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酔っぱらい
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◆◆◆◆◆
居酒屋を後にした頃には、瑛太はすっかり酔ってしまっていた。足元も覚束ない状態だ。普段は悪酔いなどしない瑛太が珍しい。
「瑛太、飲み過ぎ~。やっぱり、三上の再婚を気にしてるんだろ?とにかく歩け」
「うるせ~」
「そんなに三上に未練あるなら、あっさり離婚するなよな。くそ、重い!」
瑛太の肩を支えながら歩くが、よい体格をしている親友を長く運ぶのは無理そうだ。僕は周囲を見回して『それ』を見つけた。
「あー、前方にラブホテルを発見。そこに入りたくなかったら、自力で歩いてくれ」
「ラ、ラブホテル!?」
瑛太はびくりと体を震わせた。そして、意を決すると、僕の肩を振りほどき歩き始めた。だが、三歩歩いて何もない地面で躓く瑛太。そのまま地面に転がった瑛太を、僕は見下ろして口を開く。
「助けて欲しい?」
「助けてくれ、要。めっちゃ、吐きそう」
「うぉ、それは待て」
僕は瑛太を必死に背負い、ずるずるとラブホテルに引きずっていった。一番安い部屋を選択するつもりが、全て埋まっていた。
「うーん、無駄な出費」
「吐きたい~、吐きたい~」
「黙れ、瑛太」
残る部屋はラブホテルらしい、キラキラ内装のものばかり。仕方なくそこを選択。瑛太を抱えたまま、エレベーターに乗り部屋に向かった。
「うわー、ラブホテル感半端なし!」
「吐ければ何でもいい。トイレ行く~」
「行っとけ」
瑛太をトイレに突っ込むと、僕はベッドに向かい寝転がった。ベッドは清潔だったが、自分の汗臭さが気になった。
「シャワー浴びるか」
ジャグジー付の浴室は、何故か透け透けだった。いや、ここはラブホテルだからこれで正解なのか?安堂に時々ホテルに呼び出されるが、ラブホテルではなく高級ホテルだ。
「青春時代にラブホテルの利用を逸したおっさんには、このキラキラ具合が辛いな」
ぶつぶつと独り言を呟きながら、服を次々と脱いでいく。緊張すると独り言が増えるのは、昔からの癖だ。浴室に入り湯船に湯を張る。そして、湯船に入りすっぽりと身を隠した。これなら、壁が透け透けでも大丈夫だろう。
「童貞は風俗店で捨てたしな。唯一できた彼女とはセックスまで至らず、ラブホテルを利用する機会がなかった。いや、オタクの僕にキスを与えてくれただけでも、三上さんには感謝だ。しかし、彼女が再婚か。相手はどんな奴かな?」
僕が三上さんとの淡いキスを思い出していると、瑛太がトイレを出て部屋に入ってきた。そして、浴室にいる僕を見て固まる。僕が手を振ると、瑛太が真っ赤な顔をして浴室に近づいてきた。そして、遠慮なく扉を開く。
「やらないからな!」
「なにが?」
「セックスだよ!要とはそんな関係になりたくない。だから、さっさと風呂から出ろ!」
僕は思わず笑ってしまった。そして、瑛太に向けて湯船の湯を掛けた。
「当たり前だ。僕は見境なしの男好きではないからね。ただ、汗臭くて湯船に入っただけ」
瑛太は明らかにほっとした表情を浮かべた。だが、まだ酔いは覚めていないようだ。瑛太が妙な事を言い出す。
「お前は汗臭い。俺はゲロ臭い。だから、俺も風呂に入る権利がある」
そう言うと、服をさっさと脱ぎ始めた。止める間もなく裸になった瑛太は、シャワーで体を洗うことなく湯船に入ってきた。
「相当酔ってるね、瑛太?」
「まーな。しかし、広い湯船だな」
「ジャグジーにする?」
「おお、いいな!」
