ………。
無意識に、フリフリとご機嫌に揺れる尻尾を見えないようにするのが大変だった、とだけ言っとく。
ノアはあんまり自分の事を話さないけど、多分孤児院育ちなんだと思う。小さい子の面倒を見慣れている節があって、現在俺が世話の対象らしい。
子供じゃねぇんだよ、襲うぞっ!
…と言いたいが、怪我を気にしてアレコレ世話をされるのも、存外悪くない。
ニヤける顔を隠しつつ、ノアの世話を受け入れた。
「ああ、番がいたらしい。で、東の町に拠点を移したんだってさ」
「………そっかぁ……」
一瞬ノアの顔が曇る。
「どうした?」
額にかかる髪を指でそっと払い問うが、ノアは曖昧に笑い首を振った。
「…いや、何でもない。それよりメシ足りてる?」
「ああ、大丈夫」
その様子を訝しく思いつつ直ぐに何時ものノアに戻ったから、その時に後々大きな影響を及ぼす齟齬が生じた事に気付かなかった。
食事の後もソファへ移動し並んで座り、のんびり取り留めのない話をしていた。ふとノアが俺の左肩に触れてきた。
「怪我はここ?」
ヤクーでの移動で揺れないようにキツく包帯で固定していたから、シャツを着た状態でも分かったらしい。
「そうだ。Sランクが数人いても、やっぱワイバーンは手強いな」
苦く笑うと、ノアは眉を顰めた。
「笑い事じゃない。あんまり無茶すんなよ」
「…そうだな。だがこればかりは『仕方ない』って言うよりないな」
「………。その内、番にも逢えないまま死ぬぞ…」
ポツリと呟く。今までノアが自分から俺の『番』へ言及することがなかったから、その言葉に驚いた。
「ノア?」
「………ぁ…。ごめん、余計な事を言った」
ハッとして俯く。
「どうした?何か様子が変だ」
顎を掬い顔を覗き込む。気不味そうにノアは視線を外した。
「何でもない。ごめん、ホント余計な事を言った。忘れてくれ」
僅かに眉を顰めてノアを見ていたけど、それ以上口を開く気はないようだ。きっと問い詰めても何も答えてはくれないだろう。
もどかしい気持ちが溢れるが、今は無理を押し通すのは良くない…と感じる。
視線を逸らしたままのノアにそっと顔を寄せて、言葉にできない気持ちを籠めて口付けた。
ペロリと唇を舐めて、ノアの気を引く。
薄っすらと欲を孕み潤む視線が俺を煽る。
ノアは少し考え、俺の唇に自分のそれを重ねた。
探るような、気遣うような、戸惑うような……。それでも、俺を求めていると分かるキス。
堪らなく興奮し、細いノアの腰を掻き抱いた。
貪るように口付け、ノアの口腔を蹂躪する。
「………っは………ぁあ」
うっとりとため息をもらし、ノアは1度瞬いた。
淫猥な表情に滾る。
「ノア、煽った責任取れよ」
耳元で囁くと、ノアは小さく頷いた。
82
お気に入りに追加
1,663
あなたにおすすめの小説
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる