おっさん家政夫は自警団独身寮で溺愛される

月歌(ツキウタ)

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裸エプロンの感想

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ライオネルは、高級レストランの個室で上品な料理を奢ってくれた。自警団の制服では、門前払いを食らいそうな店構えにびびった。だが、ライオネルの顔見知りらしい案内係は、すんなりと俺たちを通してくれた。

「知り合いと会うと面倒だから個室にしたが、その・・下心はないから安心してくれ」

「おや?俺の裸エプロンに、魅力を全く感じなかったの、ライオネル?イケメン紳士は、勃起しまくって襲ってきたけどなぁ」

「それならば、ケイも俺の裸エプロン姿を見ただろ。まだ感想を聞いていなかったな」

「実に・・セクシーで笑えた。まじで、自警団の皆が囮になって、裸エプロンにチャレンジしたの?そのムキムキの体で?ギルドの風俗課も、よく自警団に囮捜査を依頼したね。団長もよく引き受けたな」

「自警団は騎士団と違い、国からでる給金は僅かだ。それだけでは、団員は生活出来ない。だから、王都市民や貴族からの寄付は重要になる。そして、ギルドからの依頼を積極的に受けることも、自警団の存続には必要な事だ」

「たとえ、裸エプロンになっても?」
「たとえ、裸エプロンになってもだ」

ライオネルは、先程の店の食いぶりを忘れそうなほど、上品に料理を食べている。それにしても、ここのご飯は美味しい。獣臭くない。

「美味しいね、ライオネル」

「よかった。ジャクソン団長が、この店の常連でね。俺も騎士団に所属していた頃は、よくこの店を利用していた。懐かしいよ」

「ジャクソン団長は、伯爵家の次男だよね?ライオネルも貴族だよね?」

「まあね。俺は伯爵家の三男だ。騎士団に所属していた頃は、まだ実家と交流もあった。騎士団を止めてからは、手紙のやり取りもなくなったな。だが、この店に来ると、たまに家族と顔を合わせる事がある。それを避けるための個室だ。故に、ケイに下心はない。ああ、ケイの裸エプロンに対する評価がまだだったな」

「おっさんの裸エプロンの感想は?」
「実に・・セクシーで笑えなかった」
「何その感想?」
「ケイが襲われている姿を見て肝が冷えた」

俺は思わずニヤリと笑って、嫌みを口にしていた。

「おや?二年前は遠慮なく、俺を殴って拷問したくせに。まあ、ライオネルは、俺に厭らしいことはしなかったから・・職務に忠実だっただけだろうけどね」

「っ!」

ライオネルが表情を変えた。俺はそれを無視して旨い飯を食べた。うむ、旨い。

「こんな話は、折角のご飯が不味くなるね。ごめんね、ライオネル」

「・・今でも恨んでいるのか、ケイ」

「文字と言葉を丁寧に教えてくれたのは、教育係のライオネルだった。恨んでる相手は、まあ・・団員内にいなくもないけど、ライオネルは別だよ。一番、信頼してる」

「それが心からの言葉なら嬉しい」
「あれ、疑うの?」

「ケイは、いまだに隠し事が多いからな。身分も出身も不明。『タバコ』の件もまだ解決していない。いつか全てを話してくれると、願っている・・ケイ」

「ただのおっさんに、謎を求めるなよ。ガッカリするだけだよ、ライオネル」

俺はニヤリと笑って、ワインを口に運んだ。うおー、旨い!


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