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6 ヘルベルト兄上 3
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◆◆◆◆◆
「クロードを部屋に呼んだ事を、忘れていました!まずいです、ヘルベルト兄上!」
『クロードなど放っておきなさい』
「そんな事は出来ません。私がクロードを呼び出したのですよ?それに、牢獄に会いに来てくれたのは、彼だけでした」
『ガーネット家がカルロッタを救わない事を、クロードは伝えに来ただけだ。君はひどく傷付いていたのに、慰めの言葉もなかった。クロードの事など放っておけばいい、カルロッタ』
ヘルベルト兄上にぎゅっと抱きしめられて、おもわず顔を火照らせてしまった。婚約者のアデルバートとは、手を繋いだだけで・・こんな抱擁は初めて。
「ヘルベルト兄さま、恥ずかしいです」
『ん、顔が赤いね?』
「そこを突っ込まないでください!」
私は恥ずかしくなり、ヘルベルト兄上の抱擁から逃れた。だが、互いの体が離れた途端に、兄上の体が周辺の景色に溶け出し朧になった。
「兄上!?」
『どうやら、カルロッタの体に触れている間だけ実体化できるらしい。でも、カルロッタが見えているなら問題ないかな?』
ヘルベルト兄上は平然とそういうが、とても安心できる姿ではない。輪郭が淡くなり、背景に溶け始めている。
「兄上、消えちゃだめ!嫌だ!兄上!」
『落ち着いて、カルロッタ』
「ヘルベルト兄さまの体が、硝子みたいになってます!消えないで、兄上ーー!」
私は混乱して叫ぶことしか出来なかった。その時、自室の扉が勢いよく開いた。
「カルロッタ!」
「クロード!」
クロードは慌てた様子で私に近づくと、ふらつきながら立つ私を抱き寄せ支えた。
「ふらついているな。お前には、まだ療養が必要だ。ベッドでおとなしく寝ていろ、カルロッタ」
クロードが私を抱きしめたまま、ベッドの方向に促す。でも、今はベッドで寝ている場合ではない。
「クロード、それどころじゃないよ!ヘルベルト兄上が私に逢いに来てくれたのに、消えそうになっていているの!何とかして、クロード!兄さまが、消えちゃう!」
「ヘルベルト?何を言っているんだ、カルロッタ。ヘルベルトが会いにくるとか、あるわけがないだろ。ヘルベルトの夢でも見たのか、カルロッタ?」
「夢じゃないよ、クロード!ヘルベルト兄上をしっかりと見て。おねがい!」
私はクロードの頬を両手で包み込むと、ヘルベルト兄上の方向に無理やり首をひねった。
「うおっ、痛いだろ!やめろ、カルロッタ!お前の怪力は知ってるが、首はヤバイって。イテテ、やめろ~!」
「クロード、見えるでしょ!ほら、ヘルベルト兄上がいるでしょ?ね、ねっ?」
「この部屋にいるのは、俺とカルロッタだけだ。ヘルベルトはこの部屋にはいない」
「そんな・・そこに兄さまがいるのに」
私の視線の先で、ヘルベルト兄上が首を左右に振った。そして、ゆっくりと口をひらく。
『やはり、カルロッタ以外には俺の姿は見えないみたいだ。俺の存在は秘密にした方がよさそうだ。精神を病んだと疑われて、屋敷に閉じ込められる可能性がある』
「っ!」
『カルロッタ。俺は消えたりしないから、落ち着いて行動しなさい。いいね?』
「・・はい、兄上」
「カルロッタ?」
私はクロードの頬から手を離し、視線をさ迷わせながら言い訳を考えた。そして、単純な嘘を付くことにした。
「あの、その・・夢でした」
「夢か・・よし、ベッドで休むぞ。俺への相談事は、ヘルベルトの夢を見た件か?」
「あっ、それが違うの!クロードへの相談事は、パオラの件なんだよ」
「パオラの件・・わかった。とにかく、ベッドに横になれ。医者を呼んだから、診察を受けた後に話を聞く。それでいいか?」
「うん、クロード」
クロードに肩を抱かれながら、私はベッドに向かった。
