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番外編
Happy Valentine's day! ♥ 後編
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あっさり拉致された後、あっという間に俺達の部屋のソファに腰を落ち着かせていた。
って言っても、ソファに座ってるのはマイナさん一人。俺は彼の膝上に座らせられている。
「しかし、よくあのバンガーが外出を許しましたね?」
主の命令は絶対厳守!なバンガーは、マイナさんからの信頼も厚いからね。疑問に思うのも分かるな。
ピシリとした姿勢で佇むバンガーの姿を思い浮かべながら、くすっと笑った。
「マイナさんの喜ぶ顔が見たいから、プレゼント買いに行きたいって言ったら快く玄関通してくれたよ」
「……………………………バンガーめ……」
苦々しい表情が浮かぶ。
でも、義父様に聴いたから、俺知ってるんだ。
バンガーはマイナさんを、小さい頃から知ってる。番をなかなか手に入れることができなくて苛つく姿も、姿が見えない間に俺の身に何か起きるんじゃないかって焦燥感を抱く姿も。
だから、最近、幸せそうに笑うようになったマイナさんを見て、バンガーが漸く安堵できたってこと。俺は知ってたんだよ、マイナさん。
「マイナさん、大事にされてるから」
「………流石に知ってますよ」
誂うように言うと、マイナさんは少し拗ねてしまったみたいだ。そんな姿は初めてで、ちょっと嬉しくなりながらプレゼントを指さした。
「マイナさん、甘いの大丈夫だったと思うから選んだんだけど、どうかな?」
「……甘いのは大好きですよ」
仕返しとばかりに、掠めるように口付けられる。
「っ!?」
目を白黒させる俺に涼しい顔で微笑んでみせたマイナさんは、俺の腰に片腕を巻き付けたまま器用にラッピングを剥がし、中のお菓子を取り出した。
ふわりとなんとも表現し難い香りがたつ。甘い香りなんだけど、ちょっとナッツみたいな芳ばしい香りもする。
「ああ、これは………」
すん、とお菓子の香りを嗅いだマイナさんは、少し目を見張って俺を見た。
「これを買ってきてくれたんですね」
ゆるりと、マイナさんの綺麗な瞳が甘く溶ける。溢れんばかりの愛しさと少しの情欲の滲むその目に、流石に恥ずかしくなって俺はぱっと視線を逸らした。
「評判が良いって聞いてさ。チョコレートっていうんだって。知ってる?」
「名前はどこかで聞いた覚えがありますね」
良かった。マイナさんも初めて食べるお菓子みたいだ。
ソルネスに教えてもらえて良かったな、と思っていると、唇に何かが軽く押し付けられた。
「ーー?」
逸らしていた視線をマイナさんに向けると、彼は一口サイズの丸いチョコレートの粒を指で摘み俺の口元に運んでいた。
「レイ、ほら、あーん」
「っ!これ、マイナさんの……っ」
マイナさんのプレゼントだから先に食べてって言いたかったのに、口を開けた途端にチョコレートが放り込まれる。
ちょっとヒヤッとした口あたりの後とろりと溶け始め、濃厚な甘みと芳醇なチョコレートの旨みが口いっぱいに広がった。
初めて食べるチョコレートの、その驚きの味に思わず言葉を失くす。無意識に唇を指で押さえてしまっていたんだけど、その指にぬるりとマイナさんが舌を這わせてきた。
見せつけるように赤い舌を覗かせて、ゆっくりと指のラインを辿る。
「ーーーレイ、口を開けて。私にも味あわせて……」
熱い吐息が指に絡まる。
明らかな欲を滲ませた瞳から目が離せなくて、身動き一つできずにいると、マイナさんは喉の奥で密やかに笑い、俺の手をそっと掴んで口元から外させた。
「プレゼント、頂きますね……」
マイナさんはゆるりと目を細め、ゆっくりと唇を重ねた。
粒を押し付けられた時に、ほんの少しだけ溶けて唇に付いたチョコレートを味わうように舐め取る。
そして、まだ完全には溶けずに口の中で形を残すチョコレートと俺の舌に、チョコレートに負けないくらい濃厚に自分の舌を絡ませ始めた。
ぬるぬると容赦なく口の中を這い回るマイナさんの舌は、チョコレートを舐っているのか、俺の舌を舐っているのかもう分からない。
