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ゲーム攻略8
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◆◆◆◆◆
陛下が鋭い口調で僕に尋ねてきた。僕は意を決して言葉を発した。
「アルフレート兄上です、陛下。僕は兄上に特別な感情を抱いています。でも、兄上ならば・・アンリと良好な関係を築けるかもしれないのです。他の攻略対象者と異なり、兄上はアンリと同じ庶民の育ちです。ゲーム内では、貴族社会に息苦しさを感じている兄上とアンリは、共にいて心が休まるパートナーとなります」
「つまり、アルフレートとアンリの組み合わせならば、『友人レベル』や『恋人レベル』に達する可能性が他の攻略対象者よりも高いわけだな、ライ?」
僕はごくりと唾を呑み込んだ。そして、陛下の瞳を真っ直ぐに見つめて、僕は気持ちを言葉にした。
「僕に『運命の番』を映す水鏡を覗かせて下さい、陛下。僕はまだ自分の気持ちを諦めたくないのです。もしも、水鏡を覗きそこに映る人物がアルフレート兄上ならば、もう一度兄上に告白すると心に決めていました。お願いです、陛下。僕に水鏡を覗かせて下さい」
父上が少し悲しげな表情で話しかけてきた。
「ルチアは・・ライはアルフレートの本性を知った筈だ。アルフレートはルチアを誘拐して、己の父親を罠にはめた。ルチアの苦しみを知りながら、完全に拒絶して自殺に追いやった。なにより、アルフレートは腹違いの兄弟の可能性がある。それでも、諦めきれないのかい、ライ?」
「父上・・僕はアルフレート兄上が好きです。でも、この想いがルチアのものなのか、それとも自分の想いなのか・・よくわからないのです。ルチアの記憶には沢山の想いが詰まっていて、僕を混乱させます。でも、『運命の番』を知りたいと想っているのは二人・・僕とルチアです」
不意に父上が陛下に対して最敬礼をした。僕がビックリして見つめていると、父上ははっきりとした口調で陛下に願い出た。
「陛下、私の息子に『運命の番』を映す水鏡をお貸しいただけますでしょうか?この場で、ルチアに水鏡を覗かせてあげたいのです。水鏡に映る人物が誰であれ、息子は動揺するでしょう。心を揺らす息子を、今度こそ私はしっかりと支えたいのです」
僕は涙ぐみそうになりながら、父上と共に陛下に向かい頭を下げた。
「はっ、ケルスティンが私に頭を下げるとはな。息子を甘やかしすぎだ。だが、まあいいだろう。王の洗顔器として使われるより、水鏡も本来の役目で使われたいだろうからね。ついでに、ケルスティンも水鏡を覗くといい。アルカディーが水鏡に映らなかった場合には、慰めの言葉を掛けてやる」
陛下は好きにしろと、軽く手をふった。それに合わせて、父上が静かな動作で顔をあげた。僕も同じ動作をした。
「陛下のお許しが出た。親子で水鏡を覗かせてもらおう。互いに想い人が現れるといいね、ルチア」
「はい、父上」
陛下は頬杖をついて、僕と父上の様子を見つめていた。もしかすると、陛下は最初からこの場で父上に水鏡を覗かせるつもりだったのかもしれない。だから、『王の書庫』に水鏡を持ち込んだのかな?
でも、全ては想像だから黙っていよう。
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陛下が鋭い口調で僕に尋ねてきた。僕は意を決して言葉を発した。
「アルフレート兄上です、陛下。僕は兄上に特別な感情を抱いています。でも、兄上ならば・・アンリと良好な関係を築けるかもしれないのです。他の攻略対象者と異なり、兄上はアンリと同じ庶民の育ちです。ゲーム内では、貴族社会に息苦しさを感じている兄上とアンリは、共にいて心が休まるパートナーとなります」
「つまり、アルフレートとアンリの組み合わせならば、『友人レベル』や『恋人レベル』に達する可能性が他の攻略対象者よりも高いわけだな、ライ?」
僕はごくりと唾を呑み込んだ。そして、陛下の瞳を真っ直ぐに見つめて、僕は気持ちを言葉にした。
「僕に『運命の番』を映す水鏡を覗かせて下さい、陛下。僕はまだ自分の気持ちを諦めたくないのです。もしも、水鏡を覗きそこに映る人物がアルフレート兄上ならば、もう一度兄上に告白すると心に決めていました。お願いです、陛下。僕に水鏡を覗かせて下さい」
父上が少し悲しげな表情で話しかけてきた。
「ルチアは・・ライはアルフレートの本性を知った筈だ。アルフレートはルチアを誘拐して、己の父親を罠にはめた。ルチアの苦しみを知りながら、完全に拒絶して自殺に追いやった。なにより、アルフレートは腹違いの兄弟の可能性がある。それでも、諦めきれないのかい、ライ?」
「父上・・僕はアルフレート兄上が好きです。でも、この想いがルチアのものなのか、それとも自分の想いなのか・・よくわからないのです。ルチアの記憶には沢山の想いが詰まっていて、僕を混乱させます。でも、『運命の番』を知りたいと想っているのは二人・・僕とルチアです」
不意に父上が陛下に対して最敬礼をした。僕がビックリして見つめていると、父上ははっきりとした口調で陛下に願い出た。
「陛下、私の息子に『運命の番』を映す水鏡をお貸しいただけますでしょうか?この場で、ルチアに水鏡を覗かせてあげたいのです。水鏡に映る人物が誰であれ、息子は動揺するでしょう。心を揺らす息子を、今度こそ私はしっかりと支えたいのです」
僕は涙ぐみそうになりながら、父上と共に陛下に向かい頭を下げた。
「はっ、ケルスティンが私に頭を下げるとはな。息子を甘やかしすぎだ。だが、まあいいだろう。王の洗顔器として使われるより、水鏡も本来の役目で使われたいだろうからね。ついでに、ケルスティンも水鏡を覗くといい。アルカディーが水鏡に映らなかった場合には、慰めの言葉を掛けてやる」
陛下は好きにしろと、軽く手をふった。それに合わせて、父上が静かな動作で顔をあげた。僕も同じ動作をした。
「陛下のお許しが出た。親子で水鏡を覗かせてもらおう。互いに想い人が現れるといいね、ルチア」
「はい、父上」
陛下は頬杖をついて、僕と父上の様子を見つめていた。もしかすると、陛下は最初からこの場で父上に水鏡を覗かせるつもりだったのかもしれない。だから、『王の書庫』に水鏡を持ち込んだのかな?
でも、全ては想像だから黙っていよう。
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