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アラン兄さんに抱きしめられて

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◆◆◆◆◆

アランと俺は互いに体を洗いあった。一緒に湯浴みするのは確かに久しぶりだ。

「くすぐったいよ、アラン兄さん」

「俺もくすぐったい。わざとやっているだろ、ソフィア?」

確かにわざとやっている。俺はニヤリと笑った後、体の泡を流さず湯船に入った。

「ああ、ソフィア!」

「いいだろ、アラン兄さん。湯を入れ換えればいいだけだよ」

「湯を沸かすのに時間が掛かる」

「やかんで湯を沸かして湯船を満たすなんて、そりゃ時間が掛かるよ。あのさぁ、魔力で熱した湯でも、俺はもう平気だよ?魔力耐性がついたから、昔みたいに魔力に酔って吐いたりしないよ」

「本当に?」

アランが疑わしそうな顔をする。本当に心配性だ。

「本当だよ。それより、少し湯がぬるくなってきたから、魔力で温めてよ」

「じゃあ、少しだけ」
「一緒に湯船に入って温めて」
「わかった」

アランは几帳面にも泡を洗い流すと、湯船に入ってきた。湯船は大きい作りだが、アランが入ると体が密着する。キンモクセイの小さな花が浮かぶ湯が、湯船から溢れでた。

「二人で入るのは・・流石にきついね、アラン兄さん」

「動かないでくれ、ソフィア。駄目なところに、お前の足が触れてる」

「向かい合わせに入った兄さんが悪い!俺の足がアラン兄さんのペニスに当たっているのは、俺のせいではないからね」

俺はわざと足を動かしてみた。アランはしばらく我慢していたが、急に立ち上がり俺を抱き上げた。そして、背後から俺を抱き湯船に再び入った。

「ちょっと!今度はアラン兄さんのぺニスが俺の尻に当たってるんだけど~」

「仕方ないだろ、ソフィア。しかし、確かに湯がぬるくなっているな。仕方ない。魔力で温めるか」

アランは指先に魔力を集め、湯をかき回した。軽くかき回すだけで湯が温まりはじめる。ぬくぬくとした温度に、キンモクセイのよい薫り。思わず体を湯の中に沈めそうになった。

「ソフィア!」
「ふう、気持ちいい~」
「魔力酔いか?」

「違うよ。でも、アラン兄さんの優しさにちょっと酔ったかも。ねえ、俺に付き合って魔王城に暮らすのは辛くない?アラン兄さんは課金ガチャ☆5のレアキャラ『始まりの魔人』だよね?自由を愛するキャラ設定の筈なのに、なんで不自由な生活してるのさ。俺はもう成長したし、友人との約束は守ったと思うよ・・十分に」

「俺が不要になったか、ソフィア?」
「もしそうなら、どうするの?」
「悪いが、お前を離すつもりはない」
「一度は捨てたくせに」
「お前が・・俺に」

「『抱いて欲しい』って俺が迫ったら、アラン兄さんは逃げちゃった。何日も森の家に帰って来なくて、寂しかった」

「すまない」

「そして、俺は禁を破って結界の森を出た。アラン兄さんを探して、飛び出した先は魔物ばかりで・・俺はひとたまりもなかった。吸血鬼に襲われて、玩具にされて体液を全部吸われた。アラン兄さんの名を何度も呼んだ。叫んで助けを求めた。だけど、アラン兄さんは来てくれなかった。代わりに助けてくれたのが、白の魔王だった。そして、魔王の愛人にされ・・今は側室だ。大出世だけど、満足感は得られない。だって、俺も魔王もお互いに本気で愛し合っていないもの」

「ソフィア・・」
「キスして、アラン兄さん」
「できない」
「兄さん」

「魔王より俺の魔力の方が上だ。肌を重ねれば、ソフィアの寿命が削られる。お前の中の聖女の血脈が拒絶する」

「ただのキスだよ?」
「俺がキスで止められると思うのか?」
「・・あっ」

「止められない。ソフィアの命が尽きるまで・・情交を交わし続ける」

俺はアランの思いを知り、心をチリチリさせながら湯船からあがった。

「そっか。でも、約束してアラン兄さん。半分が人間の俺は、兄さんより確実に先に逝く。どんなに、俺が衰えて醜い姿になっていても・・最後はアラン兄さんが俺を抱いて。そして、逝かせて」

「約束する、ソフィア」

俺は笑ってアランの額にキスをした。それだけで唇がひりひりした痛かった。アランが興奮して魔力の出力が絞りきれてないみたい。流石は課金ガチャ☆5の『始まりの魔人』だ。魔力が半端ない。

「す、すまない」

「あのさあ、アラン兄さん。最後は気持ちよく昇天したいから、俺の寿命が尽きるまでにセックスできるように修行してね?」

「俺は童貞だから自信がないな。テクニックを磨きたいが、魔王級の相手でないと挿入時に相手が死ぬ。うーむ。白の魔王を犯して、練習するしかないか・・」

「そ、それは止めて!白の魔王は俺の夫ですから。手を出さないで!」

「まて、ソフィア!それは、白の魔王に情があるということなのか?あ、愛しているのか、ソフィア?」

俺は浴室で裸のまま困った表情を浮かべていた。

「人間の心は複雑にできてるの!」
「魔人の心も複雑だ」
「心は複雑だけど、体は正直にできてる」
「っ!」
「腹減った、アラン兄さん」

「いや、違うだろ!そこは、体が情交を求めてるが正解だろ?」

「いや、本気でお腹すいた。アラン兄さん、早くお湯からあがってご飯作って。ビーフシチューとハンバーグ。牛肉ね!ニンジンはいらない。ジャガイモは食べてもいいよ」

アランがため息をつきながら、浴槽からあがる。ぺニスが上を向いていたので、視線をそらした。寿命が尽きる瞬間まで、ぺニスを食べるのは我慢だ。

「あー、ビーフシチュー食べたい。ハンバーグ!牛肉!」

「ソフィアが大人か子供か判断に苦しむ。だが、とにかく育ての親の役目として、飯を与えないとな。もう、二度と離さない」

「まじでそうしてよ?もう、逃げないでね、アラン兄さん」

「ああ、逃げない」

俺はにやっと笑って、小指を差し出した。アランは素直に応じる。流石は、俺の育ての親だ。指切りげんまんをマスターしている。互いの小指を曲げ絡み合わせて誓う。

「指きりげんまん嘘ついたら針千本飲ます。ゆびきった!」


裸で指切りがシュールすぎて、俺は思わず笑いだしていた。


END

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