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強盗殺人か殺人と窃盗か

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生活保護費が入った。
でも、スナックにツケがあるから払わないとな。払ったら‥‥手元に殆ど残らない。

‥‥金が増えないかな。
‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥。

ビギナーズラックって言葉もあるし、パチンコ行ってみようかな。前から興味あったし。駄目ならやめればいいだけ。

◇◇◇

保護費を全部使ってしまった。負けた時にやめようと思ったのに全部つぎ込んでしまった。最悪だ。とにかくアパートに帰ろ。

『昼間からフラフラしていい身分』
「え?」

すれ違いざまに呟かれた言葉。おばさんが何事もなかったように通り過ぎていく。俺はそのままアパートに帰った。

「昼間からフラフラしていい身分」

ポロアパートで女が呟いた言葉を繰り返し呟く。その度に苛立ちが募る。あの女の事は知ってる。アパートの大家の隣の家に住んでる。

きっと大家から俺が生活保護をもらってること聞いたんだろ。大家には生活保護もらってることバレてるからな。でも、事故の後遺症で働けないんだから仕方ないだろ。俺を不正受給者と一緒にするな。

「昼間からフラフラしていい身分」

もう一度呟いて決意する。あの女に文句を言いにいこう。俺が怪我で働けないって伝えて謝ってもらう。そうだ、あの女は謝るべきだ。

◇◇◇

女が『警察を呼ぶわよ』と言った。俺は謝って欲しいだけなのに、喚いて騒いで女の夫まで玄関に出てきて俺を追い詰める。

だから刺した。二人共刺した。

ナイフは使うつもりはなかった。ただ持っていっただけ。二人が動かなるまで刺してから我に返る。

俺は逮捕される。

でも、その前にツケ払いで飲ませてくれたスナックのママに逢いたい。金も払いたいし。でも、パチンコで金を使ったから金が無い。

無いならあるところから取るしかない。女の家に上がったら居間のこたつの上に財布があった。それを持って家を出た。その足でスナックに向かう。

スナックのママに逢ってツケを一気に払うと上機嫌でビールを一杯注いでくれた。それを飲んで話してスナックを後にしたら、道路で警察に囲まれた。

返り血を浴びてたから、スナックのママが通報してのかもしれない。せっかくツケを払ったのに。

◇◇◇

強盗殺人で起訴された。俺は強盗するつもりで二人を殺した訳ではないと、何度も訴えた。その結果、殺人と窃盗の罪で無期懲役となった。

なのに、検察が控訴して二審では強盗殺人罪だと認定されて死刑判決が下った。

俺は即日控訴した。

俺は女の言葉に傷ついて、あの家を訪れた。強盗が目的じゃない。だから、強盗殺人で死刑なんておかしい。弁護士からもその方針で行こうって言われた。

それと、俺が肝臓の末期がんだと判明したので国を訴える予定だ。勾留中にちゃんとした治療を受けてたら、余命半年なんかになってない。

余命宣告をされて、命の尊さや死ぬ事の怖さがわかった気がする。殺した夫婦には悪いことをしたとは思ってる。

でも、俺は殺人と窃盗しただけだから、死刑は重すぎる。命のある限り国と戦う。使命を得て人生で一番充実している気がする。




※現実の事件をモチーフにしていますが全てフィクションです。

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