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1-19 食料庫の中で

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「ねえ、エレノア、領地の別邸って馬車でどれくらいかかるの?」

薄暗い食料庫で片付けをしていると、すぐに腰が痛くなってきた。仕方なく、小麦袋に腰を掛け、忙しく働くエレノアに話しかける。

「馬車だと三時間くらいですね。本邸にはセドリック様のご両親が住んでいますが、別邸には管理人だけなので、掃除も準備も必要かもしれません」

「三時間!?そんなにかかるの?最悪だわ。」

「遠い領地もありますから、三時間で済むのは近い方かと。」

「そうだけど…。でも、三時間も馬車に乗るのはルイ様の体に負担だわ」

「それは気になりますね、ミアさん」

「あ、呼び捨てでいいのよ。私もエレノアって呼んでるし」

「そうですね…では、ミア」

エレノアは芋の選別をしながら、手際よく箱に詰めている。働き者の彼女を眺めながら、私は愚痴を漏らした。

「男ってなんで狩りなんか好きなんだろうね?キツネ狩りとか、野蛮じゃない?」

「…私は毎年のキツネ狩りが楽しみですけど」

「そうなの?けっこう野蛮な趣味してるのね」

「野蛮、ですか?でも…参加した使用人には、セドリック様からキツネの毛皮で作った小物が頂けるのです。それが、みんなの密かな楽しみでして」

キツネの毛皮ですって!?

「たとえばコートとか?」

「奥様やお嬢様には毎年、毛皮のコートが贈られますね。私はファーをいただいたことがありますが、仕立てがよくて一生ものです」

ヴィオレットが毎年毛皮のコートをもらってるの!?私はまだ一度ももらったことないのに!

「私もコートを貰うわ」

「いえ…使用人はコートは貰えないかと」

エレノアの言葉に、少しムッとしてすぐ反論した。

「私は使用人じゃないわ!ルイの母親の私がコートをもらえないなんて、ありえないでしょ」

「そ、そうですね…。ごめんなさい。」

「わかればいいのよ」

それにしても、ヴィオレットもまだ家にいるなんて。セドリックに愛されていないと分かっているのなら、さっさと実家に帰ればいいのに。キツネ狩りに行く暇があるなら、その大好きな実家に戻りなさいっての!

「…ヴィオレット様って、今年のキツネ狩りにも参加するのは確実なの?」

「リリアーナ様が別邸をとても気に入っているので、きっとご一緒されるでしょう。あちらには広い花畑や湖があるので、お嬢様には良い刺激になるようです」

「田舎なんて、何もない場所でどこが楽しいのかしら」

「…田舎というよりも、森と別邸以外何もない場所です」

「ため息しか出ないわね」

自然にため息が漏れる。

「ところで…」

「なに?」

「先日、ミアさんとダミアンさんの会話を立ち聞きしてしまいまして…よければ私も協力させていただけませんか?」

「えっ!?」

驚いて立ち上がり、私はエレノアを見つめた。何を言ってるの…この子!?


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