夫が浮気先から帰らないので兄上とお茶してきます！

1-18 ミアとエレノア

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（一週間後　地下使用人休憩室）

「おかしいわ…。」

セドリックから、ヴィオレットが娘を女当主にすることを諦めたと聞いたのに、一週間経ってもヴィオレットが実家に帰る様子はない。

「悔し泣きする姿が見られると思ったのに…どういうことよ。」

それに、私がいまだに地下の使用人休憩室で食事を取らされているのもおかしい。セドリックに自室で食べたいと頼んだのに、「検討しておこう」と言ったきり何も変わっていない！

清潔に整えられているとはいえ、地下の使用人休憩室は質素で地味だ。特に夜は燭台の明かりだけで薄暗く、上階の煌びやかな部屋とは比べ物にならない。

「貧乏くさくて、食事も不味く感じるわ…。」

パンをちぎり、豆と鶏肉のスープに浸して口に運ぶ。周りの使用人と仲良く食事をしたいとは思わないが、一人で黙々と食べるのは味気ない。さっさと食べ終えて、ルイの部屋に戻りたい。

「ミアさん、少しお時間いいですか？」

「え？」

声を掛けられ振り返ると、リリアーナの侍女であるエレノア・グレイウッドが立っていた。

「エレノアさん、どうしたの？」

エレノアは他の使用人たちに比べて、私に優しく接してくれる。ヴィオレットが邸を出て、私がセドリックの妻になったら、彼女を私付きの侍女にするつもり。優しくしてくれたお礼も兼ねてね。

「実は人手が足りなくて、食料庫の整頓を手伝ってほしいんです」

「はぁ？どうして乳母の私が、食料庫の整頓なんてしなきゃならないの？食料庫の管理は厨房担当の使用人の役目でしょ。」

せっかく私の侍女にしてあげようと思ったのに、がっかりだわ。

「そんなに怒らないで。ミアさんもご存じでしょう？今、使用人たちの間で風邪が流行っていること」

「知ってるけど」

「その風邪で厨房の助手が熱を出して寝込んでいるんです。そのせいで、今朝配達された食品が整頓されずに置きっぱなしで困っているそうなの」

「そんなの、私には関係ないわ」

私が突っぱねると、エレノアは困ったように苦笑して、肩をすくめた。

「私も侍女ですし…正直、気乗りはしないんです。でも、これはジェフリーさんの指示なの。貴女も一緒に手伝ってほしいって」

あの執事のジェフリー…本当に気に入らない。私がセドリックの妻になったら、真っ先に首にしてやる。もっと若くてカッコいい執事を雇うべきよ。

「…やりたくないんだけど。まだ食事中だし」

「そうですか。もう食べ終わっているように見えたのでお声がけしたのですが…」

「パンがひとかけ残ってるでしょ！」

「あ…そうね」

「だから、他の人に頼んで」

「それは困ってしまうわ。来週にはセドリック様がご友人を招き、領地の狩場でキツネ狩りをなさるでしょう？ミアさんは別邸に初めて行くから、事前説明が必要かと思って。ジェフリーさんからも頼まれているので、食料庫の整理をしながら話そうと思ったのだけど」

そういえば、ジェフリーが使用人たちにそんな話をしていたわね。興味がなくて無視していたけど…。

「ルイも一緒に行くの？」

「『ルイ様』です。一緒にいらっしゃると聞いていますが、セドリック様からお話がなかったのですか？」

あの男…説明しておきなさいよ！乳母の私が知らなかったなんて、恥ずかしいじゃない。

「ええ、ちゃんと説明は受けたわ。ただ、うっかり忘れていただけ」

パンを口に放り込み、私は立ち上がった。

「じゃあ手伝ってあげる。その代わり、別邸についてちゃんと説明してよね！」




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