ジャグジーのボタンを押すと、浴室の証明が暗くなり、湯船からムーディーなライトが煌めいた。うーん、連動式か。
◆◆◆◆◆
居酒屋を後にした頃には、瑛太はすっかり酔ってしまっていた。足元も覚束ない状態だ。普段は悪酔いなどしない瑛太が珍しい。
「瑛太、飲み過ぎ~。やっぱり、三上の再婚を気にしてるんだろ?とにかく歩け」
「うるせ~」
「そんなに三上に未練あるなら、あっさり離婚するなよな。くそ、重い!」
瑛太の肩を支えながら歩くが、よい体格をしている親友を長く運ぶのは無理そうだ。僕は周囲を見回して『それ』を見つけた。
「あー、前方にラブホテルを発見。そこに入りたくなかったら、自力で歩いてくれ」
「ラ、ラブホテル!?」
瑛太はびくりと体を震わせた。そして、意を決すると、僕の肩を振りほどき歩き始めた。だが、三歩歩いて何もない地面で躓く瑛太。そのまま地面に転がった瑛太を、僕は見下ろして口を開く。
「助けて欲しい?」
「助けてくれ、要。めっちゃ、吐きそう」
「うぉ、それは待て」
僕は瑛太を必死に背負い、ずるずるとラブホテルに引きずっていった。一番安い部屋を選択するつもりが、全て埋まっていた。
「うーん、無駄な出費」
「吐きたい~、吐きたい~」
「黙れ、瑛太」
残る部屋はラブホテルらしい、キラキラ内装のものばかり。仕方なくそこを選択。瑛太を抱えたまま、エレベーターに乗り部屋に向かった。
「うわー、ラブホテル感半端なし!」
「吐ければ何でもいい。トイレ行く~」
「行っとけ」
瑛太をトイレに突っ込むと、僕はベッドに向かい寝転がった。ベッドは清潔だったが、自分の汗臭さが気になった。
「シャワー浴びるか」
ジャグジー付の浴室は、何故か透け透けだった。いや、ここはラブホテルだからこれで正解なのか?安堂に時々ホテルに呼び出されるが、ラブホテルではなく高級ホテルだ。
「青春時代にラブホテルの利用を逸したおっさんには、このキラキラ具合が辛いな」
ぶつぶつと独り言を呟きながら、服を次々と脱いでいく。緊張すると独り言が増えるのは、昔からの癖だ。浴室に入り湯船に湯を張る。そして、湯船に入りすっぽりと身を隠した。これなら、壁が透け透けでも大丈夫だろう。
「童貞は風俗店で捨てたしな。唯一できた彼女とはセックスまで至らず、ラブホテルを利用する機会がなかった。いや、オタクの僕にキスを与えてくれただけでも、三上さんには感謝だ。しかし、彼女が再婚か。相手はどんな奴かな?」
僕が三上さんとの淡いキスを思い出していると、瑛太がトイレを出て部屋に入ってきた。そして、浴室にいる僕を見て固まる。僕が手を振ると、瑛太が真っ赤な顔をして浴室に近づいてきた。そして、遠慮なく扉を開く。
「やらないからな!」
「なにが?」
「セックスだよ!要とはそんな関係になりたくない。だから、さっさと風呂から出ろ!」
僕は思わず笑ってしまった。そして、瑛太に向けて湯船の湯を掛けた。
「当たり前だ。僕は見境なしの男好きではないからね。ただ、汗臭くて湯船に入っただけ」
瑛太は明らかにほっとした表情を浮かべた。だが、まだ酔いは覚めていないようだ。瑛太が妙な事を言い出す。
「お前は汗臭い。俺はゲロ臭い。だから、俺も風呂に入る権利がある」
そう言うと、服をさっさと脱ぎ始めた。止める間もなく裸になった瑛太は、シャワーで体を洗うことなく湯船に入ってきた。
「相当酔ってるね、瑛太?」
「まーな。しかし、広い湯船だな」
「ジャグジーにする?」
「おお、いいな!」
ジャグジーのボタンを押すと、浴室の証明が暗くなり、湯船からムーディーなライトが煌めいた。うーん、連動式か。
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