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7 義兄のクロード 1

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クロードは私をベッドに寝かせると、クッションやベッドカバーを器用に整えた。クッションに上半身を預けて、私はクロードの動きを観察していた。

本来なら使用人がする作業を、てきぱきとこなす従兄弟のクロード。私は目を丸くして彼に話し掛けていた。

「ベッドメイキングが上手だね。クロードは、使用人の経験があるの?」

「お前なぁ~。考えなしに発言するのは止めろ。今のは嫌味にしか聞こえなかったぞ。まあ、カルロッタの事だから、そんな意図はないのだろうが・・その癖は直せ」

「ベッドメイキングが上手だから、誉めただけだよ?どうして、クロードは嫌味と捉えるかなぁ~」

クロードはため息を付いたが、少し表情を和らげて私の顔を覗き込んできた。

「ヘルベルトが見えると言った時には、お前が正気を失ったと思った。だが、今は普段のカルロッタだ。何時にも増して落ち着きはない事は気になるが・・」

私は慌てて言い訳した。

「夢がね・・物凄かったんだよ!」

『カルロッタ、語彙力が破滅的だね』

ヘルベルト兄上の声が聞こえて視線をさ迷わせると、クロードの横に堂々と立っていた。何故、そこにいるの!?私はおもわず声をあげそうになり、慌てて口を両手で覆った。

「何だよ、物凄いって?」

「も、物凄く・・ヘルベルト兄上がリアルだったの。それで、兄上に抱きしめられてドキドキしたの。それだけ!」

「ヘルベルトに抱きしめられたとか・・妙な夢を見てるんじゃねーよ!」

クロードが私の顔にクッションを押し付けた。私がクッションを除けると、クロードは不貞腐れた顔をしていた。

「クロード?」

「っ、何でもない。それより、医者にはヘルベルトの話しは絶対にするな。正気を失ったと当主に疑われたら、カルロッタは屋敷に幽閉される可能性がある。頼むから、用心してくれ」

クロードの真剣な表情に気圧されて、私は黙ってうつ向いた。皆が忌み嫌う私の瞳を、クロードは真っ直ぐに見つめる。その事が、時々怖くなる。いつか、その視線を逸らされる日が来るかもしれない。

『神の教えに背いた者が子を孕むと、左右の瞳の虹彩色が異なる赤子が産まれる』

フォルカー教の聖書に書かれた一節。

右虹彩がブルー。左虹彩がブラウン。
・・私の瞳の色は左右で異なる。

「カルロッタ?」

クロードの声が、私を思考の渦から連れ戻した。

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