二人分の唾液と溶けたチョコレートが混ざり合い、飲み込みきれない分が口の端から流れ落ちていく。
その跡を辿るように舌を這わせて舐め取ると、マイナさんは俺の顔の近くでクスっと笑った。
その、色気増々な微笑みを、熱に浮かされたようにぼぅ……っとしながら見つめる。さっきからバクバクと心臓が早鐘を打つのは何でだろう……。
さっき口にしたチョコレートみたいに、思考がドロリと溶けていく。
「……知ってました、レイ?」
目尻を赤く染め、淫靡に笑うマイナさん。伸ばされた指がするりと首を辿り、シャツのボタンを外して中に潜り込んできた。
「……っ、ん………っ」
硬く尖り存在を主張し始めていた胸の突起に、やわやわと意地悪するように淡い刺激を与えてくる。
そのムズムズするような感触に、思わず甘い息が洩れた。
「チョコレートには、媚薬効果もあるそうですよ……?」
「?」
マイナさんが何を言っているけど、全然頭に入ってこない。
蕩けた頭のまま、彼の首に両腕を巻き付けた。
間近にある素晴らしく整った顔をうっとりと見つめる。聖獣『獏』特有の珍しくも美しい瞳を覗き込みながら、俺はふわふわと笑った。
「きょうは、だいじなヒトに、おもいを伝える日、なんだって」
「ーーーーそうですか」
「まいなさん。おれ、マイナさんが、だいすき」
「っ!!!!」
思わず、といったように目を見開き絶句したマイナさんは、その次の瞬間、びっくりするくらい顔を赤く染めた。
「……………あああああ、もうっ」
俯いて呻るようなこえをだす彼をぼんやり眺めていると、ぱっと顔を上げて赤い顔のまま俺を睨んできた。
「煽ったのは貴方ですからね!」
そう言うと、マイナさんは噛み付くように口付けてきたのだった。
♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡
媚薬効果が出すぎたのかいつになく積極的にマイナを求め、濃厚な甘い甘い夜を過ごした結果、翌日起き上がれなかったレイは知らない。
レイが訪れたチョコレート専門店が、ダンカン公爵家御用達店に認定された事を。
まだレイは知らなかった……。
って言っても、ソファに座ってるのはマイナさん一人。俺は彼の膝上に座らせられている。
「しかし、よくあのバンガーが外出を許しましたね?」
主の命令は絶対厳守!なバンガーは、マイナさんからの信頼も厚いからね。疑問に思うのも分かるな。
ピシリとした姿勢で佇むバンガーの姿を思い浮かべながら、くすっと笑った。
「マイナさんの喜ぶ顔が見たいから、プレゼント買いに行きたいって言ったら快く玄関通してくれたよ」
「……………………………バンガーめ……」
苦々しい表情が浮かぶ。
でも、義父様に聴いたから、俺知ってるんだ。
バンガーはマイナさんを、小さい頃から知ってる。番をなかなか手に入れることができなくて苛つく姿も、姿が見えない間に俺の身に何か起きるんじゃないかって焦燥感を抱く姿も。
だから、最近、幸せそうに笑うようになったマイナさんを見て、バンガーが漸く安堵できたってこと。俺は知ってたんだよ、マイナさん。
「マイナさん、大事にされてるから」
「………流石に知ってますよ」
誂うように言うと、マイナさんは少し拗ねてしまったみたいだ。そんな姿は初めてで、ちょっと嬉しくなりながらプレゼントを指さした。
「マイナさん、甘いの大丈夫だったと思うから選んだんだけど、どうかな?」
「……甘いのは大好きですよ」
仕返しとばかりに、掠めるように口付けられる。
「っ!?」
目を白黒させる俺に涼しい顔で微笑んでみせたマイナさんは、俺の腰に片腕を巻き付けたまま器用にラッピングを剥がし、中のお菓子を取り出した。
ふわりとなんとも表現し難い香りがたつ。甘い香りなんだけど、ちょっとナッツみたいな芳ばしい香りもする。
「ああ、これは………」
すん、とお菓子の香りを嗅いだマイナさんは、少し目を見張って俺を見た。
「これを買ってきてくれたんですね」
ゆるりと、マイナさんの綺麗な瞳が甘く溶ける。溢れんばかりの愛しさと少しの情欲の滲むその目に、流石に恥ずかしくなって俺はぱっと視線を逸らした。
