13 / 30
複雑な気持ち
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
リードの制服のズボンが、むくりと盛り上がっていた。俺は恐ろしくなり、ライオネルに抱きついた。ライオネルは、俺を抱き締めたまま口を開く。
「その見苦しい姿を、ケイに見せるな。さっさと、見廻りに行ってこの場の事は忘れろ。給料には、たっぷり手当てを上乗せする。ただし、殿下の事を漏らしたら・・職場にはいられなくなるぞ、リード」
「真面目な副団長が、事件の握りつぶしを平気で行う。流石は、貴族さま。下町生まれの俺は、厄介事は避けて生きろと教えられたから、この件からは引かせて貰う。ところで、バカなジルは状況が理解できないらしい。殿下の尻に、また突っ込むつもりらしいぞ。放っておいていいのか?」
「ジルはこちらで対処する。行けよ、リード」
「了解、ライオネル副団長」
リードは、何事も無かったように俺達に背を向けた。そして、歩きだした。その背中を見て、俺は泣きそうになった。
二年前、リードは俺から自白を得るために、飴と鞭を使った。激しく拷問し犯した後には、優しく俺を扱う。そしてまた自白を強要して責め苛み凌辱しては、激しく泣く俺を優しく抱擁した。
それが、幾日も繰り返された。
そしていつの間にか、『リードは俺に好意を寄せている』と、俺は思い込むようになっていた。何故、そう思い込んだのかは・・いまだに、自分でもよく分からない。でも、あの時の俺は、リードに自分の事を、全て知って欲しかった。
だから、俺は必死になって、リードに全てを打ち明けた。異世界から来たことも、タバコの件も、言葉がわからず心細いことも。俺は寂しく辛いと叫びながら、リードに抱きつき全てを自白していた。
だけど、それは日本語での自白で・・リードには、理解できるはずもなかった。俺の自白を、リードは罵倒と捉えらえた様だった。そして、俺はリードに散々殴られた。
牢獄から出た俺の心は、リードの姿を見るたびに、今もキリキリと痛みを生じさせる。
「大丈夫か、ケイ?」
「大丈夫じゃないよ、ライオネル」
俺はライオネルに愚痴を溢していた。だが、俺の愚痴に応じたのは、牢獄の中の囚人だった。
「大丈夫でないのは、俺の方だ。いい加減に、俺を助けろ。ライオネル = カナレハス」
牢獄から名を呼ばれたライオネルは、俺をゆっくりと地面におろすと、髪をくしゃくしゃと撫でた。そして、俺に背を向けて牢獄に向かう。
「ジル。職を失いたくなくば、さっさと牢獄から出ろ。リードはとっくに去ったぞ。尋問は俺が引き受ける」
「へい、副団長~。床に鍵が落ちているので、開けてください~」
ジルが指差した先に、鍵があった。俺はあわててそれを拾い上げて、ライオネルに手渡した。ライオネルは素早く鍵をあげて、ジルと交代するように牢獄に入った。俺も牢獄に入ろうとして、ライオネルに制止された。ジルは場違いな鼻唄混じりに、その場を去っていく。
「殿下、拘束を解きます」
「全く、おせーよ。ライオネル」
どうやら、二人は仲良しさんみたいだ。
◆◆◆◆◆
リードの制服のズボンが、むくりと盛り上がっていた。俺は恐ろしくなり、ライオネルに抱きついた。ライオネルは、俺を抱き締めたまま口を開く。
「その見苦しい姿を、ケイに見せるな。さっさと、見廻りに行ってこの場の事は忘れろ。給料には、たっぷり手当てを上乗せする。ただし、殿下の事を漏らしたら・・職場にはいられなくなるぞ、リード」
「真面目な副団長が、事件の握りつぶしを平気で行う。流石は、貴族さま。下町生まれの俺は、厄介事は避けて生きろと教えられたから、この件からは引かせて貰う。ところで、バカなジルは状況が理解できないらしい。殿下の尻に、また突っ込むつもりらしいぞ。放っておいていいのか?」
「ジルはこちらで対処する。行けよ、リード」
「了解、ライオネル副団長」
リードは、何事も無かったように俺達に背を向けた。そして、歩きだした。その背中を見て、俺は泣きそうになった。
二年前、リードは俺から自白を得るために、飴と鞭を使った。激しく拷問し犯した後には、優しく俺を扱う。そしてまた自白を強要して責め苛み凌辱しては、激しく泣く俺を優しく抱擁した。
それが、幾日も繰り返された。
そしていつの間にか、『リードは俺に好意を寄せている』と、俺は思い込むようになっていた。何故、そう思い込んだのかは・・いまだに、自分でもよく分からない。でも、あの時の俺は、リードに自分の事を、全て知って欲しかった。
だから、俺は必死になって、リードに全てを打ち明けた。異世界から来たことも、タバコの件も、言葉がわからず心細いことも。俺は寂しく辛いと叫びながら、リードに抱きつき全てを自白していた。
だけど、それは日本語での自白で・・リードには、理解できるはずもなかった。俺の自白を、リードは罵倒と捉えらえた様だった。そして、俺はリードに散々殴られた。
牢獄から出た俺の心は、リードの姿を見るたびに、今もキリキリと痛みを生じさせる。
「大丈夫か、ケイ?」
「大丈夫じゃないよ、ライオネル」
俺はライオネルに愚痴を溢していた。だが、俺の愚痴に応じたのは、牢獄の中の囚人だった。
「大丈夫でないのは、俺の方だ。いい加減に、俺を助けろ。ライオネル = カナレハス」
牢獄から名を呼ばれたライオネルは、俺をゆっくりと地面におろすと、髪をくしゃくしゃと撫でた。そして、俺に背を向けて牢獄に向かう。
「ジル。職を失いたくなくば、さっさと牢獄から出ろ。リードはとっくに去ったぞ。尋問は俺が引き受ける」
「へい、副団長~。床に鍵が落ちているので、開けてください~」
ジルが指差した先に、鍵があった。俺はあわててそれを拾い上げて、ライオネルに手渡した。ライオネルは素早く鍵をあげて、ジルと交代するように牢獄に入った。俺も牢獄に入ろうとして、ライオネルに制止された。ジルは場違いな鼻唄混じりに、その場を去っていく。
「殿下、拘束を解きます」
「全く、おせーよ。ライオネル」
どうやら、二人は仲良しさんみたいだ。
◆◆◆◆◆
2
お気に入りに追加
743
あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる