義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

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ゲーム攻略6

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◆◆◆◆◆

陛下は椅子に座ったまま、机の上に置かれた『レスキリアン創世記』の原本に触れる。そして、僕に視線を移してゆっくりと口を開いた。

「アンリは私の息子だと、原本には記されていた。私は彼を生み出さない様に注意を払っていた。だが、現実には『恋愛ゲーム』の主人公のアンリを、私は作り出してしまった」

「・・陛下」

アンリを『ゲームの駒』の様に語る陛下に、僕は反発を覚えた。だが、陛下自身も己を『ゲームの駒』として捉えている。異世界人の僕が口出しできる事ではない。

「私はアンリの殺害を試みた」
「っ!」
「だが、悉く失敗した」
「陛下、それはあまりに・・」

「あまりに酷いか?まあ、我が子を殺すのだから酷い行いだろう。だが、この行為は私の首をしめる事になった。アンリは無意識に、周囲に渦巻く殺意を感じ取っていたのだろう。彼は次第に心を病んでいった」

僕は目を見開いて陛下を見つめた。そして、陛下を責める言葉を投げつけていた。

「アンリ = プラデスは、心優しく誰にでも好感を持たれる人物なんです。本来ならば、そう育つはずの恋愛ゲームの『主人公』を、陛下は歪めてしまった!」

「ルチア」

僕の名を呼んだ父上に、不安な気持ちを打ち明けていた。

「父上、どうしたらいいですか?僕は自分の気持ちに振り回されてばかりで、レスキリアン王国の未来なんて何も考えていなかった。アンリがアルフレート兄上以外の『攻略対象者』と結ばれたらいいなんて、呑気に考えていました。だけど・・」

僕が言葉に詰まると、陛下が後に続き言葉を紡いだ。

「ライは先ほどこう言っていたね?『アンリの好感度はすぐに上がる仕様に設定されています』と。それで、現実のアンリを見てどう思った、ライ?アンリを恋人にしたい、或いは友人にしたいと思う『攻略対象者』がいると思うかい、ライ?」

「・・うっ」

僕は黙り込んでしまった。アンリは素敵な主人公だ。でも、僕の場合は主人公キラキラフィルターがかかっている可能性がある。アンリを客観的に評価しよう。

アンリは薬物依存で、常に手をブルブルさせている。会話を成立させるのは困難。フェロモンは毒ガス並み。そして、双子の弟と、ユリ的感覚から上位オメガに関心が向いている。

「へ、陛下・・不味いです。このままいくと、アンリの好感度は底辺をたどり、『陛下暴君ルート』に至るかもしれません。そうなれば、王都も王城も火の海です。そして、大陸は異端者狩りで血の雨が降ります。どうしましょう、陛下・・」

「こちらが助言を請いたい、ライ」

僕は黙り込んでしまった。

今のアンリと『友人レベル』になれる可能性があるのって・・もしかして、アルフレート兄上だけなんじゃないの?



◆◆◆◆◆
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