上 下
20 / 46
sideルーカス

5.

しおりを挟む
キングレッドヴァイパーは、やたらと大きい上に行動も素早い。そして毒をもっているから、ちょっとやり難い。

でも街に割と近い場所に出没したとあって、ギルドも出し惜しみせず高ランクの冒険者を募ってくれたお陰で、時間はかかったものの問題なく片付ける事ができた。

ただクエストが完了したのは既に陽も落ち暗くなった時間帯だったから、皆で話し合い今日はここで野営して明日街に帰ることにした。

それはいい。何の問題もない。
問題は俺自身にある。

クエストに手を付ける前から、元気いっぱいの俺の分身をどうしたものか……。

………。

ふと、ヤツに声をかけてみようか、と思い付つく。
討伐後に昂るのはよくある事だし………。

途端に分身がズクン、と甘く疼く。

「………っ!」

一瞬イきそうになる。
ぐっと堪え、熱い息を吐いた。

チラリと天幕の中を見る。

万が一ノアが誘いにのった場合に備え、身体が床で痛まないように……。
バサッと毛布を床に敷き、天幕を後にした。

ノアはどこだ?

辺りを見渡す。甘く誘うような匂いが漂い、直感的にその方向を目指した。
たき火の近くに、ノアは居た。
漂ってくる匂いから、ヤツも昂っているのが分かる。

ゆっくりと近付く。

「なぁ、あんたも眠れないクチ?」

よっぽど気を抜いていたのか、俺の声にビクリと肩を揺らす。

「ま、ね。」

肩を竦める仕草をするヤツに、「隣いい?」と確認しながら周囲を探る。
2~3人の冒険者がいる。

目的は………きっと俺と同じだろう。
奪われる前に…と、ノアの返事も待たず隣を陣取る。

「熱発散すんの、俺とどう?」

間怠っこしい事は嫌いだ。ダイレクトに聞く。

「何で俺?」

「見た目好みだし」

噓じゃない。ただ、それ以上にお前に興奮して、滾るってだけだ。

「ふーん?」

半信半疑な返事をしつつ、俺を眺めてくる。
ノアの視線を感じると、俺の昂りは更に痛い程に張り詰める。油断すると早々に弾けてしまいそうだ。

ヤツの反応から判断すると、多分手応えは有りそうだ。

あぁ、だけど………。

「たださ。俺、獣人だからさ。番が一番な訳。まだ見付けてはないけど、番が現れるまでの期間限定セフレって事でいい?」

最近、黒い瞳のヤツにしか反応しなくなりつつある自覚は……ある。
もしコイツと身体の相性が良ければ、『黒い瞳』に囚われる事になった元凶だし、是非責任取ってもらおうか。

番以外の特定相手を作るのは気が進まないが、コイツとならイイかもしれない…と、ふと思った。
するとノアは目を丸くして、俺を見つめた。

「え?今、熱発散するだけだろ?一回ヤッたからって、縋り付く気ないけど?」

その言葉に、カチンとくる。

何、俺じゃ不服なの?

その不満も随分見当違いとは思うけど、その時の俺には『お前に夢中になる訳ねーだろ』的な感じに受け取れたんだ。

ふーん………、お前がそう思うなら、ヤってやろうじゃん。

ニヤリと笑う。

「じゃ次があるかどうかは身体の相性次第で」

怪訝な顔をしているノアに、そっとキスをする。
唇の感触を楽しむような、戯れのようなキス。

「ん……」

鼻に抜けるような甘い声に、堪らなくなる。

ヤバい………。
抱き潰したい………っ!!

徐々に角度を変えて、深く口腔を舐る。
薄っすら目を開きノアを見ると、トロリと蕩けた顔をしていた。そして、そっと控えめに自分の舌を絡めてくる。

俺を求めるその行為に、ふっと笑みがもれる。

覚悟しろよ、ノア。
ここまで俺を昂らせた責任、取ってもらうぞ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

薬屋の受難【完】

おはぎ
BL
薬屋を営むノルン。いつもいつも、責めるように言い募ってくる魔術師団長のルーベルトに泣かされてばかり。そんな中、騎士団長のグランに身体を受け止められたところを見られて…。 魔術師団長ルーベルト×薬屋ノルン

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

愛心

佳乃
BL
〈恋心〉その後のお話。 仲の良い2人のその後、周りの人との関わり。 〈恋心〉で書ききれなかったあんな事やこんな事を短編として書いていきます。

婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。 そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。 それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。 しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。 ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。 前半は受け君がだいぶ不憫です。 他との絡みが少しだけあります。 あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。 ただの素人の小説です。 ご容赦ください。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

バッドエンドを迎えた主人公ですが、僻地暮らしも悪くありません

仁茂田もに
BL
BLゲームの主人公に転生したアルトは、卒業祝賀パーティーで攻略対象に断罪され、ゲームの途中でバッドエンドを迎えることになる。 流刑に処され、魔物溢れる辺境の地グローセベルクで罪人として暮らすことになったアルト。 そこでイケメンすぎるモブ・フェリクスと出会うが、何故か初対面からものすごく嫌われていた。 罪人を管理監督する管理官であるフェリクスと管理される立場であるアルト。 僻地で何とか穏やかに暮らしたいアルトだったが、出会う魔物はものすごく凶暴だし管理官のフェリクスはとても冷たい。 しかし、そこは腐っても主人公。 チート級の魔法を使って、何とか必死に日々を過ごしていくのだった。 流刑の地で出会ったイケメンモブ(?)×BLゲームの主人公に転生したけど早々にバッドエンドを迎えた主人公

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

処理中です...