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「クロードを部屋に呼んだ事を、忘れていました!まずいです、ヘルベルト兄上!」
『クロードなど放っておきなさい』
「そんな事は出来ません。私がクロードを呼び出したのですよ?それに、牢獄に会いに来てくれたのは、彼だけでした」
『ガーネット家がカルロッタを救わない事を、クロードは伝えに来ただけだ。君はひどく傷付いていたのに、慰めの言葉もなかった。クロードの事など放っておけばいい、カルロッタ』
ヘルベルト兄上にぎゅっと抱きしめられて、おもわず顔を火照らせてしまった。婚約者のアデルバートとは、手を繋いだだけで・・こんな抱擁は初めて。
「ヘルベルト兄さま、恥ずかしいです」
『ん、顔が赤いね?』
「そこを突っ込まないでください!」
私は恥ずかしくなり、ヘルベルト兄上の抱擁から逃れた。だが、互いの体が離れた途端に、兄上の体が周辺の景色に溶け出し朧になった。
「兄上!?」
『どうやら、カルロッタの体に触れている間だけ実体化できるらしい。でも、カルロッタが見えているなら問題ないかな?』
ヘルベルト兄上は平然とそういうが、とても安心できる姿ではない。輪郭が淡くなり、背景に溶け始めている。
「兄上、消えちゃだめ!嫌だ!兄上!」
『落ち着いて、カルロッタ』
「ヘルベルト兄さまの体が、硝子みたいになってます!消えないで、兄上ーー!」
私は混乱して叫ぶことしか出来なかった。その時、自室の扉が勢いよく開いた。
「カルロッタ!」
「クロード!」
クロードは慌てた様子で私に近づくと、ふらつきながら立つ私を抱き寄せ支えた。
「ふらついているな。お前には、まだ療養が必要だ。ベッドでおとなしく寝ていろ、カルロッタ」
クロードが私を抱きしめたまま、ベッドの方向に促す。でも、今はベッドで寝ている場合ではない。
「クロード、それどころじゃないよ!ヘルベルト兄上が私に逢いに来てくれたのに、消えそうになっていているの!何とかして、クロード!兄さまが、消えちゃう!」
「ヘルベルト?何を言っているんだ、カルロッタ。ヘルベルトが会いにくるとか、あるわけがないだろ。ヘルベルトの夢でも見たのか、カルロッタ?」
「夢じゃないよ、クロード!ヘルベルト兄上をしっかりと見て。おねがい!」
私はクロードの頬を両手で包み込むと、ヘルベルト兄上の方向に無理やり首をひねった。
「うおっ、痛いだろ!やめろ、カルロッタ!お前の怪力は知ってるが、首はヤバイって。イテテ、やめろ~!」
「クロード、見えるでしょ!ほら、ヘルベルト兄上がいるでしょ?ね、ねっ?」
「この部屋にいるのは、俺とカルロッタだけだ。ヘルベルトはこの部屋にはいない」
「そんな・・そこに兄さまがいるのに」
私の視線の先で、ヘルベルト兄上が首を左右に振った。そして、ゆっくりと口をひらく。
『やはり、カルロッタ以外には俺の姿は見えないみたいだ。俺の存在は秘密にした方がよさそうだ。精神を病んだと疑われて、屋敷に閉じ込められる可能性がある』
「っ!」
『カルロッタ。俺は消えたりしないから、落ち着いて行動しなさい。いいね?』
「・・はい、兄上」
「カルロッタ?」
私はクロードの頬から手を離し、視線をさ迷わせながら言い訳を考えた。そして、単純な嘘を付くことにした。
「あの、その・・夢でした」
「夢か・・よし、ベッドで休むぞ。俺への相談事は、ヘルベルトの夢を見た件か?」
「あっ、それが違うの!クロードへの相談事は、パオラの件なんだよ」
「パオラの件・・わかった。とにかく、ベッドに横になれ。医者を呼んだから、診察を受けた後に話を聞く。それでいいか?」
「うん、クロード」
クロードに肩を抱かれながら、私はベッドに向かった。
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