「評判が良いって聞いてさ。チョコレートっていうんだって。知ってる?」
「名前はどこかで聞いた覚えがありますね」
良かった。マイナさんも初めて食べるお菓子みたいだ。
ソルネスに教えてもらえて良かったな、と思っていると、唇に何かが軽く押し付けられた。
「ーー?」
逸らしていた視線をマイナさんに向けると、彼は一口サイズの丸いチョコレートの粒を指で摘み俺の口元に運んでいた。
「レイ、ほら、あーん」
「っ!これ、マイナさんの……っ」
マイナさんのプレゼントだから先に食べてって言いたかったのに、口を開けた途端にチョコレートが放り込まれる。
ちょっとヒヤッとした口あたりの後とろりと溶け始め、濃厚な甘みと芳醇なチョコレートの旨みが口いっぱいに広がった。
初めて食べるチョコレートの、その驚きの味に思わず言葉を失くす。無意識に唇を指で押さえてしまっていたんだけど、その指にぬるりとマイナさんが舌を這わせてきた。
見せつけるように赤い舌を覗かせて、ゆっくりと指のラインを辿る。
「ーーーレイ、口を開けて。私にも味あわせて……」
熱い吐息が指に絡まる。
明らかな欲を滲ませた瞳から目が離せなくて、身動き一つできずにいると、マイナさんは喉の奥で密やかに笑い、俺の手をそっと掴んで口元から外させた。
「プレゼント、頂きますね……」
マイナさんはゆるりと目を細め、ゆっくりと唇を重ねた。
粒を押し付けられた時に、ほんの少しだけ溶けて唇に付いたチョコレートを味わうように舐め取る。
そして、まだ完全には溶けずに口の中で形を残すチョコレートと俺の舌に、チョコレートに負けないくらい濃厚に自分の舌を絡ませ始めた。
ぬるぬると容赦なく口の中を這い回るマイナさんの舌は、チョコレートを舐っているのか、俺の舌を舐っているのかもう分からない。
二人分の唾液と溶けたチョコレートが混ざり合い、飲み込みきれない分が口の端から流れ落ちていく。
その跡を辿るように舌を這わせて舐め取ると、マイナさんは俺の顔の近くでクスっと笑った。
その、色気増々な微笑みを、熱に浮かされたようにぼぅ……っとしながら見つめる。さっきからバクバクと心臓が早鐘を打つのは何でだろう……。
さっき口にしたチョコレートみたいに、思考がドロリと溶けていく。
「……知ってました、レイ?」
目尻を赤く染め、淫靡に笑うマイナさん。伸ばされた指がするりと首を辿り、シャツのボタンを外して中に潜り込んできた。
「……っ、ん………っ」
硬く尖り存在を主張し始めていた胸の突起に、やわやわと意地悪するように淡い刺激を与えてくる。
そのムズムズするような感触に、思わず甘い息が洩れた。
「チョコレートには、媚薬効果もあるそうですよ……?」
「?」
マイナさんが何を言っているけど、全然頭に入ってこない。
蕩けた頭のまま、彼の首に両腕を巻き付けた。
間近にある素晴らしく整った顔をうっとりと見つめる。聖獣『獏』特有の珍しくも美しい瞳を覗き込みながら、俺はふわふわと笑った。
「きょうは、だいじなヒトに、おもいを伝える日、なんだって」
「ーーーーそうですか」
「まいなさん。おれ、マイナさんが、だいすき」
「っ!!!!」
思わず、といったように目を見開き絶句したマイナさんは、その次の瞬間、びっくりするくらい顔を赤く染めた。
「……………あああああ、もうっ」
俯いて呻るようなこえをだす彼をぼんやり眺めていると、ぱっと顔を上げて赤い顔のまま俺を睨んできた。
「煽ったのは貴方ですからね!」
そう言うと、マイナさんは噛み付くように口付けてきたのだった。
♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡
媚薬効果が出すぎたのかいつになく積極的にマイナを求め、濃厚な甘い甘い夜を過ごした結果、翌日起き上がれなかったレイは知らない。
レイが訪れたチョコレート専門店が、ダンカン公爵家御用達店に認定された事を。
まだレイは知らなかった……。
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