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バーサーカー
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◆◆◆◆◆
異常な光景に俺は震えを覚えた。
オクトパスに一人で挑む馬鹿はいない。今回も出現情報を得て、自警団とギルドの冒険者、合わせて三十人でこの森にやって来た。
沼の多い森の為に、パーティーに別れてオクトパスを探している。見つけた際には手を出さず、自警団とギルドメンバー全員で討伐することになっていた。
だが、グレンは一人で戦っている。
表情なくオクトパスを切り刻むグレンは、オクトパスの体液を身に浴びても平然としている。強酸性の体液が衣服を溶かすが、彼の体を傷つける事はない。
俺は足首に絡み付いたオクトパスの脚を、毒付きナイフで切り裂く。毒に敏感なオクトパスが脚を丸めながら沼に戻る。
俺は立ち上がって剣に手を添える。そして、魔方陣を拡大させた。オクトパスの棲みかである沼を魔方陣で覆う。
「土よ、我が命に従え。砂漠」
魔方陣が光り沼を砂漠にかえていく。オクトパスは乾燥に弱い。砂漠の砂がオクトパスの皮膚を覆い、動きが鈍くなる。
「余計な真似を」
「は?」
突然、グレンが俺に向かい剣を向けてきた。跳躍に見惚れながらも、地面から剣を抜き去り防御する。
斬り合った瞬間、ギリギリと剣が軋む。視線が絡み合う。不意にグレンはうっすらと笑みを浮かべると、俺の肩を利用して再び跳躍した。
そして、オクトパスの目玉に剣を突き刺す。グレンは俺にちらりと視線を向けると、無詠唱で魔方陣を展開した。それは、俺が展開した砂漠の魔法だった。俺への当て付けに、グレンは無詠唱でオクトパス自体を砂にする気だ。
「ちょっと待て、グレン!」
「・・・ 」
「オクトパスを砂に帰したら、討伐の証拠が残らない!魔法を無効にして俺の元に戻れ、グレン!」
突然、グレンの動きが止まった。そして、眼球に突き刺した剣を抜き去る。だが、その剣を鞘に収めようとして、なぜか野太い悲鳴を上げた。
「ひぎゃーーー!裸なんですけど!なんでよ。イケおじが裸になってる!しかも、なにこの肉体美!美しい!鍛え方が違う!流石、私のアバター!」
ヤバい、完全にヤク中だ。あれほど、薬物には注意していたのにどこで摂取した!?
「グレン、主の命に従え!廃人のお前が奴隷に堕ちた後、俺がお前を買い取った!以前は親友だとしても、今は俺が主だ。俺の命に従え!従え!」
「イケメンが主・・」
グレンが何故か頬を染めた。もじもじとしながら、オクトパスの潰れた目玉をグリグリしている。やがて、意を決したように跳躍して俺の前に立った。
「まじ、イケメンだ」
そう呟くとグレンは俺の胸に飛び込んできた。ちょっと待て、裸同然の男を何故抱き締めねばならない!いくら、以前親友でも、キモいぞ。
◆◆◆◆◆
異常な光景に俺は震えを覚えた。
オクトパスに一人で挑む馬鹿はいない。今回も出現情報を得て、自警団とギルドの冒険者、合わせて三十人でこの森にやって来た。
沼の多い森の為に、パーティーに別れてオクトパスを探している。見つけた際には手を出さず、自警団とギルドメンバー全員で討伐することになっていた。
だが、グレンは一人で戦っている。
表情なくオクトパスを切り刻むグレンは、オクトパスの体液を身に浴びても平然としている。強酸性の体液が衣服を溶かすが、彼の体を傷つける事はない。
俺は足首に絡み付いたオクトパスの脚を、毒付きナイフで切り裂く。毒に敏感なオクトパスが脚を丸めながら沼に戻る。
俺は立ち上がって剣に手を添える。そして、魔方陣を拡大させた。オクトパスの棲みかである沼を魔方陣で覆う。
「土よ、我が命に従え。砂漠」
魔方陣が光り沼を砂漠にかえていく。オクトパスは乾燥に弱い。砂漠の砂がオクトパスの皮膚を覆い、動きが鈍くなる。
「余計な真似を」
「は?」
突然、グレンが俺に向かい剣を向けてきた。跳躍に見惚れながらも、地面から剣を抜き去り防御する。
斬り合った瞬間、ギリギリと剣が軋む。視線が絡み合う。不意にグレンはうっすらと笑みを浮かべると、俺の肩を利用して再び跳躍した。
そして、オクトパスの目玉に剣を突き刺す。グレンは俺にちらりと視線を向けると、無詠唱で魔方陣を展開した。それは、俺が展開した砂漠の魔法だった。俺への当て付けに、グレンは無詠唱でオクトパス自体を砂にする気だ。
「ちょっと待て、グレン!」
「・・・ 」
「オクトパスを砂に帰したら、討伐の証拠が残らない!魔法を無効にして俺の元に戻れ、グレン!」
突然、グレンの動きが止まった。そして、眼球に突き刺した剣を抜き去る。だが、その剣を鞘に収めようとして、なぜか野太い悲鳴を上げた。
「ひぎゃーーー!裸なんですけど!なんでよ。イケおじが裸になってる!しかも、なにこの肉体美!美しい!鍛え方が違う!流石、私のアバター!」
ヤバい、完全にヤク中だ。あれほど、薬物には注意していたのにどこで摂取した!?
「グレン、主の命に従え!廃人のお前が奴隷に堕ちた後、俺がお前を買い取った!以前は親友だとしても、今は俺が主だ。俺の命に従え!従え!」
「イケメンが主・・」
グレンが何故か頬を染めた。もじもじとしながら、オクトパスの潰れた目玉をグリグリしている。やがて、意を決したように跳躍して俺の前に立った。
「まじ、イケメンだ」
そう呟くとグレンは俺の胸に飛び込んできた。ちょっと待て、裸同然の男を何故抱き締めねばならない!いくら、以前親友でも、キモいぞ。
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