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水鏡に映る姿6
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◆◆◆◆◆
箱庭の小さな家は、僕が作っていた家とは内装が異なっていた。イギリスの上流階級の邸みたい!お洒落!可愛い!
「お洒落!え、すごい!なにこれ!?」
『箱庭の小さな家だ。あ、思い出した!君の作った家は最悪な内装だったね。質素なテーブルと椅子だけって・・何あれ?』
「どうせ壊れるから、別にいいだろ?」
『考え方が貧相。この最高の椅子に座れ。今から紅茶を入れるから、ライ』
「え、紅茶なんてあるの?」
『当たり前だ。クッキーもある』
「何であるのさ?」
『ここは空想の世界だ。疑問は不要だ』
僕が椅子に座ると、ルチアは茶器をテーブルに置いた。いや、この茶器は何処から現れた?次にルチアの指先に、ティーポットが出現する。魔法か!?
「凄い!」
『喜べ、高級な紅茶を淹れてやる』
「あ、緑茶がいい!それと、煎餅!」
『・・・』
「できないの?」
僕がそう言うと、ルチアはムッとした顔をした。まあ、顔は藤原雷なのだが。
「ライが死んで僕が君の体に入ってから、ほとんど食べ物を口にしていない。ライの記憶に緑茶はあるが、再現まではできない。お煎餅も無理だ!」
雷は文句を言いながら、紅茶を淹れてくれた。しかも、チョコクッキーまで出してくれた。ただし、チョコの横にごみがあったので、それはそっと皿から除けた。
『ちょっと待て!煎餅を何故皿から除いた。せっかく作ったのに』
「このごみが、煎餅!?え・・」
『・・・』
「た、食べるよ!ね、食べる!」
僕はルチアの機嫌を伺いながら、ごみを食べた。硬い何かだった・・まずい。それにしても、僕は『運命の番』かもしれないルチアに逢いに来たのに、全然恋が芽生えないのだが。おかしいな。
「ルチア」
『なんだ?』
「首を噛んでいい?」
『はあーー!?』
ルチアが飛び退いた。そして、真っ赤な顔をして首を手で押さえる。
『何故、僕がライに首を噛られないといけないんだ。おかしいだろ?』
「だって、君が『運命の番』だと思ったから逢いに来たのに・・全然、恋が芽生える気配がないから。首を噛んだら、ピンってくるかもしれないだろ、ルチア?」
僕が立ち上がろうとすると、ルチアが手で制した。そして、牽制する。
『僕たちはほぼ同時刻に命を落とした。そして、体から抜け出した魂は、『運命の番』に出逢うために世界の境界線さえ越えた。ライの考えでは、こうだな?』
「合ってるよ、ルチア!」
『だが、互いの魂は巡り逢うことなく、すれ違ってしまった。さ迷う互いの魂は脱け殻となった『運命の番』の体にたどり着き、愛しい人の肉体に宿った』
「ルチアは詩人だね!」
『状況的に見て、僕たちは『運命の番』に違いない。だから、首を噛まなくても大丈夫だ、ライ!』
「でも、噛んだ方が確実じゃない?」
『その必要はない。それに、『運命の番』を知るためには、アルファがオメガの首筋を噛むのが基本だ。君はルチアの体。僕は藤原雷の体。噛むなら僕が相応しい』
「え!?いや、君はアルファじゃないだろ?その体は・・ベータだ。たぶん!」
『なるほど。ならば、やはり僕が噛むべきだな。ベータとしてオメガの首筋を味わうとするか』
「ひゃいっ!」
病弱な藤原雷が素早く動けるはずがない。そう思ったのに、僕は一気に近づいたルチアにお姫様抱っこされていた。あり得ない!貧弱男の藤原雷が漢らしくなってる!
「ふふ、ここは僕の空想の世界だ。ライを抱き上げる事など雑作もないこと」
ぱくっと、ルチアに首を噛まれた。甘噛みされてるー!?うう。なんで、こんな事になってるの?
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箱庭の小さな家は、僕が作っていた家とは内装が異なっていた。イギリスの上流階級の邸みたい!お洒落!可愛い!
「お洒落!え、すごい!なにこれ!?」
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「どうせ壊れるから、別にいいだろ?」
『考え方が貧相。この最高の椅子に座れ。今から紅茶を入れるから、ライ』
「え、紅茶なんてあるの?」
『当たり前だ。クッキーもある』
「何であるのさ?」
『ここは空想の世界だ。疑問は不要だ』
僕が椅子に座ると、ルチアは茶器をテーブルに置いた。いや、この茶器は何処から現れた?次にルチアの指先に、ティーポットが出現する。魔法か!?
「凄い!」
『喜べ、高級な紅茶を淹れてやる』
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雷は文句を言いながら、紅茶を淹れてくれた。しかも、チョコクッキーまで出してくれた。ただし、チョコの横にごみがあったので、それはそっと皿から除けた。
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「このごみが、煎餅!?え・・」
『・・・』
「た、食べるよ!ね、食べる!」
僕はルチアの機嫌を伺いながら、ごみを食べた。硬い何かだった・・まずい。それにしても、僕は『運命の番』かもしれないルチアに逢いに来たのに、全然恋が芽生えないのだが。おかしいな。
「ルチア」
『なんだ?』
「首を噛んでいい?」
『はあーー!?』
ルチアが飛び退いた。そして、真っ赤な顔をして首を手で押さえる。
『何故、僕がライに首を噛られないといけないんだ。おかしいだろ?』
「だって、君が『運命の番』だと思ったから逢いに来たのに・・全然、恋が芽生える気配がないから。首を噛んだら、ピンってくるかもしれないだろ、ルチア?」
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『僕たちはほぼ同時刻に命を落とした。そして、体から抜け出した魂は、『運命の番』に出逢うために世界の境界線さえ越えた。ライの考えでは、こうだな?』
「合ってるよ、ルチア!」
『だが、互いの魂は巡り逢うことなく、すれ違ってしまった。さ迷う互いの魂は脱け殻となった『運命の番』の体にたどり着き、愛しい人の肉体に宿った』
「ルチアは詩人だね!」
『状況的に見て、僕たちは『運命の番』に違いない。だから、首を噛まなくても大丈夫だ、ライ!』
「でも、噛んだ方が確実じゃない?」
『その必要はない。それに、『運命の番』を知るためには、アルファがオメガの首筋を噛むのが基本だ。君はルチアの体。僕は藤原雷の体。噛むなら僕が相応しい』
「え!?いや、君はアルファじゃないだろ?その体は・・ベータだ。たぶん!」
『なるほど。ならば、やはり僕が噛むべきだな。ベータとしてオメガの首筋を味わうとするか』
「ひゃいっ!」
病弱な藤原雷が素早く動けるはずがない。そう思ったのに、僕は一気に近づいたルチアにお姫様抱っこされていた。あり得ない!貧弱男の藤原雷が漢らしくなってる!
「ふふ、ここは僕の空想の世界だ。ライを抱き上げる事など雑作もないこと」
ぱくっと、ルチアに首を噛まれた。甘噛みされてるー!?うう。なんで、こんな事になってるの?
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