義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

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王の書庫10

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ルチアの想いが記憶と共によみがえり、感情に流されているみたい。冷静でいないとだめだ。

「陛下、申し訳こざいません」

「ふむ、異世界人は身分制度に忌避感があるようだ。だが、秩序は守るためには身分制度は重要だ。特に長い戦で不満を抱えた平民を支配するには、厳格な身分制度が必要になる。にもかかわらず、アーサー王の側近が王に堂々と歯向かうのは・・まあ、まずいことだとライにもわかるね?」

「確かに・・そうですね」

「やがて、各地の小競り合いも減り、異世界人の活躍の場がなくなりつつあった。中央政権からは追いやられ、いつしかアーサー王に気楽に会うこともままならなくなった。まさに、戦乱の英雄の凋落だ」

「なんだか、聞いていて辛いです」

「ライはやはり異世界人に同情的だな。だが、私はアーサー王の複雑な気持ちがよく分かる。戦が終わり行き場のなくなった異世界人が、レスキアン王国に不満を抱いている。それも、恐るべき異能力を有する男だ。そこで、アーサー王は彼に家族と高い身分を与えることで、彼を手元に置き動きを監視することにした」

「異世界人はこの世界で家庭をもったのですか?経緯はどうあれ、幸せになって欲しいです」

不意に父上が口を開いた。

「アーサー王は、ガーディナー家に厄介事を押し付けた訳か、クリストフェル?」

「えっ?ガーディナー家ですか?」

「ルチアや私の青紫色バイオレットの瞳は、千年前の異世界人が起源だったようだね。大陸の遥か彼方からこの地にやってきた一族の末裔だと伝わっていたが、青紫色バイオレットの瞳の起源を誤魔化す為の嘘だったのか・・」

「ガーディナー家は上位オメガの一人娘の伴侶として、異世界人を次期当主として迎い入れた。そして、アーサー王の特別な計らいにより、子爵位のガーディナー家は侯爵位に昇爵された。昇爵をちらつかせて、アーサー王は異世界人をガーディナー家に押し付けた形になるな」

僕は思わず唇を噛んでいた。ガーディナー家も異世界人の存在を歴史から消し去る行いに、一枚噛んでた。そして、爵位欲しさに娘の上位オメガを差し出した。

「オメガはいつの時代も、使い捨ての駒なのですね。ルチアが世の中に失望して自殺をはかったのも・・」

僕は言葉を続けようとして、黙り込んだ。父上を傷つけてどうする。父上からルチアを奪ったのは僕なのに。後悔が胸に苦くにじんだ。



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