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第二王子
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◆◆◆◆◆
第二王子であるライオネル殿下の執務室に向かうと、熱烈な歓迎をうけた。
「アンデルス、よく戻った。お前が重い病に罹り王城出仕も儘ならない状況であったことは、ミリアムの手紙で承知している。病を克服し再び私に仕えてくれて嬉しく思う、アンデルス」
「ご心配をお掛けしました、殿下」
殿下は心底安堵した様子でアンデルス兄上に接しているのに、兄上は複雑な表情を浮かべ言葉少なに応じた。
勝手に兄上を病人に仕立てた僕に対する不満かな?それとも、処刑されたクラウスの事に触れない殿下への不満かな?でも、その態度は駄目ですよ、兄上。
「アンデルス兄上、僕もライオネル殿下にご挨拶したいです」
アンデルス兄上は僕をちらりと見て、あっさりと紹介した。まあ、仲良し兄弟アピールは皆無だったけどね。
「ライオネル殿下、義弟のミリアムです」
ライオネル殿下はにこりと微笑んだ。
「君がアンデルスの義弟のミリアムだね。逢えて嬉しいよ。ミリアムとは幾度も手紙のやり取りをしたが、君の文章から勝手に男性だと思っていた。でも、ミリアムは『孕み子』なのだね?」
「はい、孕み子です」
この世の中には、男性と女性と孕み子が存在する。『孕み子』とは子を孕める男性の事だ。ゲーム主人公のクラウスも孕み子だった。
貴族間では昔から『孕み子』を正妻とする事を最良とする習わしがある。ただし、孕み子は子を多くは生めないので、女性の側室は必須となる。ちなみに、庶民の間ではそのような風潮はないので、男女が交わりたくさん子を作りこの国を支えてくれている。
「あっ」
不意にライオネル殿下が僕の髪に触れたので、思わず声をあげてしまった。僕の声を聞き殿下が手を引いた。
「すまない、驚かせたね」
「いえ、殿下」
「花弁が髪に付いていたよ、ミリアム」
殿下の手には確かに花弁があった。
「ひゃ、申し訳ありません。今朝、温室で花の手入れをしていたので、髪に付いたようです。ライオネル殿下、それは毒草の花弁です。触れるくらいならば問題ありませんが、口に含むと良くありません」
僕は慌ててハンカチを取り出そうとした。だが、アンデルス兄上が殿下から花弁を受けとり、己のハンカチに包んでいた。それを僕に手渡すと、兄上は濡れタオルを用意して殿下に手渡した。
「やはり、アンデルスの存在は欠かせないな。お前が不在の際は随分不自由したぞ」
「恐れ入ります、殿下。ですが、ライオネル殿下にはもっと大切な存在がいらしゃったはずです。何故、クラウス様の話題をお避けになるのですか?クラウス様を救えなかった後ろめたさからですか?それとも、もう過去の人物となりましたか、殿下?」
アンデルス兄上が爆弾を投下した。もう、なんて厄介な兄上なんだ。クラウスの件で殿下に突っかかってどうするの~。
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第二王子であるライオネル殿下の執務室に向かうと、熱烈な歓迎をうけた。
「アンデルス、よく戻った。お前が重い病に罹り王城出仕も儘ならない状況であったことは、ミリアムの手紙で承知している。病を克服し再び私に仕えてくれて嬉しく思う、アンデルス」
「ご心配をお掛けしました、殿下」
殿下は心底安堵した様子でアンデルス兄上に接しているのに、兄上は複雑な表情を浮かべ言葉少なに応じた。
勝手に兄上を病人に仕立てた僕に対する不満かな?それとも、処刑されたクラウスの事に触れない殿下への不満かな?でも、その態度は駄目ですよ、兄上。
「アンデルス兄上、僕もライオネル殿下にご挨拶したいです」
アンデルス兄上は僕をちらりと見て、あっさりと紹介した。まあ、仲良し兄弟アピールは皆無だったけどね。
「ライオネル殿下、義弟のミリアムです」
ライオネル殿下はにこりと微笑んだ。
「君がアンデルスの義弟のミリアムだね。逢えて嬉しいよ。ミリアムとは幾度も手紙のやり取りをしたが、君の文章から勝手に男性だと思っていた。でも、ミリアムは『孕み子』なのだね?」
「はい、孕み子です」
この世の中には、男性と女性と孕み子が存在する。『孕み子』とは子を孕める男性の事だ。ゲーム主人公のクラウスも孕み子だった。
貴族間では昔から『孕み子』を正妻とする事を最良とする習わしがある。ただし、孕み子は子を多くは生めないので、女性の側室は必須となる。ちなみに、庶民の間ではそのような風潮はないので、男女が交わりたくさん子を作りこの国を支えてくれている。
「あっ」
不意にライオネル殿下が僕の髪に触れたので、思わず声をあげてしまった。僕の声を聞き殿下が手を引いた。
「すまない、驚かせたね」
「いえ、殿下」
「花弁が髪に付いていたよ、ミリアム」
殿下の手には確かに花弁があった。
「ひゃ、申し訳ありません。今朝、温室で花の手入れをしていたので、髪に付いたようです。ライオネル殿下、それは毒草の花弁です。触れるくらいならば問題ありませんが、口に含むと良くありません」
僕は慌ててハンカチを取り出そうとした。だが、アンデルス兄上が殿下から花弁を受けとり、己のハンカチに包んでいた。それを僕に手渡すと、兄上は濡れタオルを用意して殿下に手渡した。
「やはり、アンデルスの存在は欠かせないな。お前が不在の際は随分不自由したぞ」
「恐れ入ります、殿下。ですが、ライオネル殿下にはもっと大切な存在がいらしゃったはずです。何故、クラウス様の話題をお避けになるのですか?クラウス様を救えなかった後ろめたさからですか?それとも、もう過去の人物となりましたか、殿下?」
アンデルス兄上が爆弾を投下した。もう、なんて厄介な兄上なんだ。クラウスの件で殿下に突っかかってどうするの~。
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初めまして?一気読みしました(( ̄_|Σ(゜Д゜)面白かったです(*´・ω・`)b
両親に疎まれ?ちょい不憫主人公…( TДT)
主人公に味方いないのかな?
主人公は義兄に苦労しそぅですね( ´Д`)
今後どぅなるやら(。・´_`・。)
続き気が気になります。
作者様★気が向きお暇になりましたら
続きお願いいたします(*-ω人)
感想コメントありがとうございます!嬉しいです。なかなか更新できずごめんなさい。時間が空きましたら、また続きを書こうかと思っています。よろしければ、末永く(*´∀`)♪お付き合いいただけると嬉しいです。
(* ̄∇ ̄*)