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複雑な気持ち

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リードの制服のズボンが、むくりと盛り上がっていた。俺は恐ろしくなり、ライオネルに抱きついた。ライオネルは、俺を抱き締めたまま口を開く。

「その見苦しい姿を、ケイに見せるな。さっさと、見廻りに行ってこの場の事は忘れろ。給料には、たっぷり手当てを上乗せする。ただし、殿下の事を漏らしたら・・職場にはいられなくなるぞ、リード」

「真面目な副団長が、事件の握りつぶしを平気で行う。流石は、貴族さま。下町生まれの俺は、厄介事は避けて生きろと教えられたから、この件からは引かせて貰う。ところで、バカなジルは状況が理解できないらしい。殿下の尻に、また突っ込むつもりらしいぞ。放っておいていいのか?」

「ジルはこちらで対処する。行けよ、リード」

「了解、ライオネル副団長」

リードは、何事も無かったように俺達に背を向けた。そして、歩きだした。その背中を見て、俺は泣きそうになった。

二年前、リードは俺から自白を得るために、飴と鞭を使った。激しく拷問し犯した後には、優しく俺を扱う。そしてまた自白を強要して責め苛み凌辱しては、激しく泣く俺を優しく抱擁した。

それが、幾日も繰り返された。

そしていつの間にか、『リードは俺に好意を寄せている』と、俺は思い込むようになっていた。何故、そう思い込んだのかは・・いまだに、自分でもよく分からない。でも、あの時の俺は、リードに自分の事を、全て知って欲しかった。

だから、俺は必死になって、リードに全てを打ち明けた。異世界から来たことも、タバコの件も、言葉がわからず心細いことも。俺は寂しく辛いと叫びながら、リードに抱きつき全てを自白していた。

だけど、それは日本語での自白で・・リードには、理解できるはずもなかった。俺の自白を、リードは罵倒と捉えらえた様だった。そして、俺はリードに散々殴られた。

牢獄から出た俺の心は、リードの姿を見るたびに、今もキリキリと痛みを生じさせる。

「大丈夫か、ケイ?」
「大丈夫じゃないよ、ライオネル」

俺はライオネルに愚痴を溢していた。だが、俺の愚痴に応じたのは、牢獄の中の囚人だった。

「大丈夫でないのは、俺の方だ。いい加減に、俺を助けろ。ライオネル = カナレハス」

牢獄から名を呼ばれたライオネルは、俺をゆっくりと地面におろすと、髪をくしゃくしゃと撫でた。そして、俺に背を向けて牢獄に向かう。

「ジル。職を失いたくなくば、さっさと牢獄から出ろ。リードはとっくに去ったぞ。尋問は俺が引き受ける」

「へい、副団長~。床に鍵が落ちているので、開けてください~」

ジルが指差した先に、鍵があった。俺はあわててそれを拾い上げて、ライオネルに手渡した。ライオネルは素早く鍵をあげて、ジルと交代するように牢獄に入った。俺も牢獄に入ろうとして、ライオネルに制止された。ジルは場違いな鼻唄混じりに、その場を去っていく。

「殿下、拘束を解きます」
「全く、おせーよ。ライオネル」

どうやら、二人は仲良しさんみたいだ。


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